中学受験

【塾別・科目別】夏期講習を最大限に活かすための予備知識

目次

全体的な学習方針と計画について
カリキュラムと塾との連携について
教科別の注意点

もう6月末。来週にかけては、また全国的に気温が上がり、真夏のような気候になるようです。

体調に気をつけて過ごしたいですね。

さて今回は、夏期講習を効果的に活用し、お子さんの学力向上と負担軽減を両立させるために注意すべき点について、塾別、科目別に考えてみたいと思います。

全体的な学習方針と計画について

塾のカリキュラム学習を追っていると「やったかやってないか」という「タスク管理」になりがちですが、成績を上げるためには「学習の質」が重要です。深く理解しているか、納得しているか、注意深く問題を読んでいるか、解説を丁寧に読んでいるかといった点が大切になります。

もちろん夏期講習は忙しく、大量の課題が出されます。そこで1日1問でいいので、タスク管理型で焦って解くのではなく、1問をじっくり読み、注意深く解き、解説を丁寧に読むことを目指してみましょう。

このような学習を心がけることで、お子さん自身が間違えやすいポイントが見えてきます。

最初は1日に1問から始めて、苦手教科の中から「得意の核」を作ることを目的としましょう。

その「1問」ですが、自己肯定感を高めるためにも「あと少しで解けそう」な問題を選ぶことが大切です。

夏期講習開始までに、何をするのかを明確にした学習計画を立てることが非常に重要です。

まずはこれまでのテストの正答率表を頼りに、「正答率が高いのに間違いが多かった分野はどこか」をチェックすることから始めましょう。

ただし、計画はあくまで出発点であり、お子さんの状況や体力面に合わせて、必要に応じて内容や回数を変更する柔軟性を持つことも大切です。

カリキュラムと塾との連携について

サピックス

サピックスの夏期講習は、日程だけ見ると余裕があるように見えますが、実際にカレンダーに落とし込むと「2日行って1日休み」のようなハードな日程になるため、非常に忙しいです。

早稲田アカデミー

早稲アカの小5夏期講習は特にハードであり、カリキュラムも復習内容と新出単元の折衷型になっています。事前にどれが復習でどれが新出単元なのかを確認しておく必要がありますね。

四谷大塚

四谷大塚は夏期講習とテスト、そして8月後半の特訓(すべて必修となっています)で計26日間もの拘束がありますが、カリキュラム内容がざっくりしているという指摘もあります。場合によっては、必修とされている8月特訓でも、受講を断ったり、時々休んだりする(8月特訓は純粋な復習内容のため)ことを検討してもよいでしょう。

浜学園

浜学園の夏期講習は、平常のマスター講座との「二階建て」になります。つまり夏期講習で総復習を行いながら、平常授業では新出単元を習い続ける形です。必然的に平常授業優先となりますね。夏期講習はカリキュラムを確認し、あらかじめ力を入れる単元の見当付けをして臨むといいでしょう。

学習には「たくさんの知識を身につけるカリキュラム学習」と「学習のやり方を学習する」という2つの車輪があります。

塾のカリキュラムは回し続ける必要があるため、塾の学習は継続しつつ、学びの質を高める取り組みも並行して行うことが重要です。

一方で、夏期講習があまりに忙しく、終わった後にペースを崩してしまう子どもが非常に多い傾向があります。

多くの塾でやる内容が多すぎ、頭の中が混乱し、これまで解けていたものが解けなくなるというケースも見られます。
頑張りすぎている子どもに対しては、親御さんが意図的にブレーキをかけてあげる必要があるでしょう。

教科別の注意点

算数

夏期講習開始までに、特に力を入れたい重要単元(苦手単元、得意の核にしたい単元、志望校に頻出の単元)を決めておくと、夏休みに克服したいテーマがはっきりしてよいですね。
上記の単元が、お通いの塾の夏期講習で扱われているか、確認しておきましょう。

5年生では、平面図形や割合・比を重点的に学習することで、割合や比の考え方を速さや水量の問題にも応用できる力をつけることを目標としたカリキュラムの塾が多くなっています。

国語

小4・小5では、語彙強化が重要なテーマです。夏休みは語彙強化に時間を割く良い機会です。

小6では、サピックスでは夏から前倒しで過去問の宿題が出ます。
他塾にお通いの場合でも、場合によっては過去問をやり始めることを検討してよいでしょう。

夏期講習中は忙しく大量の問題を解くため、読み方が雑になり、得点が下がってしまうケースがよくあります。
また読解については、普段の授業の先生と夏期講習の先生で異なる指導がある場合もあるため、注意が必要です。

量と質のバランスが重要であり、長文を読むのが遅い子でも、1日1問など毎日コツコツと解く習慣をつけることが夏休み後の伸びに繋がります。
普段の家庭学習では負担が大きくなりがちな文章読解を、夏休みの時間の余裕を活かして、朝の塾が始まる前などに生活のペースに取り入れることも有効です。

理科

理科は他教科に比べて、単元による出来・不出来が顕著に出やすい科目です。

まずは夏までに、これまでのテストの正答率表をチェックし、お子さんがどの単元でつまずいているのかを割り出しましょう。

生物や地学の知識がついていない場合であれば、夏期講習に先駆けて塾で使用している暗記用のテキストなどを使って学習しておきます。
このようにして、一問一答レベルの知識だけでも学び直しておけば、夏期講習の授業の理解度がぐんと上がります。

5年生以下の学年のご家庭は、6年生にくらべると夏期講習の日程・時間に余裕があると思います。ぜひ遊びやお出かけのメニューも準備してあげてください。

社会

社会のテストの地理の点数が伸び悩んでいるお子さんの場合、夏休みは、地理の図表(農産物や工業地帯の順位・割合)の読み方を強化することを1つのテーマにするとよいでしょう。

歴史では、出来事と人物を結びつける学習(例:人物カードの作成)が効果的です。
公民は、時事問題と結びつけて学ぶと理解が進みます。今起こっている米の値段の高騰や円安などについて、親御さんが会話の中で話題を振ってあげるなどしてもいいですね。

ふだんの家庭学習では社会の学習時間を確保しにくいものですが、夏期講習の「空き日」に最低限のポイントに絞って学習したり、「3日間で地理をまとめる」など集中して学習する方法も有効です。

夏休みは長いようですが、夏期講習に忙殺されていると(特に四谷大塚や早稲田アカデミーなど日程のボリュームが大きな塾)、あっという間に終わってしまいます。

「なんだかバタバタしている間に終わってしまった」となってはもったいないですね。

まずは夏期講習の日程をカレンダーに落とし込み、どのような毎日になるのかイメージすることから始めてみましょう。

お子さんがよい状態で夏を迎えられることを願っています。

【中学受験】2026年度入試に向けて 動向と志望校選びについて

目次

近年の入試傾向と偏差値変動の現状
個別学校の入試変更と注意点
志望校選びと受験戦略における考慮点
お子さんの心理的側面への配慮

真夏のような気温の日が続いています。

こうなると、特に6年生のお子さんのご家庭では、否が応でも夏、そして本格的に始まる志望校対策を意識せずにいられませんね。

ここでは、志望校選びや受験戦略において、近年の入試傾向や偏差値変動からの雑感をお伝えしたいと思います。

近年の入試傾向と偏差値変動の現状

これまで「比較的容易に合格できる」と思われていた学校のレベルが軒並み上がってきており、第二志望や第三志望校の設定が難しくなっています。特に午後入試のレベルも上がり、多くの学校を受験しても合格可能性が高まるとは限らない状況です。

各塾、特にSAPIXのような難関校志向の塾の発表する「合格可能性偏差値」に関して、「偏差値50以下の学校は当てにならない」という見方があります。SAPIXの先生も「偏差値40台までは『ボリュームゾーン』だから、偏差値50を超える志望校を目指しても問題ない」と話すケースがあるようです。ただし、常に40を切る状態だと注意が必要とも言われています。

私は実感として、多くの学校で偏差値が数ポイント違う程度では合否を判断できず、過去問との相性が合否に大きく影響すると感じています。20%から80%の合格可能性偏差値帯では、飛び抜けた上位や下位を除けば、実質的に過去問との相性で結果がいくらでも変わりうると考えています。

上記のサピックスとは逆に、日能研のR4偏差値は、中堅校ラインでは信頼でき参考になるものの、最難関校ではサピックスや浜学園のデータの方が確実という側面があります。

個別学校の入試変更と注意点

2026年は2月1日が日曜となる「サンデーショック」の年となるため、キリスト教系の学校の2月1日入試が2月2日に変更になるケースがありますので、注意が必要です。

女子学院

入試日が2月2日に変更されたことで、合格難度が上がる可能性が予測されています。(2月1日に他の御三家中などを受験した生徒が受験する可能性が高いため)

青山学院

昨年の2月3日から2月2日へ入試日が変更されますが、青山学院は元々2月2日が入試日だったため(2025年は2月2日が日曜だった)、特に変わる要素はないと考えられています。

サンデーショックについては、お子さんの志望校に関わりがあるかどうか、チェックしておくことをおすすめします。

立教池袋

2月5日の2回目入試は、合格の出し方が独特です。学校側が受験者平均程度の「選考範囲最低点(足切り点)」を設定し、それを超えた受験生の中から面接などの評価も加味して合格者を決定します。そのため、偏差値が中間層(四谷大塚で50~55程度)でも場合によっては合格のチャンスがあるとされています。2024年の2回目入試では、選考範囲最低点が極端に低かったケースも報告されています。

志望校選びと受験戦略における考慮点

夏前の合否判定テストなどで偏差値が達していない場合、「このままこの学校を目指していいものか」という思いが頭をよぎることがあるかもしれません。しかし夏の講習期間中、あるいは少なくとも9月いっぱいまでは、第一志望校を目指して学習を続けることをおすすめするケースが多いです。

この時期に安易に第一志望を変更するような話をすると、お子さんの学習モチベーションが低下する可能性があるためです。

併願校を含めた受験校の最終的な決定は、塾の個人面談が本格的に行われる11月以降を目安にするのが良いと感じています。それまでの間は、お子さんの状況をよく見て、必要に応じて柔軟に計画を調整しましょう。

11月の面談では、塾の先生もある程度正直に感じておられる合否の見通しについてお話しされると思います。しかし塾の先生がどのような受験戦略を提案しているかを確認し、それを踏まえて受験校を決定するのは最終的にはご家庭です。

偏差値だけで決めるのではなく、過去問との相性も見つつ、塾から提供される各学校の最新の入試情報(例えば上記の立教池袋の2回目入試のような独特な合否判断基準など)も考慮に入れて決定しましょう。

お子さんの心理的側面への配慮

テストで実力を発揮できないお子さんの中には、「頑張って解いても解けなかった時の恐怖感」や「できないと恥ずかしい、できないと恐怖だ」という感情が根底にある場合があります。

特に6年生は、1回1回のテストで「志望校に合格できるかどうか」を数値で突きつけられるため、プレッシャーもあるはずです。

このようなお子さんに対しては、テストの目的が「満点や高得点ではなく、部分点でも点を積み重ねて合格点を目指すこと」であることを伝えてあげてください。解答用紙を白紙にせず、とにかく何かしら書くように促すことが有効です。

6年生であれば、塾のテスト結果に一喜一憂しすぎず、「志望校の過去問が解ければ良い」という割り切りも必要です。これは「受験鬱」のような状態に陥ることを避けるためにも有効です。

あと1月あまりで「受験の天王山」と言われる夏休みが始まります。

まずは前回記事「6月 夏休みに向けて準備しておきたいこと」でお話しした準備に取りかかっていただければと思います。

充実した夏への周到なご準備ができることをお祈りしています。

【中学受験】6月 夏休みに向けて準備しておきたいこと

目次

お通いの塾の夏期講習の期間、日数などを確認する
4・5年生の注意点は
6年生の注意点は

夏休みがまで、あと1ヶ月と少し。

お通いの塾や学年によって違いますが、夏はふだんと学習の進度が全く変わります。

例えば サピックスは、夏期講習はこれまでの復習内容ではなく、どんどん進んでいくカリキュラムになっています。

お通いの塾の夏期講習がどのようなスタイルなのかを、ぜひ確認しておいてください。

お通いの塾の夏期講習の期間、日数などを確認する

サピックス

サピックスの夏期講習の期間は、4年生で14日間、5年生で20日間 、6年生で18日間となっており、他塾に比べると、実は日数は多くありません。

ただし上記のように、これまでの復習をするわけではなく、夏休みも含めて1年間のカリキュラムがひと続きとなっているので、夏休みもどんどん新しい単元に進んでいきます。

そのためめまぐるしく、毎日ただただ課題をこなすだけ、となりがちです。

特に 夏休みの前までに苦手単元を多く残してしまっている場合、夏休みにそれを解決するということが難しく、どんどん苦手が積み重なっていく可能性があります。

四谷大塚

四谷大塚や早稲田アカデミーは予習と復習の折衷型となっており、日数が多く、拘束時間も長いのが特徴です。

四谷大塚では 4年生から6年生まで、夏期講習は16日間とテストが2日間、そして 8月の中旬から後半にかけて「8月特訓」という名前の授業があり、これも実質必須とされています。

夏休みを 前半と後半に分けて、夏期講習を2回繰り返すような構成になっており、お子さんへの疲労感はかなり大きいと思います。
内容的には復習と予習が半々ぐらいになっているので、特にどの単元がこれまでの復習でどれが新出単元なのかを把握しておく必要があります。

早稲田アカデミー

早稲田アカデミーの夏期講習は小4・小5がいずれも18日間、これに3泊4日の合宿が、こちらも「必須」のような扱いで加わります。
私は、合宿や「夏期特別◯◯」といった特訓講座については、慎重に受講を検討すればいいと思っています。

夏期講習会の算数や理科は、既習単元と新出単元の割合が半々といった感じです。
四谷大塚同様、既習単元と新出単元を把握しておくようにしましょう。

5年生の社会のみ、地理の総復習と歴史への導入までが夏期講習の内容となっています。

早稲アカの6年生は 夏期講習が24日間、これとは別に「夏期集中特訓」と呼ばれる講座が5日間あります。

日能研

唯一、夏期講習が純粋な復習のみの内容になっているのが、日能研です。
これまでの学習範囲で積み残しと感じているところや苦手単元などを、夏期講習で補いたい、と考えているなら、日能研のカリキュラムが最も適していると考えられます。

ただし夏休みが純粋な「足踏み」になっているということは、他塾に比べてカリキュラム 進路が遅いということでもあります。

浜学園

浜学園の夏期講習も純粋な復習内容となるのですが、夏休みの間も夏期講習とは別に平常の「マスター講座」と呼ばれる講座が行われ、どんどん新しい単元も習っていくというのが特徴になっています。

2種類のカリキュラムが並行して進むため、お子さんの負担はかなり大きくなると考えましょう。
夏期講習の宿題も出ますから、ふだんのマスター講座の宿題演習をどのように回していくか、しっかり考えておかないと破綻する恐れがあります。

4・5年生の注意点は

4年生、5年生については、サピックスを除いて夏期講習にこれまでの復習内容が含まれます。

四谷大塚と早稲田アカデミーにお通いのお子さんは、まず夏期講習のカリキュラムの中で、自分が苦手としている、あるいは 補強しておきたい単元がどれだけ含まれているかチェックしておくことが大切です。

講習に含まれていない単元は、手つかずになってしまわないように、自分で夏までに何とかしておくのが望ましいでしょう。
また夏期講習に含まれる単元についても、夏期講習だけで全てを解決しようとするのではなく、ある程度「予習」してから夏期講習に臨むことで、夏期講習の授業の理解を深めることができるでしょう。

サピックスは夏期講習で復習内容がほとんど扱われないので、より上記のような事前の準備が大切ですね。

このような準備を、今、6月中旬から夏休み前までにしっかり行っておくことが、夏を充実させる第一歩です。

2月からこれまでの月例テストや公開テストの結果をあらためて見直し、手薄になっている単元や理解の浅い単元が何かを把握することから始めてください。

上記の単元を、これからひと月の間にある程度押さえた状態で夏に臨むことを目指しましょう。

また4年生に関しては、「明らかに1学期の学習内容について理解できていない部分が多い」「宿題がぜんぜん回らずアップアップだった」というようなケースなら、思い切って夏期講習を受けずにおうちでしっかり復習する、という選択肢も持っておいていいと思います。
(その場合は計画的にキャッチアップできるか、専門家に相談するほうがいいでしょう。)

6年生の注意点は

6年生は各塾とも、夏期講習の授業から本格的な「演習型授業」になります。

これまでは、先生がまず考え方や解き方を教えてくれて、それを理解、習得できたかどうかを類題を解いて試す、という授業スタイルでした。

しかし今後は、まず生徒たちが問題を解き、 それを先生が解説することで理解を深めさせていく、という「反転授業 」のようなスタイルになります。

基礎的な解法がしっかり身についており、ある程度問題が自分で解けるようになっているお子さんにとっては、非常に 無駄がない授業スタイルです。

しかし基礎に不安要素が多いケースや、知識に不足が多い お子さんの場合、いきなり問題を演習させられても、解けるものが少ないため、非常に 非効率なスタイルとなります。

たとえば 理科や社会で知識が不足していてそもそも問題が解けない、という ケースだと、授業の前半の演習の時間が無駄になってしまいます。

このようなことを防ぐため、特に6年生は基本的な用語や知識の拡充を夏までにしておくこと、算数の解法や公式の知識などをしっかりつけておくこと、国語では 文の種類ごとの読解法を理解し、実際に問題を解く時に使えているかをチェックしておくことなどが大切になります。

まだ今は6月、 お子さんは「なんとなくまだ夏は遠い」と感じているケースが多いですが、 ここから1ヶ月の過ごし方で夏の充実度が変わってきます。

ぜひ、周到に準備を行って夏に備えましょう。

【中学受験】受験生の習いごと、何を意識したら良い?(低~中学年)

目次

習いごとは何が良い?
習いごとのペース、量は?
「時間と心の余裕」の有無をどう判断するか
習いごと代わりに早期教育はあり?
お家の方に気をつけてほしいこと
なぜプロセスが大切なのか

しとしとと雨が続き体調を崩しやすい季節ですが、中学受験生の皆さんは元気に過ごしていますか?

先日、AI時代にこそ大切にしてほしい身体感覚、知性、創造力についてお話ししました。
特別な勉強や訓練の必要はなく、例えば外遊びやお買い物、兄弟のお世話や台所などのお手伝い、入浴など、中学受験生の皆さんの日々の暮らしの中でそれらは育むことが出来るものであり、低〜中学年の多くの皆さんがよく取り組んでいる「習いごと」の中にも、その一助になる要素がたくさん含まれています。

今の時代はさまざまな理由で外遊びがしにくくなりました。
昔だったら家のお手伝いと外遊びだけでも十分、様々な体験や学びが得られたり、体力がついたりしたものですが、それができないために、習いごとやお稽古ごとがそのあたりを補っている部分もあるのが現状です。

そこで今日は、皆さんが習いごとをするとしたら、その際に意識してほしいこと、お家の方に気をつけていただきたいことをお話しします。

習いごとは何が良い?

習いごとの内容は、自分がやりたいと思ったもので良いと思います。
将来のためになりそうとか、ならなさそうとか、受験が近づくとやめなくてはならなさそう等、あれこれ悩まず、まずはやってみるのがおすすめです。

もしかしたら一生涯の趣味になるかもしれませんし、どうせ習うならずっと続けられるものを!と意気込んで始めても、すぐ飽きてしまうかもしれません。

中学受験を控えている皆さんではありますが、特に低~中学年の時期はまだ余裕があります。
これは勉強に役立つ、役立たない等と先入観で決めつけることなく、スポーツでも、ピアノでも、剣道や書道でも、プログラミングでも、気になる世界に飛び込んでみましょう。

たとえば野球チームで良いコーチについている子は人の話を素直に聞けますし、習字をやっている子の字は読みやすく、見間違いによる計算ミスをあまりしません。
右脳と左脳を使うと言われるそろばんをやっている子は計算力だけでなく判断力やひらめきも育つと感じますし、剣道をやっている子は姿勢が良く、型を学ぶことから、ある種の学習も身につきやすいように思います。

ピアノを本格的にやっている子は、音感や落ち着きがあるだけでなく、集中力があり、勉強もできる印象があります。

このように、それぞれに、勉学にも良い影響を与えていると感じています。

習いごとのペース、量は?

小学校3年生までは、学校の宿題がちゃんとできて、家のお手伝いや遊ぶ時間もちゃんとできる時間と心の余裕を残しておくことが大切です。

1週間にあらゆる習いごとをギチギチに詰め込んでしまい、気力も体力も奪われて日中はいつも眠くてたまらない……という事態は本末転倒です。

例えばスポーツ選手など、家の方針としてその道のプロを目指そうと考えている場合は週5、週6で習いごとに通いたいケースもあると思いますが、それと中学受験との両立は基本的に、物理的にも体力的にも非常に厳しいものだと言えるでしょう。

「時間と心の余裕」の有無をどう判断するか

どんな習いごとでも、様々な壁にぶつかったり、体力的にきつかったりする場面が訪れるものです。

そのように辛く苦しいとき、その負荷が本人の「まだがんばれる」一線を超えているかどうかは個人差の大きいところであり、習いごとの数や拘束時間、日数で判断することはできません。

そんなときは、中学受験生の皆さん自身が、今その習いごとを「楽しく」続けられているかどうかを落ち着いて考えてみてください。

辛いけど、楽しいですか?
その曜日が来ると嬉しいですか?

そう思えるのなら、多少スケジュールや難度、体面、精神面でキツく感じられることがあっても、その習いごとの負荷はあなたにとって、なんとか継続が可能なレベルだと言えるでしょう。

習いごと代わりに早期教育はあり?

英語や早期教育を中学受験生の皆さんが望む場合、つまり、楽しいとか、やってみたいと思える場合にそれらをやることはもちろん構いません。

ただし、習いごととそれらで得られるものは全く別物でしょう。

個人的には、小学校3年生までは早期教育よりも習い事をしつつ、家庭学習の習慣をつけたほうがいいと感じています。

お家の方に気をつけてほしいこと

このように、習いごとには現代では得られにくくなってしまった部分の学びを補ってくれる側面があり、身体感覚、知性、想像力を育みつつ、勉学にも良い影響を与え得るものです。

しかしながら、今回お話のメインとした低学年〜中学年よりもさらに幼い時代(未就学~低学年初期)には、習いごとよりも、親子の信頼関係、絆を育むことを大切にしていただけたらと思います。

また、習い事をさせるにしても、陥っていただきたくないのは、結果次第でお子さんを認めたり認めなかったりすることや、結果のみを褒めることです。

お子さんががんばったときには、結果はともあれ、ぜひともお子さんのがんばりそのものを認めてほしいのです。

そして、良い結果が出たときには、その結果とともに、そこに至るプロセスについても認め、褒めてあげていただけたらと思います。

なぜプロセスが大切なのか

お母さんやお父さんに結果しか誉めてもらえない状況が続くと、子どもはやがて、結果に至るがんばりや、プロセスを大切にしなくなります。

そうなると、たとえば、夏休みの宿題で、問題集一冊分答えを丸写しして満点ばかりのページで埋め尽くそうとしたり、誰よりも早く終わらせようとしたり、答え直しの際に間違っていた部分を見つけるとコソコソ書き直して丸をつけたり……というような無意味な行動を取ってしまうようになる子もいるのです。

こうなってしまってからそのような癖を直すのはなかなか難しいので、お子さんの習いごとの中ではぜひ、結果に至るまでのがんばりやプロセスを大切にし、温かく見守ってあげることを心がけていただければと思います。

中学受験生の皆さんがそれぞれの習いごとから、学ぶ楽しみや、出来そうにないと思えたことが出来るようになっていく感動、さまざまな発見や驚きをたくさん味わえること、そして、それらを通じて身体感覚、知性、創造力を大いに育めることを願っています。

【中学受験】デジタル教材使用率55%、AIツールとどう向き合う?

目次

デジタル教材と生成AIの現状
AIやデジタル教材を使うメリット
メリットがあればデメリットも存在する
AIはあくまでも「自分で考える」ためのツール

話題のチャットGPTやデジタル教材などのAIツール。

中学受験生の皆さんは学習に活用したり、それら(もしくは「彼ら」)と会話をしたりしたことはありますか?

デジタル教材と生成AIの現状

2025年5月8日、新興出版社啓林館が小学生の約55%が家庭学習でデジタル教材を使用していることを発表しました。(保護者327名を対象とした調査より)

中でも小学生がよく使用しているデジタル教材は、一位が「タブレット学習アプリ」(68.1%)、ついで「教育用ゲームアプリ」(30.8%)、三位が電子書籍・ドリル(27.5%)で、それらを利用する理由としては「楽しく学べるから」という回答が多かったそうです。

2019年にスタートした文部科学省のGIGAスクール構想を背景に、近年さらにタブレットやチャットGPT、アプリなどを使用したデジタル学習の普及が進んでいます。

しかし、便利で楽しい反面、これらを用いることにさまざまな不安や迷いを抱いている中学受験生の皆さんや親御さんも多いのではないでしょうか。

実際、生成AIを扱う各社の利用規約では、多くの場合、小学生の利用を「対象外」あるいは「保護者の同意のもと」に限定しています。

そこで今日はデジタル学習や、デジタル教材や生成AIを学習に用いることのメリット・デメリットを考えてみましょう。

AIやデジタル教材を使うメリット

まずメリットには、デジタル教材やAIを日常的に使うことによる情報活用能力の向上、そして何よりスピードと利便性がありますね。

分厚い教科書を何冊も持ち歩かずとも、気軽にいつでもどこでも学習したり、わからないことを一瞬で調べたりすることができますし、気になる分野をドリル的に演習するために、似通った問題を大量に集めることも実に簡単です。

また、アプリ系のデジタル教材は音や映像やゲーム要素などが加わり、通常の紙テキストよりも楽しく学べるかもしれませんし、AIは大量のデータを基に分析することに長けているので、学習履歴や到達度といったスタディ・ログから一人一人に最適な学習内容・指導方法を分析するなど、教育の質の向上に役立つことが期待できます。

ためしに夏休みの定番である読書感想文の作成をAIに促せば、これまで毎年何時間も机に向かって必死にやっていたのがバカらしくなるほど、瞬時にそれなりのものが作成されることに驚くでしょう。
(もちろん、生成AIからの抽出物をそのまま自分の成果物として使用することは、自分のためにならないこと、また使用方法によっては不適切又は不正な行為になることを理解しておくことが大切です)

もはや、私たち人間は記憶力や単純な文章作成力、作業スピードではAIに太刀打ち出来ません。

ですから、そのような力が必要な場面ではAIを大いに活用し、今後皆さんの生活や学習に積極的に役立てるのが普通のことになっていくと思います。

メリットがあればデメリットも存在する

しかし、気がかりな点もたくさんあります。

まず、物理的に長時間画面を見つめ続けることが、成長期の皆さんの目の健康や正しい姿勢の維持に悪影響を及ぼす可能性があります。

実際それらを使っているご家庭からは、
「タブレット学習で記憶した内容は直後のテストには効果的だけれど、なぜかすぐ忘れてしまう」
「その場では解けるようになっても、角度を変えた問題が出題されると解けない」
「筆圧が弱くなった」
「視力が落ちた」
「ゼロから自分の力で文章を書くことが億劫になった・出来なくなった」
など、様々な困り事をよく耳にしています。

また生成AIで調べ物などをする場合、AIが何に注目し、どのように分析したり判断をしたりした上で結果を導き出したかは見えづらいため、思考のプロセスを学ぶ機会が失われやすくなってしまう可能性があります。

AIの間違った回答(統計的にそれらしい応答ではあるが正しくない情報)も鵜呑みにしてしまうのではないか、という不安もありますね。

心も身体も発展途上である子どもたちへの健康被害や、「考える力」「学ぶ意思」を育む上で困難がある可能性が存在する点は、やはり見逃せない懸念事項です。

AIはあくまでも「自分で考える」ためのツール

私たちはAIツールがあくまでも「自分で考える」ための「ツール」であることを忘れず、それらを活用する際の事実確認(ファクトチェック)のやり方や重要性を身につけておくことが大切ですし、メインは紙の教材にして、補助的にデジタル教材などのAIツールを使用するなど、身体への負担についても注意深く配慮していきたいものです。

これはお子さんに限ったことではありませんが、AIの言いなりになってしまわぬように、さまざまなことに対して「自分ごと」として真剣に向き合う姿勢でいなければ、あっという間にAIに「使われる」ようになってしまったり、これまで私たちが当たり前に持っていた能力や意欲を奪われてしまったりすることでしょう。

中央大学の杉山直学長は学生たちの卒業式で、生成AIで作成した祝辞をあえて読み上げました。
そして、それについて「もっともらしいけど空虚」と切り捨て、「人は人にしかできないことに挑んでいくことが求められる」と、改めて卒業生らを激励しました。

すでにずいぶん前から、特に名門と言われるような学校の入試では、知識の蓄積だけを問うものではなく、学校や塾では誰も聞いたことや習ったことがないような、柔軟な思考力や創造力を問う問題が扱われるようになってきています。

技術の発展を拒絶する必要はなく、むしろ私たち人間はAIの力を大いに、積極的に「使い」つつ、人間が武器とする、人間だからこそ発揮できるプロデュース力や編集力という分野については、ますますその力を研鑽していく、というのが理想なのではないでしょうか。

そしてその要・基盤となるのが、自分が絶対的に信頼を置ける【身体感覚】や【知性】であり、【創造力】だと私は考えています。

これを読んでくれている中学受験生の皆さんが、そのような力を持った、これからの世の中をつくっていく人に成長されることを、今からとても楽しみにしています。

【中学受験】転塾する?しない?リミットはある?

目次

サピックスが夏期入室テスト日程を発表
転塾のタイミングとリミットは
成績不振のたびに転塾するのはNG
「転塾先でうまくいく」イメージを

5月下旬になり、新年度の塾通いもあっという間に3ヶ月が経ちました。

中学受験生の皆さんは新学年の生活リズムにもすっかり慣れ、そろそろ一度、落ち着いて学習状況を振り返ってみるのにちょうどいい時期だと思います。

サピックスが夏期入室テスト日程を発表

先日、小学校1年〜5年生を対象としたSAPIX(サピックス)夏期入室テストの申込受付が5月19日am10時に開始されることが発表されました。

サピの夏期講習の受講希望者は受験必須で、費用は3,300円、日程は2025年6月8日、首都圏・関西圏の各校舎で開催されます。

(※テストの結果が入室基準に達した場合、保護者対象の入室オリエンテーションを経て、入室希望校舎にて手続き可。入室時期は1~3年生と5年生は夏期講習または6月下旬、4年生は夏期講習または7月上旬から選択可。6年生は同日実施の「志望校判定サピックスオープン」が入室テストを兼ねる。)

サピックスが気になっている人は、実力試しや校舎・先生の雰囲気を知るために気楽な気持ちで受けてみるのも良いでしょう。

転塾のタイミングとリミットは

4・5年生の夏期講習前は、塾との相性を見直すのにとても良いタイミングです。

もちろん塾を変えたからと言って必ずしも成績が上がるとは限りませんが、新学年が始まって一定期間が経過したこの時期になっても学習サイクルが全くうまく回っていないということであれば、いずれにせよその原因を突き止める必要があります。

塾の先生の解説が足りないように感じる、進度が早くてついていけない、宿題だけで手一杯になっている、体力的に学校と塾の両立が厳しいなど、学習サイクルがうまく回っていない理由は様々だと思いますが、解決方法の一つとして転塾という手段もあり得ることを頭の片隅に置いておくと良いでしょう。

塾側としても、夏期講習は外部からの入塾生を受け入れる大きな機会の一つと捉えているケースが多く、この時期は転塾のチャンスも多く、相談にもしっかり乗ってもらえることが多いです。

塾もビジネスですから、今通っている所の先生に相談すると、否応なく引き止められてしまうこともあります。

できれば現在担当している先生たちだけでなく、中学受験の指導経験が豊富な外部の先生(個人指導塾や家庭教師の先生など)にも助言を求め、成績不振の原因を丁寧に探りましょう。

その上でやはり塾と合わない、塾の授業スタイルやテンポと相性が良くなさそうだということであれば、ひとまず外部生として他塾の夏期講習を受講し、転塾の可能性を探ってみるのも一案です。

転塾のリミットは5年生の終わりで、できれば夏期講習前くらいまでがベストですが、もちろん6年生であっても、どうしても今の塾で成績が伸びない 、学習サイクルが全くうまく回らないということであれば、尻込みせず、一刻も早く転塾を検討してみるのが良いと思います。

成績不振のたびに転塾するのはNG

ただし、成績が伸び悩むたびに次々と転塾することはおすすめしません。

コロコロ転塾していては、成績は決して伸びないからです。

それぞれの塾のスタイルや学習環境に馴染むための時間も少なからず必要ですし、学習内容もうまく繋がらず、習ったことが身になりません。

「どこかに自分に完璧に合う塾があるはずだ!」
と、しあわせの青い鳥を探し求めて塾を渡り歩くのはやめましょう。

塾探しに「完璧」や「正解」はありません。

自分に合った塾にいても、成績が伸び悩んだり、ときに落ち込んだりするのはよくあることです。

すぐに塾のせいにするのではなく、その現状や失敗を冷静に受け止め、なぜその方法ではうまくいかなかったのかを分析し、原因を明確にしましょう。

その結果転塾がベストという考えに至ることもありますが、灯台下暗しで、案外原因はほんの些細なことや、実に身近なところにある場合も多いものです。

そして、失敗しても安易に逃げ出すのではなくそこから立て直す経験を積むことによって、忍耐力や、困難を乗り越える力もグングン鍛えられていきます。

「転塾先でうまくいく」イメージを

それでもやはり転塾を検討することになった場合は、転塾先でうまくいくイメージをしっかり持てるかどうか、よく考えてみることが大切です。

例えばサピの学習進度が早すぎてついていけない、という問題点を抱えているとします。

この場合、同様の進度であるグノーブルへの転塾では、問題は解決しませんよね。

進度がやや緩やかな日能研のカリキュラムを確かめてみれば、今度は学習サイクルがうまくいっているイメージを持ちやすいはずです。

もしくは、そもそも競争が苦手で切磋琢磨し合う環境が合わないようだということであれば、個別指導塾や家庭教師を検討するのが良いでしょう。

夏期講習や本格的な入試演習が始まる前のこのタイミングに、皆さんが一度落ち着いて今の学習状況を振り返り、学習サイクルが良好に回っていくきっかけをつかめるよう願っています。

【中学受験】夏までの2ヶ月、算数に力を入れよう

目次

塾の算数が本格的になってくる?
算数が「積み上げの科目」と言われる理由
復習の方法
市販のテキストを使う際の注意点

ゴールデンウィークも終わり、すっかり初夏のような気候になってきました。

塾の算数が本格的になってくる

徐々に塾での学習内容も本格的になってきますね。

5年生は、遅くとも夏には算数の重要単元である「割合」を学習します。
関連する「比」と並んで、非常に重要な単元です。

割合や比の学習がなぜ重要かというと、他の様々な分野に割合や比の考え方を応用して学習が進んでいくからです。

例えば、「AはBの1.5倍」と言われると、これまでは「A=B×1.5」と式で表したり、線分図などを使って量のイメージを表したりしていましたね。

Bが24であれば、Aは24×1.5=36となります。

比を使いこなせるようになれば、

A:B=3:2

と表せますから、

②=24 だから
①=12
③=36

と、整数の世界の処理で片付けられます。

速さなどの文章題や図形の問題まで、以降あらゆる分野で割合や比の考え方を使い、算数の問題を早く、正確に、楽に解いていけるわけですね。

このように便利な割合と比だからこそ、しっかり使いこなせるようになっていないとどんどん差が広がっていってしまうのです。

算数が「積み上げの科目」と言われる理由

割合や比を使いこなそうとするとき、その前提として倍数、約数の感覚がしっかりついていて、同時に小数、分数の計算が自由に使えるようになっている必要があります。

このように、算数や数学はあらゆることが他のあらゆる単元の内容に関連するため「積み上げの科目」と言われるのです。

つまり現在お子さんがとの学年でも、今学習していることが、この先のあらゆることに関連するのだと意識しておく必要がありますね。

とりあえず夏までに、気になる単元や「消化不良」という認識がある分野があるなら、少しずつ普段の学習の中に取り入れておきたいですね。

復習の方法

復習の方法として、名門指導会の算数科主任、高野健一先生から、いい方法を教えてもらいました。

サピックスのお子さんの場合、やはり基礎トレが重要で、中でも「!」のついている問題を重要視するとよいとのこと。

基礎トレに出てくる問題は、基本的には過去に学習した分野の問題なのですが、その中でも「!」のついている問題は「基礎トレに初めて出てきた問題」なのです。
つまり、「毎日取り組んでいる問題の類題」ではなく、「初見の問題」として「1から考える」復習問題として解けるのがいいのです。

四谷大塚や早稲田アカデミーなどの「予習シリーズ」を使用する塾にお通いなら、4週の内容をおさらいする「総合」を大切にしましょう。
4回分の内容になりますから、解き方を覚えて当てはめる学習ではなく、考えて解くという作業がしっかりできるのがポイントです。

市販のテキストを使う際の注意点

市販のテキストを使うという方法もあります。

市販のテキストを使うときのポイントですが、解説が多くわかりやすいものを選ぶことです。

塾のテキストは「先生が解説する」ということが前提になっており、算数が苦手なお子さんが解説を読んでも「書かれている前段階のことを説明してほしいのに…」という内容になっていることがあります。

この部分を補いないようになっているか、しっかりと書店で確認することをおすすめします。

解説が多く詳しい問題集としては、中学受験情報局で主任相談員としてご一緒している前田真宏先生の「中学受験 すらすら解ける魔法ワザ」シリーズのほか、「プラスワン問題集」「塾技100」などがあります。

夏までの2カ月、ぜひ算数に力を入れてみてください。

【中学受験】5月病にならないために出来ること

目次

五月病ってなに?
五月病のサインと仕組み
新五月病にも注意!
大人の力を借りよう
五月病にならないために
散歩や食事、就寝時間の工夫も効果アリ

街にはハナミズキやツツジが一気に花開き、緑の葉もツヤツヤと輝いていますね。

さて、そんな爽やかな陽気とは裏腹に、この時期はご存じ“五月病“に気をつけたい季節でもあります。

2月に塾の新年度が始まり3ヶ月、小学校では新学年に上がって1か月。
生活環境が大きく変化する中、新たな環境に対応するために中学受験生の皆さんは知らず知らずとても気を張っていたことと思います。

人によってはG.W.の長い連休を挟むことでその緊張の糸がぷつりと切れ、急に憂鬱になったり、体調が優れなくなったり、やたら眠い、イライラする、学校や塾に行きたくない、不安や焦りでなんだか落ち着かない……そんな不調に襲われてしまうことがあるかもしれません。

この時期に現れるこのような症状の大きな原因のひとつと考えられているのが、いわゆる“五月病“です。

五月病ってなに?

五月病は病名ではなく症状を表すもので、主に疲労やストレスが原因と言われている、軽い「適応障害」や「起立性調節障害」に近いものですが、ひどくなると頭痛、腹痛、動悸、眩暈、さらに進むとうつ病に移行してしまうこともあります。

ぜひ早めに気づき、対処したいものですね。

五月病のサインと仕組み

五月病の初期のサインは、朝いつもどおりに起きられなかったり、なんだかやる気が出なかったり、やたら疲れを感じたりすることです。

頑張り屋さんや真面目な人がなりやすいと言われているのですが、その仕組みとしては、2月や4月からスタートした新生活のストレスや不安に立ち向かい、戦闘モードで気を張りながら無理を続けてしまった結果、初めのうちは充実感や多幸感で何とか心と身体の疲れを誤魔化せていたものの、疲労とストレスが限界まで蓄積してしまい、ちょうど慌ただしさがひと段落するG.W.の連休明け頃に、頑張ろうとしてももう頑張ることができない状態に突如陥(おちい)ってしまう、ということです。

新五月病にも注意!

また、近年ではG.W.明けではなく、六月に入ってから調子を崩してしまう“新五月病“も増えています。

“新五月病“というのは、連休明けは本人も保護者の方も五月病を意識し、注意深く過ごすことでなんとか不調を避けられたものの、梅雨時の気候が不安定になってきた頃に、同様の症状が現れてしまうことを指します。

特に中学受験生の皆さんは、5月から一気に増える模試の影響で休日が減ってしまい、課題や宿題も増える上に梅雨のジメジメした気候や日照不足も重なって、6月は心と身体のバランスを崩しやすい時期です。

5月〜6月にかけては特に、ぜひ注意深く自分の心や身体に耳を傾けてあげてくださいね。

大人の力を借りよう

また、皆さんはまだ小学生なので、自分では自分の不調に気が付かず、頑張りすぎてしまうこともあります。

もしもこの記事を読んでいるのが皆さんご本人のみであれば、ぜひ保護者の方にも読んでいただき、

・子どもは大人と違い、「自分では自分の不調や疲れになかなか気づけない」こと。

・「これ以上は体調を崩す」というあらゆる場面での判断がつきにくく、そのために早めの睡眠や服装での体温調整などの対策を講じにくいこと。

・保護者の方など周囲の大人がお子さんを注意深く観察し、早めに不調に気づいてあげられると、五月病予防にとても効果的であること。

を伝えて差し上げてくださいね。

五月病にならないために

この時期に少し特別なケアをしたり、意識して休みを取ったりすることも大切ですが、普段からストレスを溜め込まないことはもっと大切です。

たとえば新学期が始まり、大きく生活環境やリズムが変わって未だうまく課題や宿題をこなせていない人は、具体的にどのようなスケジュールを組めば解決出来そうか、この機会に落ち着いて見直してみましょう。

一人でうまく計画が立てられなければ、塾や家庭教師の先生に相談してみるのもおすすめですよ。

また、すでに心や身体に不調を感じ始めていたら、ぜひ学習面だけでなく、新年度が始まってから、人間関係や生活リズムに何か支障や課題が生まれていないかどうか、振り返ってみましょう。

問題が見つかった場合は具体的に解決策を考えてみましょう。

一人で難しければ周りの人の力も借りて、改善のために行動を起こしてみると、すぐには解決せずとも、きっと気分が変わります。

ノートに書き出してみたり、友達や保護者の方に話してみたりするだけで気持ちが楽になる場合もありますから、いずれにせよ、辛いことは一人で心の中に抱え込まないようにしてくださいね。

散歩や食事、就寝時間の工夫も効果アリ

いわゆる“幸せホルモン“である「セロトニン」の脳内分泌が活発になるよう散歩をして日光を浴びたり、乳製品・バナナ・白米などを積極的にとることもオススメです。

少し思い切って休みをとり、気分転換になる楽しいことをしたり、体を動かしたりするのも良いですね。

連休中に就寝時間が後退することで体内時計が狂い、心身の不調が生じ始めるケースも多いので、連休中も早寝早起きを心がけ、夜更かしの悪習慣を作らないことも、休み明けに良い結果を生みますよ。

心身の調子を崩しがちなこの時期を、中学受験生の皆さんが、気負いすぎず、上手にメリハリをつけながら、健康で活き活き過ごせることを心から願っています。

【中学受験】G.W.は読書も楽しもう!〜2025本屋大賞発表〜

目次

入試の国語には前年話題の本がよく出題される
「本屋大賞」に注目しよう
大賞〜第三位はどんな本?

澄んだ空と爽やかな風が心地好いですね。

入試の国語には前年話題の本がよく出題される

さて、中学入試の国語では、過去1年間で話題になった作品がよく扱われているのをご存知ですか?

もちろん宮沢賢治や太宰治、武者小路実篤など古い作家の作品も扱われますが、多くの学校で新作・新刊本が好まれる理由は、受験生がテキスト等で学習していない初見の文章の方が、その実力をしっかり測ることが出来るからです。

国語では出題された作品が既読であるかないかにより、読解のスピードや理解度がまるで変わりますし、塾では題材のテーマや会話の内容について授業内で深く掘り下げ、噛み砕いて解説してしまうため、入試では出来るだけ多くの生徒がテキストやテストで触れていない作品を選び、平等・正確に生徒を評価しようというわけです。

もちろん塾側もそれを踏まえて、名作と呼ばれる過去の作品をしっかり押さえつつも、毎年新作をテキストやテストで扱うようにしていますが、それらの作成にはある程度の時間を要するため、予想問題や対策がその年度の入試には間に合わないこともしばしばです。

ですので、生徒の皆さんはぜひ、G.W.や夏休みなどのまとまった時間が取れるタイミングには本屋へ自ら足を運び、話題の新刊をチェックしてみましょう。

特に、皆さんと同じ10代の少年少女が主人公の小説や、皆さん〜高校生くらいの世代に向けて書かれた論説文などは読みやすい上にテストにもよく出るのでおすすめですよ。

「本屋大賞」に注目しよう

「話題の新刊」と言いましたが、具体的な探し方としては、Amazonなどのネットでランキングをチェックしても良いですし、本屋で平積みの本を確認したり、各賞を受賞した作品を手に取ってみたりすると良いと思います。

ちなみに4月9日には書店員が売りたい本を選出する「本屋大賞」の発表がありました。

例年、本屋大賞の作品が確定するよりも中学受験で扱われるタイミングの方が早いので、これらの作品がそのまま入試に出ることは多くありません。

しかし、これらの作品により話題になった作家の別の作品が入試に出題されることは大変よくありますので、気になった方はぜひ、以下の作品でも、同じ作家の別の作品でも良いので読んでみてくださいね。

大賞〜第三位はどんな本?

参考までに、大賞〜第三位までのあらすじはこのようなものです。

◎2025年本屋大賞

☆第一位(大賞)『カフネ』(阿部暁子著/講談社)

*法務局に勤める野宮薫子は、溺愛していた弟が急死して悲嘆にくれていたが、弟の元恋人・小野寺せつなに会い、やがて彼女が勤める家事代行サービス会社「カフネ」の活動を手伝うことになった。弟を亡くした薫子と弟の元恋人せつなの二人の距離は、食べることを通じて次第に縮まっていく。

☆第二位 『アルプス席の母』(早見和真著/小学館)

*秋山菜々子は、神奈川で看護師をしながら一人息子の航太郎を育てていた。シニアリーグで活躍する航太郎には関東一円の学校からスカウトが来ていたが、選び取ったのはとある大阪の新興校。息子とともに、菜々子もまた大阪に拠点を移すことを決意するが……。
(※こちらの作品は2025年度の入試で複数採用されました。)

☆第三位 『小説』(野崎まど著/講談社)

*5歳で読んだ『走れメロス』をきっかけに、内海集司の人生は小説にささげられることになった。12歳になると、内海集司は小説の魅力を共有できる生涯の友・外崎真と出会い、二人は小説家が住んでいるというモジャ屋敷に潜り込む。そこでは好きなだけ本を読んでいても怒られることはなく、小説家・髭先生は二人の小説世界をさらに豊かにしていく。しかし、その屋敷にはある秘密があった。

各塾のG.W.講習は、この先に控えている夏期講習よりも授業や課題のボリューム・負担が比較的少ないです。
ぜひこの機会を利用して読書も大いに楽しみ、読む力をメキメキと育ててくださいね!

皆さんが心も身体も健やかに、充実したG.W.を過ごせるよう願っています。

【中学受験】大量の塾教材・プリントは、こう整理しよう!

目次

すべての整理は「その日のうちに」
具体的なテキストの整理方法
プリントの整理方法

続いていた雨模様も過ぎ去り、さわやかな陽気になりましたね。

週末は実力判定(日能研)や合不合判定テスト(四谷大塚)など、新年度最初の模試だった受験生の皆さんも多かったと思います。

手応えはいかがでしたか?

テストは受けることも大切ですが、それよりずっと大切なのは復習です。

結果は丁寧に分析し、きちんと弱点を克服しておくようにしてくださいね。

さて、大手中学受験塾では早くも新年度が始まり2ヶ月が経ちました。

小学校でも新学年がスタートし、ようやく新しい生活リズムが掴めてきた頃ではない可と思いますが、中にはまだ日々の課題に精一杯で、塾で配られるプリントやテキストが机の上に山積み……という人もたくさんいると思います。

せっかくの良い教材も、必要な時に取り出せなくては宝の持ち腐れですし、何より教材が山積みになった机では気持ちよく勉強ができませんよね。

そこで今日は、ドンドン増える塾のテキストやプリントを整理するおすすめの方法をお伝えします。

すべての整理は「その日のうちに」

まず、整理のペースですが、授業があった「その日のうちに」やるのがおすすめです。

忙しい皆さんが毎週末、整理整頓のための時間を取ることは難しいですよね。

特に高学年は配布物が多いため、たとえ1週間でもそれらを放ったらかしてしまうと、どれがいつのものだか分からなくなったり、答えと問題が揃わなくなったりと、整理に余計な手間と時間がかかってしまうことになるので気をつけましょう。

具体的なテキストの整理方法

それでは、教材ごとにおすすめの整理方法をお伝えします。

塾でもらってきたテキストは帰宅したらすぐに処理しましょう。

「処理」と言ったのは、それらをファイルなどに仕分けする前に、ある手順を踏んでほしいからです。

たとえばSAPIXのように授業毎に配布されるタイプの場合は、その都度プリンターでスキャンします。

3・4年生のうちは保護者の方にお願いしても良いですが、5・6年生になったら一緒に、もしくは一人でやれると良いですね。

この作業は慣れるまでちょっと面倒ではありますが、たとえ復習する時間や体力が残っていない日もスキャンだけは欠かさず行う習慣ができれば、少なくとも毎回、その日習ったことにざっとでも一通り目を通せることになります。

その日に習った内容を都度自覚すること、これは小さなことのようで、意外と効果的なことですよ。

また、前年度のテキストは基本的に見返すことはありませんが、ある単元において基礎からまるで判っていないことが発覚した(ゼロからやり直しが必要になった)場合はそれらを見返すこともあるかもしれません。

もちろん皆さんがそのような残念な事態に陥ることが無いように願っていますが、こうしてデータで残しておくことで、次の学年に上がった時になんの躊躇(ちゅうちょ)もなく原本をドサッと捨てられるメリットもあります。

過去1年分のテキストがごっそりなくなると、部屋が見違えるほど清々しますよ。

自宅にあるプリンターにデータ名の記録やファイリング機能も備わっている場合は、ぜひスキャンの際に単元名やテキストナンバーを入力して保存しておきましょう。

出来ればこのときデイリーチェックテストのみ、基礎問題のみなど、分類ごとに仕分けておくと、復習の際に必要な教材を簡単に探したり、過去問演習で発覚した苦手なジャンルの類題のみをチョイスして一気にプリントアウトできたりと、とても重宝します。

日能研のようにテキストが学年や学期などの初めに配布される場合は、科目ごとに裁断しておき、講習が終わったらスキャンしておけばよいでしょう。

このときカラーのデータが乏しいと感じる場合は、スキャンの際にネットや参考書からテーマごとに重要な写真やデータを選んで加えておくと、自分だけの充実した復習教材を作ることができてオススメですよ◎

プリントの整理方法

プリント類はテキスト内容と連動・重複していることがほとんどです。

科目・種類ごとにファイルやボックスを作り、授業の度にきちんと仕分け保存するとよいでしょう。

ボックスの背に科目や種類の名前を書き(もしくはシールなどを貼り)、復習しやすいように時系列にきちんと並べてしまっておくと、復習の際も便利です。

塾で配布されるテキストやプリント類は、各塾の講師陣による長年の入試研究結果が凝縮された、頼もしい受験勉強のパートナーです。

受験生の皆さんが志望校合格に向けて、これらの教材を最大限に活用でき、清々しい環境で充実した時間を過ごせるよう心から願っています。