2020入試分析算数

目次

筑駒中
開成中
麻布中学
武蔵中
桜蔭中
女子学院中
雙葉中
駒場東邦中
栄光学園中
聖光学院中
豊島岡女子学園中学校
慶應義塾中等部
早稲田中
早稲田実業中
渋幕中
渋渋中

算数 総括

今年の算数の入試問題についても、学校ごとの特徴については概ね例年通りだったといえます。例えば、試験場での作業や思考を問う問題を多く出す学校(麻布、栄光学園など)、標準的な問題で処理力が求められる問題の学校(女子学院、慶應中等部)など例年の傾向通りでした。大学入試改革など教育を取り巻く環境は目まぐるしく変わっても、学校ごとの方針はしっかりと定まっているということでしょう。

一方で問題の質を見ると全体に変化の兆しが感じられます。それは塾などで学習した手法を「当てはめよう」という意識で見ると難しそうに見え、問題に書かれたことに素直に考えると考えやすい問題が増加していることです。発展的なテクニックを使う必要のある問題が少ないという点では「易しい」のですが、解法パターンの習得中心の学習をしていると「難しい」とも感じられ、どれだけの手法を身につけたかよりもどのような学習をしてきたかが問われたといえます。

昨今迷走しているように見られる大学入試改革ですが、元々は学力の3要素である①知識・技能、②思考・判断・表現、③主体性・協働性をバランスよく伸ばす方向への教育改革であり、その一環として入試問題もこれら3要素をバランスよく問うものにしましょう、というものです。今回分析の対象とした学校の多くは元々思考力を問う問題が多かったですが、今年はさらに現実的な設定を長文で与えどういう状況か読み取らせるもの、地道な作業をしてみることで構造が明確になるものなど、「何とかしてやろう」という主体的・能動的な姿勢での取り組みから考える必要性が高まり、この改革の主旨に沿った変化ともいえます。

本来であればそのような問題への対策はこれら3技能をバランスよく伸ばす方向に向かうべきです。しかし現実に行われている対策の主流は過去に入試に出されたタイプの問題を網羅的に学習し、しかも過去の出題から次に出そうなテーマを先回りして教えてしまう方向へと向かっています。「入試に必要なテーマ、予想されるテーマはすべてこのテキストに載っているのでこれさえきちんと身につければ大丈夫です!」と言われれば魅力的に聞こえますが、この方法は思考力を試す問題を知識に帰着させているものと言えます。

このような学習が思考力を培うものにならないことは明白ですが、さらに大きな問題をはらんでいます。それは教わることに慣れすぎた「学習=教わった手法を当てはめるもの」という姿勢がしみ付き、自分で考えようとしない受け身な子を作り出してしまうということです。難関の入試を合格して入ってきた学生にこのような姿勢が強く見られるようになると「これで本当に大丈夫なのか」と感じるのも当然でしょう。

さらにそのようにしてすべてを盛り込もうとしたテキストはほとんどの子にとってオーバースペックなものです。それを何とかこなそうとひたすら反復する結果、問題は解けてもそれがどういうことかよくわかっていない、すなわち使えない知識にもなりがちです。知識偏重に見えて実はきちんとした知識にすらなっていないとすれば、これは皮肉としか言いようがありません。

昨今の教育改革の流れからもこのような入試の流れは継続するものと考えられます。ではこのような問題に対応できるような力をつけるにはどうすればよいでしょうか。そのためには「何を」するかよりも「どのように」学習するかに注目することが大切になります。

算数の学習において、さまざまな手法を正確かつスピーディーに使えるようにすることはもちろん必要です。一方で個々の概念や解法についての正しい理解やそれを組み合わせて考えるといったことも必要であり、これにはどうしても時間がかかります。これらは両輪としてバランスよく行う必要があるのですが、効率を求めるあまり、そのバランスがスピーディーに解法を適用する方向に傾きがちな環境にあります。これには塾での中学受験のカリキュラムが早期化かつ肥大化し、膨大な学習内容や宿題に追われやすいことの影響もあります。

このバランスをとるためには、きちんと納得する、時間をかけて考えるといった時間をかけたスローな学習を意図的に取り入れていく必要があります。例えば基本的な手法の定着においても覚えて反射的に引き出せるまでひたすら繰り返すのではなく、一度理解したと思ったら忘れた頃まで待ってからもう一度やってみるのです。この時断片的に残った知識から「なぜ」このようにしたのか、「どのようにすれば」次のことにつながるかなど考えて組み立てられればそれはきちんと定着した、使える知識となっています。その際には数が小さい場合など具体的な例を考えて確かめてみることもよいでしょう。

また、演習や応用問題に取り組む際には鮮やかな解法を追い求めるのではなく、下手な方法であっても1回で当てるつもりで粘って考えてみることも大切です。「今わかっていることは何か」「何が聞かれているのか」「そのためには何をすればよさそうか」などと考えてみること、また「どんな状況か」捉えるために図示する、書き出すなどの作業も有効です。

このようにスローな学習というものはただゆっくりすることではなく、自問自答しながら考える学習のことです。そして追われやすい環境の中でもきちんと自問自答する習慣のある子にとって、今年の問題は非常に取り組みやすいものだったはずです。

「難しい解法をたくさん詰め込む必要はないよ、その分自問自答しながら学習してきてね。」今年の入試問題はこのことを雄弁に語っていたように見られます。

筑駒中

大問4題でどの大問も前半が取り組みやすく、最後の1問が考えさせる問題になっています。また解法よりもその場の作業力が重視される点でも例年通りの構成です。40分と時間的には厳しいですが、昨年のような難問はないため、受験生のレベルを考えると間違えても2問までといったハイスコアでの勝負になったものと思われます。

大問 小問 出題内容 難易 知識 思考 処理
1 1 場合の数(不定方程式) A 1 1 1
2 A 2 1 2
3 B+ 2 3 2
2 1 並べ替えてできる数字の和 A 1 1 1
2 B- 2 2 2
3 C- 2 3 3
3 1 規則性(タクシー料金) A 1 1 1
2 A 1 1 2
3 B 1 2 3
4 1 面積比・和差算 A 1 1 1
2 B- 2 2 1
3 C 1 3 1
平均 1.42 1.75 1.67
  1. 素直な不定方程式で、(2)までは塾のテキストにそのままあるタイプです。(3)は定番手法そのままでは通用しませんが、47,97、147という数字と(2)との関連性から考えたいところです。
  2. 数字を入れ替えてできる数の和を考える設定はおなじみですが、異なるもののみを加えるため、同じ数字がいくつ使われているかで場合分けが必要です。この点を見抜いた上で(3)では短時間で慎重に調べ上げることが求められます。
  3. タクシー料金もよくみる設定ですが、時間による料金が加わるという味付けがなされています。ずらさない緻密さが求められますが、今年の中では取り組みやすいので完答したいところです。
  4. 長方形を4つの三角形に分割したときの面積を考える問題です。(3)単独では難問ですが、(2)がそれを考える上でのヒントになっています。

今年はどこかで見たような設定の問題に一ひねりを加えた問題が多く並んだこともあり、各大問の前半は定型的な手法で解決できる問題が目立ちましたが、解法を「知っている」ことよりも「正確に作業し切る」ことが求められているのは例年通りの特徴です。定型的な手法を多く学習する4、5年生では高度な解法よりもこのような「解き方はわかるけど最後まで正確に合わせるのが難しい」問題こそ重点的に取り組むようにしてください。その際には見てわかりやすい書き方と、調べ上げでは順番通りに行うことがポイントとなります。

しかし各大問の(2)までは筑駒中入試においてはあくまで予選にすぎません。決勝となる(3)ではそれらを一ひねりした問題やその場での作業に基づいた思考が要求される問題が出され、筑駒中合格のためにはこれらのいくつかを攻略することが求められています。

一ひねりしたタイプの問題に対応するには、単に解き方を覚えるのではなく「なぜその方法で答えが出るのか」まで踏み込んだ理解が大切になります。特に規則性の問題では「調べたらこのようになった」という算数的な解き方はもちろん大切ですが、さらにその上でなぜそのような規則になったのか(階段上りの問題でなぜフィボナッチ数列が出てくるかなど)まで踏み込んで考えてみるとよいです。

その場での作業や思考が試される問題に対応するにはじっくり時間をかけて考えることが大切で、特に5年生まではそのような時間を意図的にとるとよいです。一方で入試が近づくタイミングでは40分という短い時間でなるべく多くの得点につなげる戦略も大切になります。各大問ごとには易→難の順に配列されていますが、どの大問が解きやすいかは決まっていないので、過去問に取り組む際には時間を意識して解き切る、捨てる、後回しにするといった問題の取捨選択にも気をつけて取り組むようにしていきましょう。

開成中

毎年のように出題傾向が大きく変わる開成中の算数ですが、今年は塾のテキストにそのままありそうな問題が皆無で、状況を捉えるまでにじっくりと考えさせる問題がずらっと並びました。易しい問題がほとんどないため得点率は近年で最も低く、85点満点で受験者平均38.6点(昨年比-12.4点)、合格者平均49.5点(昨年比-15.1点)と苦戦した受験生が多かったようです。しかし難しすぎる問題はなく、状況が見抜ければ後は一本道で解決するものが多かったため、じっくり粘ることでポイントを見抜けた受験生は算数で一気に優位に立てたものと思われます。

大問 小問 出題内容 難易 知識 思考 処理
1   へだたりグラフ・推理 B+ 1 3 3
2 1 速さ(円周上の点の移動) B 2 3 1
2 B 2 2 1
3 B+ 2 3 3
3 1ア 調べ上げ・つるかめ算 A 1 1 2
1イ A 1 1 1
2①② 場合の数 A 1 1 2
2③~⑥ A 1 1 2
2⑦⑧ B+ 1 3 3
4   立体図形(影の作図) C- 2 3 3
平均 1.40 2.10 2.10
  1. へだたりグラフから考えられる状況をすべて特定する問題です。1分間に生じる距離の差として考えられるものをすべて列挙し、最も極端な1~2分後に注目できれば後はすべての場合を調べることで答えられます。1問目としては難しく、面食らった受験生も多かったことでしょう。
  2. 円周上の点の移動というおなじみの設定ですが、点Pの動きが複雑です。(1)(2)を手掛かりにして状況の捉え方がわかると、後はおなじみの円周上の旅人算になります。
  3. お金の払い方に関する場合の数の問題です。会話文で説明が長くなっていますが、きちんと読めば手がつきやすいように誘導されているので、ここできちんと得点を稼ぎたいです。下から4行目の花子のセリフの意味がわかると最後までたどり着くことができます。
  4. 立体の影に関する問題です。影の形から光の向きを特定させる点が目新しいですが、この点をクリアすれば、その後は地道な処理が求められるものの定型的な作業で解決することができます。

冒頭に述べた通り、開成中の算数は毎年のように出題傾向が変わるので、今年の問題だけで対策を考えることは危険です。2年前のような定型問題のオンパレードも何年かに一度見られるので、何を出されてもきちんと対応できるようにすることが求められます。塾で通常扱われるタイプの問題についてきちんと習得することはその大前提で、開成中受験生の多くはそのような問題には強いですが、今年の問題はそのような解法暗記に傾きすぎた学習に対する警鐘にもなっています。ここでは、今年のような目新しい問題に対応できるような学力をつけることに焦点を絞って対策を考えていきます。

まず4、5年生の間は多くの塾では定型的な解法を習得する時期に充てられています。それ自体は必要なことですが、目の前のクラスアップのみを目的に、言われるがままに大量の問題をひたすら覚え込むくらいに反復演習することは、「算数=頭の中にある解法を引き出すだけのもの」という誤った思考法の刷り込みにつながり危険です。むしろ反復はほどほどにし、頭の中にある「何となくこのようなことをしていた」という断片的な情報から、正しく解法を組み立てられる状態になっていることが、範囲の広いテストへの対応力ばかりか応用が利くことにもつながります。そのためには問題に取り組む前に一度納得できるところまできちんと落とし込む、その上で適宜間を置いての練習を心掛けてください。それで時間に余裕ができた場合はテキストの後ろにある発展的な問題に取り組むとよいですが、これまでに学習した解法を組み合わせれば解けるはずの問題なので、時間をかけて粘ってみるようにするとよいです。スピーディーに問題を解くこととじっくり考えることの両者をバランスよく取り入れることが大切です。

このことは6年生でも同じですが、特に過去問や開成中向けの特別講座の使い方がポイントとなります。最も大切なことは「教わって理解する」受け身の姿勢ではなく、「何としてでもその場で正解する」という能動的な取り組みです。この段階での「塾で教わる→繰り返してその問題をできるようにする」だけの学習は合格から遠ざかるためのものです。最初から解答にあるようなスマートな方法のみを目指すのではなく、多少泥臭くても何とか答えにたどり着こうとする姿勢で取り組むようにしてください。そのように考えた後だからこそスマートな解き方の良さがわかり頭にすっと入ってきます。

この能動的な取り組みは、頭の中だけでうんうん考えるのではなく、「目」で追ってきちんと読む、「手」を動かして整理したり書き出したりするという動作が伴うものです。また最初から最後まで一発でつながることもあまりありません。問題を読んでわかったこと、聞かれていることから「こうなりそう」と思ったことは答えにつながるかは別にしてなるべくわかりやすく書きながら考えるようにしてください。開成の解答用紙には途中過程用の広いスペースがあり、この考えた跡も評価されている可能性が高いです。

麻布中学

例年、思考力、試行錯誤力が問われる良問が出題され、単元では、速さと比、場合の数、平面図形、数の性質、規則性の問題がよく出題されます。いずれも、式や考え方を記述するため、部分点を意識して答案を作ることも重要です。昨年は大問が1問減り5問でしたが、今年は例年通り大問6問に戻りました。出題は例年通りで、「大学入試がどう変わろうとも欲しい生徒像は決まっている」と言う、麻布の考えがうかがえます。

大問 小問 出題内容 難易 知識 思考 処理
1   比例式(差一定) A 1 1 1
2 1 平面図形(おうぎ形) A 1 1 2
2 B- 1 2 1
3 1 場合の数 A 1 1 1
2 B 2 2 1
4   食塩水の濃度 B- 1 2 2
5 1 平面図形(図形の移動) B 1 2 2
2 B 1 2 2
6 1 速さ(点の移動) A 1 2 1
2 B 1 2 1
3 B 1 2 1
4 C 1 3 2
平均 1.08 1.83 1.42
  1. 必答問題です。
  2. おうぎ形が分割された平面図形の求積問題です。斬新ですが、特別な知識は必要ない問題です。
  3. 試行作業に慣れている受験生にとっては難しい問題ではなかったでしょう。
  4. 少しひねった問題のようですが、場合分けをして丁寧に解けば難しい問題ではありません。
  5. 6年ぶりに三角格子が戻ってきました。「星形」の周上を円が移動する面白い問題です。作図後、対称を利用してできるだけ簡単に解けたかどうか?がポイントとなります。
  6. 誘導に沿った丁寧な作業力と、前問と関連付けて考える力が問われた、まさに「ザ麻布問題」です。後半の(3)(4)は、「8の字に動く2点の関係を考える」と言う斬新な問題ですが、前半の(1)(2)と関連付けられたかどうかがポイントになります。

数年前までは、ほぼ難度順に問題が並び、「問題用紙3枚のうち、1枚目は必答。3枚目の最後の問題はインパクト大の難解な問題のため部分点狙い。」と言うのが定石でしたが、ここ数年は必ずしもそうとは言えません。このため、全体を見渡し、「どの問題は必答で、どの問題は部分点狙いか?」の判断力が必要です。また、近年解きやすい問題が増えているため、捨て問はないと考えて対策する必要があります。

上記傾向より、「古い過去問は難しい問題が出てくるため、今の入試対策では必要ない」と考えるかもしれませんが、決してそうではありません。麻布の問題は一貫して丁寧な誘導が特徴で、前問利用できたかどうかが合否を分けます。このため、過去問を多く解くことで、麻布の問題傾向を知ることは必須と考えます。

小4、小5の間は、標準問題はもちろん、時間をかけて試行錯誤する問題にも親しんでおくことをお勧めします。初めて見る問題だけれど、高度な知識がなくとも解ける問題を、「ああでもない、こうでもない」と楽しめるタイプなら、麻布の算数に向いていると言えるでしょう。麻布の入試問題では、手が動かないと思考が止まってしまいます。手を動かす習慣をつけておくことも重要です。
小6の夏以降は、できるだけ多くの過去問を解き、麻布の入試の出題傾向に慣れることが必要です。

武蔵中

出題形式など全体像は今までとほぼ変化がありませんが、今年目を引くのは、「論証問題」が最後ではなく、一つ前の3番に位置したことでしょう。例年、受験者平均点が低い理由の一つに、最後に出題される「論証問題」の難度の高さがありました。今年は、出題順を入れ替え、難度をやや下げたおかげで、受験生が解きやすい問題に落ち着いたように思います。ただ、その代わりに最後に配置された問題が、ややこしい「概数の逆算」だったので、全体の難度変化はプラスマイナスゼロと言ったところでしょう。結果、例年通り、前半でしっかり得点し、後半でいくらか拾えれば合格点に届く入試でした。

大問 小問 出題内容 難易 知識 思考 処理
1 1 数の性質(一の位の周期) A 1 1 1
2 つるかめ算 1 1 1
2 1 平面図形(相似の利用) A 2 1 1
2 2 1 1
3 1 数の性質(論証・場合の数) 1 2 1
2 B 1 2 2
3 1 2 3
4 1 概数の計算・逆算(整数の範囲) 1 1 1
2 2 2 2
3 2 2 3
平均 1.40 1.50 1.60
  1. (1)634(ムサシ)にかけた規則性の問題ですが、ありえないほどの易問でした。
    (2)値引き分に注目すれば、典型的なつるかめ算です。
  2. 受験生には、どこかで見たことがあるような平面図形(相似の利用)の典型題です。
  3. 数の性質・場合の数の論証問題です。(1)の内容が、その後の設問の大きなヒントになっています。男子上位校によくある出題パターンです。(2)(3)は少々手間がかかりますが、難度が適切で、本校志望者だけでなく、多くの受験生に解いてもらいたい良問です。
  4. 獲得票数を按分操作する問題です。問われていることを理解できれば、(1)は易問です。(2)(3)は、概数の逆算で、あてはまる整数を絞り込みます。数の扱いに長けている受験生なら、いくつかあてはめて解答できたかもしれませんが、高い計算力が必要で、正答率はぐっと低くなったでしょう。

全学年を通じて、典型題の習熟は不可欠です。ただ、数字替えの問題に慣れてしまって、丸覚えの学習に終始すると、武蔵独特の問題設定に対応できません。小4、小5から、問題を解く都度、「なぜ」「どうして」と思いながら、問題の仕組みや成り立ちを深く考察する姿勢が必要です。「習熟」と「考察」が入試問題攻略のポイントです。

また、小6の夏ごろまでに、制限時間を気にせず、過去問を使って「論証問題」を粘り強く解く練習を積むと良いでしょう。完答をすることよりも、問題の条件を整理し、丁寧に調べ上げていく経験が大切です。また、2番に代表される平面図形の問題は出題頻度が高く、小6後半での重要課題として、単元学習の際、入念に演習を繰り返しておきましょう。

「前半の典型題で基礎となる点を拾って、後半で出題する武蔵オリジナル問題で、君の力を見せてください。」と言う学校側のメッセージに応える姿勢こそ、武蔵中合格への鍵となるはずです。

桜蔭中

桜蔭の算数と言えば、①一読しただけでは理解できないような長く複雑な問題文、②緻密な作業、③凄まじい計算を大きな特徴としてきましたが、昨年から③が消え、今年は①もなくなったため、唯一桜蔭さしさを感じさせたⅠ(3)以外は、どこかで見たことのあるような、取り組みやすい問題が並びました。中でも、これまではⅠ(3)のような、特殊な状況を的確に処理させるという方向で難易度を高めてきた桜蔭が、今年はⅢのような、図形の基礎知識を駆使させる形で難易度を高めたのは特筆すべき点です。読解力と作業力を重視する路線から、深い理解を重視する路線へと舵を切り始めたのかもしれません。来年にどのような問題が出題されるのか目が離せません。

必ずしも難易度準に問題が配置されていたわけではなく、処理に時間がかかる問題とあっという間に解ける問題が混在していたので、前から順番に解くことにこだわらずに、手際よく自分が解ける問題を確実に解き進められたかどうかが勝敗を分けたと思われます。昨年に続き、合格者平均点は高そうです。

大問 小問 出題内容 難易 知識 思考 処理
1 1 四則計算 A 1 1 2
2 割合(消費税) A 1 2 1
3① 植木算 A 1 1 2
3① 周期算 B 2 2 3
2 1① 速さと比 A 1 1 2
1② A 1 2 2
2a 立体の表面積と体積(3題) A 1 1 2
2b 周期算(テープつなぎ2題) B- 1 2 2
3 1 三角形の相似 A 1 1 1
2 立体の切断と体積 A 1 1 1
3①② 三角形の相似・垂直な2直線(空間) B 2 2 1
4 1 倍数 A 1 2 2
2① 芋づる算 A 1 1 2
2② 倍数 B 1 2 3
平均 1.14 1.50 1.86
  1. 数年前までは(1)で四則混合の計算問題と逆算が1題ずつ出題されていましたが、一昨年は逆算1題、昨年は計算1題、今年は逆算1題のみの出題でした。来年も計算問題は1題のみでしょう。(2)は状況を整理すると非常に単純な問題です。(3)②は全問題の中で一番厄介で、後回しにすべき問題でした。最初の方で時間を食ってしまうと、平静さが失われてしまいます。合格点をたたき出す上で、判断力が非常に大切です。
  2. 他校の問題と比べると円周率の計算が厄介に思えますが、桜蔭の過去問の中に位置づけると「非常に簡単な問題」に分類されます。例年であればこうした問題にちょっとした捻りが加えられ、緻密な作業と計算が必要だったのです。このレベルの計算であれば難なく処理できるように、日頃から練習を重ねておきましょう。
  3. 傾向の変化を最も感じさせた問題でした。従来の立体図形の問題は、規則性など他の単元の問題と組み合わせることで難易度が高められていましたが、今年は空間図形の理解それ自体がストレートに問われました。
    (1)の相似は受験生であれば誰でも解いたことがある入門問題ですので、(1)だけでも得点しておきたいところです。(2)(3)は空間図形の理解を問う良問です。いくつか図を描いて、立体の全体像を把握する練習をしておきましょう。この問題の場合は、①MNを通り、側面に平行な面で切ったときの断面図と、その断面の側からの見取り図を描くとよいでしょう。
  4. 桜蔭を受験する子供であれば一度は解いたことのある類の問題です。ある程度の作業が必要ですが、落とし穴が潜んでいるような、間違えやすい問題ではなく、さほど時間をかけずに正解に辿り着けます。作業力よりも倍数と余りについての知識が重視されたという点で、Ⅳも桜蔭らしさが薄まった印象の問題です。Ⅱの次に落とせない問題でした。

冒頭でも述べた通り、①計算力②読解力③図形の理解について傾向の変化が見られます。

①については、凄まじい計算を必要とする問題が2年連続で一切出題されなかったことから、来年も続くものと予想されます。計算による受験生の選別には益がないと判断されたのでしょう。②③については今年に限った変化なのか判断が難しいところです。②の読解力ですが、例年と比べると問題文が短く、問題とされる状況も、一読すれば理解できるレベルでした。来年に揺り戻しがないとも限らないので、ややこしい問題文にひるまないよう練習を重ねておいた方が無難です。難関校対策問題集の中でも特に問題文が長いものや図が複雑なものを選び、時間を計って取り組むとよいでしょう。③については、これまで敢えて出題しなかったタイプの問題なのでしょうから、今後は重視するというメッセージに思えます。難関校向けの図形問題集や過去問(特に男子校や共学のもの)を用いて、「幾何の王道の問題」に取り組んでおいた方がよさそうです。

女子学院中

2020年のJG算数は大問が6とボリュームは例年通りで、難易度が上がった2019年と比べると幾分解きやすい問題が並びました。しかしながらJGらしいスピードと洗練された処理能力が求められる出題内容となりました。

後半の大問4,5、6、もそれほど難問ではないのですが、問題の意図を掴むのに時間がかかってどれも中途半端にしか手をつけることが出来ずに点を伸ばせなかった受験生も

いたかもしれません。大問4を素早く処理し、いかに大問5と6にじっくり取り組むことが出来たかが鍵であったと言えるでしょう。

大問 小問 出題内容 難易 知識 思考 処理
1 1 四則混合逆算 A 1 1 2
2 平面図形の面積 A 1 1 1
3 平面図形の角度 B- 2 2 1
4 割合と比 B- 1 2 2
5 規則性(周期・日暦算) A 1 1 1
6 平面図形の角度 A 1 1 1
2 1 平面図形と相似比 A 1 1 1
2 四分円の周の長さ A 1 1 2
3 1 素数の定義 A 1 1 1
2 逆数の定義 A 1 1 1
3 円周率の定義 A 1 1 1
4   立体図形上の点の移動・グラフ B 1 2 3
5 1 条件整理 B 1 3 1
2 B 1 1 1
3 B+ 1 2 1
6 1 速さ(流水算) B 2 2 2
2 C 2 2 3
平均 1.18 1.47 1.47
  1. (1)(2)(4)(5)(6)はJG受験生であれば簡単に解けるレベルの小問です。しかし(3)の平面図形の角度を求める問題は図が込み入っていて、的確に補助線を引き正三角形を作って求めるという難関校向けの勉強をしていないとアイデアが浮かばなかったかもしれません。
  2. 直角三角形の中に正方形が入っている相似の問題。これは中学受験算数で良く見るタイプの問題ですので、難なく解けたはずです。
  3. 素数、逆数、円周率の定義を穴埋め形式で書かせる問題でした。当たり前のことを答えれば良いようにも思えますが、解き方の丸暗記でなくきちんと意味を理解しながら算数に取り組んでほしいというJGからのメッセージであったのでしょう。
  4. 立体図形上の点の移動とグラフ。グラフが一見細かいのですが、“距離が2倍の辺上を動くときは速さが2倍”というフレーズの意味をすぐに理解すればあとは機械的にどんどん計算で処理していくことができる問題です。しかし、このフレーズから出題者の意図を汲み取るのに時間がかかってしまった場合はこのあとの大問5,6にあまり時間が割けず影響が出たと思われます。
  5. 条件整理をしながら数表を解明していく問題。これも一見複雑そうですが、“つまり問題文の意図していることは何なのか”がすぐにわかればあとは計算あるのみの平易な問題となります。
  6. 流水算2種類出てくる比をどのように処理するか、が最初のポイントでした。ある程度難関校向けの学習をしていなければ難しい問題です。(2)ではつるかめで解くということに気づけたかどうかが鍵でした。

女子学院中の算数では奇をてらった難問は出題されませんが、短い試験時間であるにも関わらず問題数が多いのが特徴です。問題文を読みながら同時進行で考え、すぐに手を動かして解き始めるというような頭の回転の速さと行動力が求められます。

前半では中学入試の定番の問題に少しスパイスを加えたような問題も出題されますので、基本的な問題には反射的に対応できる力と経験値が必要です。特に大問1,2はJGの受験生であれば全問正解しなければなりません。ここをいかに速く正確にこなして後半の応用問題に多くの時間を割くことができるかが分かれ目になります。

JGの問題では超難問は出題されませんが、日頃から難問に多くあたって自分の引き出しを増やし、ある程度のレベルまでの問題は時間を区切ってなるべく速く正解を出す練習をしていないと効率よく答えを導き出すことが出来ないような良問が並びます。応用問題では、問題文を図式化したり書き込みをする習慣をつけ、目からの情報もフルに使って短時間で処理できるような方法を身に着けて下さい。

さらに、女子学院の算数で必要な“スピードと正確さ”のために絶対に欠かせないのが高い計算力です。計算をいかに工夫して要領よく正確に最短でこなせるか、はJGの算数で高得点を目指すにあたって非常に重要なポイントになります。テーマは“言葉を操るように数を使いこなせるようになる”です。

そのために4年生、5年生の段階から計算の工夫を常に意識して練習を重ね、数に対する意識を高めて“計算が得意”になって下さい。そして5年後半からは、細切れに式を立てるのではなく一気に式を立て、分数を駆使しながら上手に計算をこなすことが出来るように計算力を鍛え上げましょう。これは、JGのみならず難関校に合格するためには必須です。

毎年出題されている平面図形の角度や求積に関しては、図中に情報を必ず書き込む習慣をつけ、たくさんの問題に挑戦し糸口を見つけるためのスピードを身に着けましょう。

“図への情報の書き込み”は4,5年生のころから積極的に行っていくことをお勧めします。

雙葉中

例年どおり、大問5題の構成は変わりません。昨年易しかったので、今年はやや難度が上がり、一昨年程度に戻りました。

難問はありませんが、数の処理の上手な仕方などが問われている問題が多く、受験生はできたつもりでも正解ではなかった問題があったと思われます。

大問 小問 出題内容 難易 知識 思考 処理
1 1 四則混合計算 A 1 1 2
2 割合と比 A 1 2 1
3 植木算 A 1 1 1
2   日暦、調べ B- 1 1 3
3 1 角度 A 1 1 1
2 平面図形(面積) B 2 2 1
4 1 数列、数の性質 A 1 1 2
2 A 1 2 1
3 B 1 2 2
5 1 速さ(旅人算) A 1 1 1
2 B- 1 2 2
3 B 1 2 2
平均 1.08 1.50 1.58
  1. (2)今年の問題として想定できた消費税の問題。比で処理すれば簡単です。
    (3)オリンピックに因んでいるのか、代表的な植木算が出題されています。
  2. 問題文をきちんと読み、条件を確認する力を問われています。解けたと思って、実は正解ではなかったということになったパターンに陥る問題です。
  3. (2)等積変形という事に思いつかなかったら他の問題に進むこと。時間配分が大切です。
    4. 雙葉を目指している受験生は、しっかり対策をすれば解ける問題です。
  4. 比を利用したり、グラフから相似で解いたりしなくても解ける問題ですが、数の処理が上手かどうかで決まったと思われます。

全ての基本は計算力です。低学年から計算はコツコツ練習することが大切です。

上位校レベルは途中でとんでもない数字がでてきますが、自分の計算力に自信があれば、進むことができます。

雙葉は、基礎力及びどの様に問題に取り組んでいるかを見る学校です。

正解を導けなくても、途中の考え方や工夫を見て加点してもらえます。部分点はとても大切です。

5年生から習う新しい単元や簡単な問題であっても、図やグラフを書いたりする習慣をつけること。特に速さの問題は、ダイヤグラムがきちんと書けることがポイントとなります。(5.はグラフを書き整理すると、数の処理が簡単です。)パターンで覚えたり、頭の中で処理したりする様では得点になりません。

6年生では、今までの知識をどう使って解くのかが重要です。考える力をつけるため、単元を超えた問題の練習を重ねる必要があります。

なんとなく解けるのではなく、こうすれば答えがでるという説明できる力をつけてください。

サピックス生はデイリーサピックスのCレベルまでの習得、四谷生は難関校シリーズレベルⅡを学習することが合格への道です。単独の雙葉コースは、現在、早稲アカのNN、四谷の学校別対策コースにしかなく、他の塾生でもどちらかのコースの受講を勧めます。

記述の雙葉なので、普段からのノートの使い方には気を付けましょう。雙葉の問題用紙の形式を意識して、左側から式や考え方をきちんと書くことが大切です。どんな手掛かりでも、解答のヒントになります。まずは手を動かすことです。

雙葉はまずは落ち着いて確実に解くこと、解けないことはないという粘り強さが大切です。

駒場東邦中

駒場東邦中の算数は、60分の試験時間で120点満点です。今年の合格者の平均点は84.0点(昨年差-5.1点)、受験者の平均点は74.0点(昨年差-4.4点)と、昨年と比べ難化しました。大学数学で扱う数の性質を用いた難問が出題された2016年入試の合格者平均が72.6点、受験者平均が58.3点であったことを考えると、得点率7割を合格点にしたいと学校側が話されていたこともあり、学校側にとっても受験者側にとっても想定内の難易度であったといえるでしょう。

本年は数学科の責任者が変わったこともあり、やや例年と傾向が異なり、大問で出題されることの多い「図形の回転移動」が小問集合へ、「場合の数」が未出題となり、代わりに「速さ」「条件整理・推理」が出題されたことが特徴的です。出題単元の変化はありましたが、「数論」「図形」の2本柱の分野に対し、手を動かして粘り強く答えを導く力を求めていることに変わりはありません。

大問 小問 出題内容 難易 知識 思考 処理
1 1 四則混合計算 A 1 1 2
2作図 図形の回転移動 A 1 1 1
2長さ A* 1 1 1
3 平面図形と比 A 1 1 1
4① 推理 A 1 1 1
4② B* 1 1 2
2 1① 数の性質 A 1 1 1
1② A* 1 2 1
2 B-* 2 2 1
3 1 平面図形と比、速さ A 1 1 1
2 A* 1 1 1
3 B+* 1 1 3
4 1色 推理 A 1 2 1
1長さ A* 1 2 1
2 B 2 2 2
3順番 B+ 2 3 3
3面積 C* 2 3 3
      平均 1.24 1.53 1.53
  1. (1)の計算問題と(2)図形の回転移動、(3)平面図形と比については落とせません。特に(2)の図形の回転移動については例年大問として取り上げられている分野です。コンパスを使った作図練習も含めしっかり準備をしておきましょう。また(4)②のEの数を求める問題は、①でI+Jを求める作業が誘導になっています。駒場東邦の場合、前設問が誘導になっている場合が多いので、そこで絞り込みができると正答に近づきます。
  2. 循環小数の規則性についての問題です。3の倍数に着目したり、積の一の位に注目したり、奇数・偶数の性質に着目することができると、大幅に解答時間が短縮できる問題でした。そうした意味で、本問は駒場東邦らしい良問であるといえるでしょう。(1)で1÷101と40÷2020を比較したとき、40÷2020=2÷101となり1÷101の2倍になっていることに気づくと、(2)のアプローチがしやすくなります。
  3. 本年傾向が変わったのがこの大問3です。平面図形、速さ、比の融合問題でした。速さについては、点の移動を除き最近出題がなかったため、面食らった受験生も多かったのではないでしょうか。文意が読み取りにくかったのが特徴的でした。また、(3)は処理にやや処理に手間がかかる問題だったので、部分点を取りに行くだけでも良かったのではないでしょうか。
  4. 例年出題される、手作業の多い数の性質と場合の数の融合問題ではなく、今年は図形を用いた条件整理・推理の問題が出題されました。長方形の紙を重ね正方形を作り、その並び順等を問う問題でした。(1)は、最小の面積が一番上の紙でなければ成立しないことに気づくことで非常に手作業が多く、時間がかかる問題のため、試験時間等の勝負になったかもしれません。

駒場東邦の入試問題の特徴としては、出題分野の偏りが大きいことが挙げられます。具体的には、「数の性質」と「図形」の2本柱です。これは他校と比較し駒場東邦の卒業生が医学部への進学者が多いことに起因しています。過去に数学科の先生が、冷静な分析能力とあきらめない粘り強さを見るために数論と調べ上げや場合の数を、動きのあるものを多面的に捉える力を確認するために図形の移動や立体図形を出題している、とお話をされたこともありました。そのため、単に知識を問う問題より、思考力・作業力に基づく問題や数学的な背景を問う問題が出題される傾向にあります。また、解答用紙の「答えの出し方」は加点方式でかなりの部分点を与えていることにもご留意ください。

駒場東邦中の算数攻略のためには、小3~小4の期間に一定の数的感覚を身につけることが望ましいです。また、「答えの出し方」では、ただ式を書くのではなく、図や表を使ったり、場合によっては書き出しをさせ、言葉も交えて説明を求めています。公式丸暗記の教育ではなく、なぜ三角形の内角の和は180度になるのかといったような、物事の根本的な理解を求めているのです。平素の学習から、ただ答えをノートに書くのではなく、途中式や図などを書いて解くように努めると良いでしょう。

小5~小6では、図形問題に対し、小問ごとに図をノートにフリーハンドで書き写して書き込みながら解いていくことも良いでしょう。また、一通りの解法ではなく別解を考えることで、問題の状況に応じて的確な解法の選択や問題の糸口を見つけるきっかけを増やしていくことができます。

スピーディーで正確な計算処理能力を高めつつも、同時に相手の意を捉えじっくり論理的に考えて説明する能力を養っていくことを心がけていきましょう。

栄光学園中

例年通りの大問4題構成でしたが、栄光の出題傾向の高い「数の性質」「論理・推理」「図形・点の移動」と上位難関校で出題されやすい「時計算」の出題でした。栄光の特徴であり、難問であった「調べ上げの問題」も、今年は大問での出題はなく、より高度な算数解法力を問う問題になり、以前他の難関校で出題された問題「どこかで見た問題」を栄光流にアレンジしてきた傾向もありました。

今回の出題では[3]の六角形の反射が良問で、栄光らしい高度な思考力と難関校に必要な高度な解法力を併せた問題です。今年の合格平均点は、昨年とほぼ同じ48点(69%)で、受験生に差をつけるには適当な問題構成になったと思います。

大問 小問 出題内容 難易 知識 思考 処理
1 1 数の性質 A 1 1 1
2 A 1 1 1
3 B 2 2 2
2 1 時計算 A 1 1 1
2① A 1 1 1
2② A 1 1 2
3 B 2 2 3
4 C 3 3 3
3 1 六角形の反射(相似含む) A 1 1 1
2 A 2 2 2
3 2 2 3
4 B+ 2 3 2
4 1① 論理・推理 A 1 1 1
1➁ A 1 1 2
2 B- 1 1 1
3 B 1 2 2
4 B+ 1 2 2
5 C 2 3 3
平均 1.44 1.67 1.83
  1. (1)は計算問題、(2)1からの和の定番問題(3)は13の倍数と1からの和を試行検証する栄光らしい問題です。
  2. 以前に開成で出題された「時計難問」の発展問題。秒針と短針の比の活用で(1)(2)は確実に正答出来ます。(3)は(2)の活用と規則性で栄光受験生なら解ける問題です。
  3. 塾で履修した三角形の応用問題です。六角形の線対称の性質と補助線で相似を作る高度な解法と、(3)(4)では栄光らしく思考性と検証が必要となる設問構成です。
  4. 今年の論理推測の問題は例年と比較して易しい問題でした。(5)は試行して、検証するが必要な問題ですが、(3)は(2)を誘導として、上下の差に気づけば容易に解ける問題です。

栄光学園中の去年、今年の算数の特徴は、合格平均点と受験者平均点の差は少なく、合格平均点が70%前後になりました。その理由は、栄光らしい処理能力が難解で、時間配分に悩ませる「調べ上げの問題」の大問が出題されていないからです。2019年は予測を立てて規則性で解いていく総合問題、2020年は「六角形の反射」と「数の性質」で「試行して、検証する」を取り入れていく問題が“栄光らしさ”に変わってきています。かって、栄光オリジナル(栄光のために特別な対策が必要)から、他の難関校の過去の出題も参考にして“栄光らしさ”を出していく問題構成に変化している点は注目すべき点です。

来年以降ですが、難しい調べ上げの問題を出題し、合格平均点が低かった2018年(44点)に戻る可能性もありますが、難関校に必須な高度な解法と栄光らしい「試行錯誤して、正答を検証する」を併せた問題が中心にある可能性は高く、予測を立てていく思考力、規則性を見つけ効率的に正答を出していく能力を意識して勉強していく必要があります。(この能力は開成、麻布等難関校合格には必須な能力です)。

出題傾向は「数の性質」「論理・推理」「図形・点の移動」の3分野は必出といえる分野であり、この分野は他の難関校の過去問も含め、高度な解法をしっかり身につけていくこと必要です。今年は「時計算」が出題されましたが、中堅校志望の子が苦手とする特殊算を出題するのも栄光学園の特徴であり、「通過算」「ニュートン算」「水量と体積」等の応用・発展問題は充分な演習が必要です。

栄光学園は粘り強く、地道な調べ上げが必要な問題も出題されます。この能力は、6年生になってからでは演習していく時間がないので、5年生の時期にまでに演習していくことが大切です。5年生までに、基礎固めおよび応用力をつけていくと同時に、苦手分野(特殊算、点の移動、立体の切断・展開図等)は必ず克服し、6年生の夏休み終了までに、過去問での強化分野の抽出、理科の問題演習も活用し、「試行して、検証して正答を導く」能力を養っていきます。6年生の秋以降は、塾での高度な解法能力を確認し、入試必出の3分野を中心に、開成、麻布、灘等の過去問を解いて、問題パターンのストックも増やしていきましょう。

聖光学院中

本年も例年通り大問5題構成で、「場合の数」「速さ」「立体図形」「平面図形」といった聖光学院の頻出単元が出題されました。立体図形の問題は、聖光学院の顔となっており、今年も作図の問題も出題されました。

試験時間は60分、配点150点の中で、本年第1回入試での合格者平均点は107.1点(昨年差-1.5点)、受験者平均点は84.1点(昨年差-1.2点)であり、難易度は安定しています。合格者の平均の得点率が7割~8割と高く、C問題がなくB問題の比重が高いことから、より思考力、処理能力を求められているといえます。

大問 小問 出題内容 難易 知識 思考 処理
1 1 四則混合計算 A 1 1 1
2 周期性 A 1 1 1
3 時計算 A 1 1 1
2 1 場合の数 A 1 1 1
2 A 1 2 1
3 B 1 2 2
4 A 1 2 1
3 1 流水算 B 1 2 3
2 B* 1 2 2
3 B* 1 2 2
4 B+* 1 2 2
4 1ア 立体図形 A 1 1 1
1イ A 1 1 1
1ウ B 2 2 2
2 B 2 2 2
5 1 平面図形 A 1 1 1
2 B 1 2 2
3図 B+ 2 2 2
3説明 B+* 2 2 2
      平均 1.21 1.63 1.58
  1. 小問集合については、塾では小5で学習する典型題となるので素早く全問正解することが望まれます。
  2. 3の倍数の利用、N進法の利用、奇数・偶数の性質の利用などの数の性質を利用し、素早く処理をしていくことに気付けるかが問われました。処理スピードの差が出やすい問題のため、この大問で時間がかかってしまうと最終問題までたどり着けないことになりかねない問題でした。
  3. スタートとゴール時間が異なり、区間が異なる2隻の船という設定から、即座にダイヤグラムの作図に取り掛かれたかが1つ目のポイントになります。ダイヤグラムの中の同一区間と差異が発生している区間と船の速さの比を利用して、距離の比などをいもづる式に求めていける問題でした。今年の場合、この大問の出来が合否の分かれ目になったと考えられます。
  4. 投影図からの復元をさせる立体図形の問題でした。(2)では、高さが共通であることに着目し、底面積比=面積比を活用し解いていくとよいでしょう。
  5. 昨年の大問3に続き、2年連続で正六角形の分割が出題されました。正六角形の分割の基本パターンを利用し、辺の割合を掛け合わせたり、等積変形を利用し、解答していきます。(2)三角形PABが0㎠の場合の書き出し、(3)は一昨年の駒場東邦、昨年の渋渋と同じく、大学入試改革を意識した理由を論述させる最近のトレンド問題でした。

聖光学院中の問題はレベルは高いですが、塾の問題演習で一度は見かけたことがあるタイプの問題が多く、しっかり訓練を積み重ねてきたお子様には合格が勝ち取りやすい学校です。頻出単元である「速さ」「場合の数」「規則性」「平面図形」「立体図形」については、解法の幅だしをしておくと良いでしょう。この頻出単元がほぼ毎年出題されるため、一定の難易度でありながら、平均点が高い理由のとなっていると考えられます。

例年、「速さと比」は、長文を読んで正確にその状況を把握し、状況図に落とし込むことが最適な問題が出題されることが多かったです。しかし、今年の大問3のように、ダイヤグラムで相似を利用して解いたほうがスムーズの答えにたどり着くといったように、1つの解法だけでなく、どんな時にどの解法を使うと素早く正確に解けるのかを極めるために、難関校向けの典型題を中心に訓練していくことが合格への近道だといえます。

「場合の数」や「規則性」については、知識・思考は難しくないのですが、数の性質も利用しながらすばやく書き出したり分類整理を行って条件を整理し、計算して確実に答えにたどり着く訓練が必要です。御三家・駒場東邦と異なり短答式のため、最終値勝負となるので注意しましょう。

「平面図形」「立体図形」については、相似比の利用や、等積変形、点の移動と絡めて出題される特徴があります。また、正六角形の分割が2年連続で出題されていることからも、基本知識をしっかり身につけ、背景を理解し、その知識を利用しながら解いていく訓練が必要です。6年生後半の志望校別クラスや塾の上位クラスで扱う高度な解法を定着させていくことが重要です。

神奈川男子の最難関校として、日頃から複雑な計算を工夫しながら処理したり、長い文章から必要な情報を正確に拾い上げて手法の取捨選択をしていく訓練をしていくことが望ましいでしょう。

豊島岡女子学園中学校

一見すると、例年通りの出題のようですが、今年は、ミスを誘う問題や難度がやや高めの問題の割合が多く、差のつきやすい問題構成でした。実際、昨年に比べて、受験者平均点は下がりましたが(-1.08点)、合格者平均点は上がっています(+2.05点)。ですので、豊島岡を第一志望にしている受験生にとっては、少々厳しい入試問題となりました。女子最難関校の一つとして、典型題であっても緻密な計算力が必要となり、後半の大問では、条件に沿って粘り強く丁寧に解き進める力が要求されています。

大問 小問 出題内容 難易 知識 思考 処理
1 1 四則混合計算 A 1 1 1
2 数の性質(正方形の枚数) A 1 1 1
3 数の性質(既約分数の個数) A 1 1 1
4 約束記号(逆算) A 1 1 1
2 1 分配算 A 1 1 1
2 場合の数 B 1 2 2
3 時計算(数の性質) B 1 2 2
4 ヒポクラテスの三日月 A 1 1 1
3 1 ダイヤグラムと比の利用 B 2 2 2
2 B 2 2 2
4 1 平面図形(相似の利用) A 1 1 1
2 B 1 1 2
5 1 図形上の点の移動 A 1 1 1
2 B 1 2 2
3 B 1 2 2
6 1 立体図形の切断(断面図の利用) B 2 2 3
2 B 2 3 3
3 C 2 4 3
平均 1.28 1.67 1.72
  1. 例年通りの計算1題を含む小問4題。特筆すべき問題はなく、全問正解を目指したいところです。
  2. ややレベルの上がった小問4題。瞬殺できる問題が(4)と、易しい順には並んでいません。(2)の場合の数は、数え上げの際、いかにもミスが出やすい問題で、時間をかけても正答率は高くならないでしょう。(3)の時計算は、単純な倍数の分布の問題に帰着します。ここで手間をかけたくないのですが、気づかないと大変です。
  3. 条件通りにダイヤグラムを描いて、比を利用できれば、比較的平易な問題です。とは言え、練習量に大きく左右されますので、大問丸ごとの配点分だけ、大きく差のつく出題でした。
  4. 前問に比べ、典型的な処理で解答できる平面図形(相似)の問題でした。この問題は落とせません。
  5. 図形上の点の移動(2点P,Q)の問題です。問題文は長く、設定が複雑に見えますが、Pの動きだけで、Qの動きは決まってしまいます。一旦理解してしまえば、苦労なく正解に至ります。「問題文をしっかり読めば簡単だよ。」と言っているようです。
  6. お決まりの立体図形の出題です。過去問を解いても、類似問題が少なく、対応しづらい、難度の高い応用題が毎年出題されています。今年も難問でしたが、実は、今年の出題傾向の特徴とも言える「気づいたら簡単」な問題でもありました。その本質は、立体のセンスそのものを要求するのではなく、日頃から塾での勉強で繰り返された「立体を立体のまま考えるのではなく、ノートの上で、立体を平面に落として考える」ことでした。それは、見取り図であったり、投影図や断面図の活用です。豊島岡が要求する生徒像が見て取れます。

ある程度出題分野が絞られている入試が続いていますが、該当単元の既出問題を数多く解いて丸暗記するような学習では、拾える問題があったとしても、合格点には遠く及びません。小4・小5では、まずは土台固めとして、計算練習を欠かさず、典型題を「一発で正解する」ことを常に目標としましょう。間違えてしまったときの原因の分析は怠ってはいけません。同じ解き方なのに、問題文の様子が変わると正解できないことが多い場合は要注意です。丸覚えの学習に陥っている恐れがあります。すぐに「解法の流れ」を丁寧に追う学習に切り替えてください。6年夏ごろには、男子上位校の過去問を含めた応用題にどんどん挑戦し、粘り強く最後まで解き切る力を養いましょう。典型題については、上位校に出題されている一行題を中心に、一段レベルを上げた演習が必要です。出題頻度の高い単元だけでなく、どの分野についても、果敢にチャレンジする気持ちを忘れないでください。私は、「算数」で豊島岡に合格してみせるという強い気持ちが何より大切です。

慶應義塾中等部

例年、偏差値の割には標準問題が多い一方で、問題数が多く、出題分野も広範囲なため、素早く解法を思い出し、解く速さと正確性が求められる出題です。また、計算は、難しくはありませんが繁雑なものが多いです。今年も、ほぼ例年通りの出題でした。今後もこの傾向は続くものと思われます。最後の問題、【7】(2)イは難問でしたから潔く捨てて、他の問題でしっかり取れたかどうかが合否を分けたと言えるでしょう。

大問 小問 出題内容 難易 知識 思考 処理
1 1 四則混合計算 A 1 1 2
2 四則混合計算(逆算) A 1 1 2
3 数の性質(周期) A 1 1 1
4 場合の数 A 1 1 1
2 1 速さ(通過算) A 1 1 1
2 数の性質(約数) A 1 1 1
3 速さ(旅人算) A 1 1 1
4 割合と比 A 1 1 1
3 1 平面図形(ベンツ切り) A 2 1 1
2 平面図形(折り紙) B 2 1 1
3 平面図形(相似) A 1 1 1
4 立体図形(回転体の表面積) B- 1 1 3
4 1 水量とグラフ A 1 1 1
2 A 1 1 2
5 1 規則性 A 1 1 2
2 B- 1 1 2
6 1 立体図形 A 1 1 2
2 B 1 2 2
7 1 調べ上げ B 1 2 1
2 A 1 1 1
3 C 1 2 3
平均 1.10 1.14 1.52

【1】~【3】は、ほとんどが、問題を見た途端、瞬時に解法を思い出し、手が勝手に動くくらいでなければ合格は厳しいでしょう。

【3】(2)は折り紙の問題と気づけば解け、気付かなければ難しく感じたでしょう。(4)の回転体の表面積の求積は毎年出題され、とにかく計算が煩雑です。計算力を鍛えておくことも必要です。

【6】情報を整理し、丁寧に調べれば特に難しい問題ではありませんが、中等部志望者は、この手の問題に慣れてなれていない可能性があると心配します。

【7】は(1)より(2)のアの方が得点しやすいです。(2)アで得点し、(1)を粘って取れれば、(2)イは捨てて良いでしょう。

小4、小5のうちは標準問題でいいので、苦手単元を作らず、すべての単元の問題が確実に解けるようにすることと、計算が速く正確にできるよう、計算の工夫を常に意識し、日々の訓練を怠らないようにしましょう。

慶應中等部の解答は、全問答えのみの上、解答方式が特殊なため、小6後期以降の過去問演習では、必ず本番同様の解答用紙を準備し、その方式に慣れておく必要があります。また、過去問で正解した問題でも、より素早い解法を確認しておくことが重要です。

男子はもちろん、女子はより高得点での争いになります。問題を見れば迷わず解法が頭に浮かぶくらい演習を重ね、入試に臨むことが必要です。

早稲田中

例年通り、小問総合2問、大問3問の構成で、例年より応用、発展が中心だった小問。

総合[2]の平面図形が基本、応用になり、昨年に続き、[5]の立体図形(または平面図形)は以前の難問でなく、「順序立てて考えれば解ける問題」に変化しています。算数の問題としての難易度は2018年と比較すれば易しくなり、早稻田中の傾向も、最近の算数全体の問題傾向(速さにおける地道な作業等)を取り入れてきています。例年は合格平均点は60%~70%でしたが、今年は75%~80%になる可能性があります。

大問 小問 出題内容 難易 知識 思考 処理
1 1 数の性質 A 1 1 1
2 ニュートン算 A 1 1 1
3 還元算 A 1 2 2
2 1 平面図形 A 1 2 1
2 図形の移動 A 1 2 2
3 立体図形(回転体) A 1 1 1
3 1 場合の数(時間のイチイチ) A 1 1 1
2 A 1 1 1
3 B- 2 2 1
4 2 2 2
4 1 速さ A 1 1 1
2 A 1 1 1
3 B- 1 2 2
5 1 立体の切断 A 1 1 1
2① 2 2 3
2② B* 2 2 2
3 A 1 2 1
平均 1.24 1.53 1.41
  1. (1)は帯分数に(2)は基本で確実に得点したい問題。(3)の食塩の還元算の基本問題はフローチャートを書いて解答しないと間違えやすい問題。(1)は帯分数に(2)は基本で確実に得点したい問題。(3)の食塩の還元算の基本問題はフローチャートを書いて解答しないと間違えやすい問題。
  2. (1)の半径の補助線は定番で(3)の回転体は基本。(2)の図形の移動は塾では定番だが、作図に手間取ると落としてしまう問題。
  3. 聖光学院、海城でも出題された「時間のイチイチ問題」。奇数番と偶数番の規則性を見いだせば、知らなくても解ける問題。(4)は流れを考え、(3)までの規則性で解けます。
  4. (2)は計算問題 (3)は角度の比×直径の「速さの比の比」でテクニカルに解けるし、(2)から地道に解いても正答が得られます。
  5. 立体切断の問題で差が付きやすい問題ですが、(3)の立方体の8点同時切断は「入れ子構造の八面体」から容易に解ける問題。(2)4点切断が今年の算数で差がついた問題で、順序立てて作図していくことがポイントです。

早稲田中の算数は、以前は単独の平面図形、立体図形が難問でしたが、今年は小問は基礎問題を、大問で応用力、思考力を見るようになってきました。大問も、比の応用、数学分野の変形等の高度なテクニカル問題だけでなく、大問の中で(1)(2)の誘導の活用(規則性)、速さの地道な思考力、立体の切断の順序立て等、今後、アクティブラーニングの流れの中で、早稲田中には少なかった「思考力を問う問題」が今後増えていくことを予感させる問題構成でした。

来年以降の早稲田中の傾向ですが、今年の問題の合格者平均点が注目です。難関校の傾向として合格平均点が例年より高い場合は、翌年は難化します。平面図形の小問は今年より難しくなり、早稲田中には見られなかった「試行して、検証する」問題が出題される可能性もがあります。

早稲田中に合格するためには、4、5年生の勉強がより重要になります。今回の小問の出題範囲はすべて5年生で履修した基本問題分野です。また、[3]の「時間のイチイチ」、[5]の複雑な立体の切断は、塾の6年生上位クラスでは履修する可能性が高いので、5年生のうちに上位クラスに在籍することも大切です。また、実際に手を動かす「調べ上げの問題」「速さのダイアグラム」も5年生で慣れていくことも難関校合格のポイントです。

6年生は、5年生で身につけた幅広い基礎技能を、夏休み終了までに、応用問題で定着させ、秋以降は早稲田中の過去問および他難関校の良問を解いていく実践力をつけていくことが合格へのサクセスロードになります。

早稲田実業中

早実では昨年に難易度の大幅な見直しがあり、今年はその結果を受けてさらなる調整が行われたようです。

一昨年まで、①大半の受験生が解けるような易しい問題、②スタンダードな問題、③男子校時代の流れを汲むような、試行錯誤しつつ解法を探さねばならない難問、の3つのタイプの問題が出題され、①と③の間で難易度に著しい乖離がありました。50点程度という受験者平均点から考えるに、①の全てと②の大半を押さえれば合格点に達した可能性が高く、この点で、算数があまり得意ではない生徒が意外と狙いやすい学校でした。

ところが昨年にはタイプ③の問題の難易度が大きく下げられ、ほとんど②に近づきました。③がいわゆる「捨て問題」ではなくなったことで、受験者平均点は57.9点と大幅に上がりました。③が解けない算数が不得意な生徒は、これまで以上に②の取りこぼしを減らさねば合格点に届かなかったと考えられます。

驚くことに今年はタイプ①と③の問題が一問も出題されませんでした。恐らく①の正答率が極端に高く、③の正答率が極端に低かったために、いずれも生徒を選別する上で役に立たないと判断されたのでしょう。つまりは②のスタンダードな中レベルの問題が幅広く出題され、男子校時代の名残りは完全に消えました。算数が得意な子供は高得点を取り、苦手な子供はあまり得点できないという、順当な結果に収まったのではないでしょうか。満点近い得点の受験生も多数いたことでしょう。

傾向の変化として特筆すべき2点目は、恐らく大学入試改革を見据えた変化なのでしょうが、解法を説明させる問題が増えたことです。既に昨年に初めて、「求め方も書きなさい」という指示のある問題が1題出題されていたのですが、今年はそのような問題(1題)に加えて、「解答欄の図を用いて、求め方も書きなさい」という問題が1題出題されました。

以上の2つの変化から浮かび上がる、早稲田実業が求める生徒像は以下の通りです。

①複雑な問題を、筋道を立てていくつかの単純な問題に切り分けていく思考力がある。

②そうした考えを他人に分かりやすく説明する力がある。

このような生徒になるためには、難易度がやや高めの問題をたくさん解くだけでなく、日頃から式や図を書く手間を惜しまずに、1つ1つ丁寧に考える習慣を身に着けておく必要があるでしょう。

大問 小問 出題内容 難易 知識 思考 処理
1 1 四則混合逆算 A 1 1 2
2 相当算 A 1 1 2
3 場合の数 A 1 1 1
4 立体の切断 B⁻ 2 2 3
2 1① 消去算 A 1 2 1
1② 時計算 B⁻ 1 2 1
2 群数列 B⁺ 2 2 3
3 1 速さと比、ダイヤグラム A 1 1 1
2 B- 1 2 2
3 B- 1 2 2
4 1 仕事算・割合(食塩水) A 1 1 1
2 B- 1 2 2
3 B 1 2 3
5 1 図形の性質

三角形の相似と面積比
B⁺ 1 2 2
2 B* 1 1 1
3 B* 1 2 2
平均 1.13 1.63 1.81
  1. (2)の相当算は若干複雑ですがよくあるタイプの問題です。このレベルの問題を難なく短時間で解ける生徒が求められています。(4)は切断された立体の体積を求める問題ですが、作図と手順の説明が要求されています。作図は以前から出題されていますし、今後も出題されそうですので、練習しておくとよいでしょう。
  2. (1)は短針の動き方が理解できていれば簡単に解けます。(2)は規則に従って丁寧に計算を重ねねばならず、厄介な問題でした。大問2で躓いた受験生が多そうです。
  3. 速さと比の基本問題です。最も簡単でしたのでここを落とすと合格は難しいでしょう。
  4. 問題に書かれている状況を図などを使って整理すると、解法が見えてきます。計算がやや煩雑ですが、素直な問題ですので、合格するにはこの大問も落とせません。
  5. (1)の解法さえ思いつけば一気に(2)まで解けます。悩んだ結果全滅か、(2)まですんなり解けたか、明暗が分かれたことでしょう。図形の基本的な性質(①平行四辺形の対辺は長さが等しい、②二等辺三角形は底角の大きさが等しい)が鍵になりました。

早稲田実業においては男女で受験者の層が大きく異なるので、合格者平均点は女子の方が男子より10点程度高そうです。男子の場合、大問1、3、4は必須で、さらに大問2がある程度解ければ合格点に届いたと予想されます。女子は大問2も解き切らねば不安です。

難易度や問題の雰囲気は今年の感じで落ち着きそうですので、難関校対策の一般的な教材を一通りやっておけば十分でしょう。特別な対策は必要ありません。

渋幕中

大問5題の例年通りの構成でした。文章題は例年は整理や調べ上げといったその場の作業力が重視される問題が多いですが、今年は定番問題や高度な知識を必要とするものなど、類題経験がものをいう問題が目立ちました。また図形に定番の考え方を用いるものが多いこと、およびその中に難問が混じることは例年通りでした。昨年に比べると手の付けやすい小問が増えた分点数はとりやすくなりました。

大問 小問 出題内容 難易 知識 思考 処理
1 1 規則性(継子立て) A 1 1 1
2 B- 1 1 2
3 B- 1 1 2
2 1 数の性質(連続する整数の和に分解) B 2 2 1
2 A 1 1 2
3 B 1 1 3
4 C 3 2 2
3 1 水量の変化・グラフ A 1 2 2
2 A 1 2 2
4 1 平面図形(面積と比) A 2 1 1
2 B- 2 1 1
3 C+ 2 4 2
5 1 立体図形(表面積比・体積比) A 1 1 1
2① C- 2 2 3
2② C 2 3 3
平均 1.53 1.67 1.87
  1. 継子立てを題材にした定番問題で、類題経験のある人も多かったでしょう。
  2. 整数を連続する整数の和に分解することが主要なテーマで、2018年の開成中で出題されるなど難関校でしばしば見られる問題です。高度な知識を持っていることが直接的に有利に作用するので、経験の有無が明暗を分けた可能性があります。(1)で理由説明問題が出されましたが、文章記述を求める問題は1次入試では10年ぶりです。
  3. 水量変化のグラフから状況を特定させる問題です。例年よく見られるタイプですが、今年はシンプルで解きやすかったでしょう。
  4. 平面図形に関する小問3題で、(2)までは問題ないでしょう。(3)は(1)(2)で使ったことがヒントになるものの、どこで使えばよいのか糸口が見えにくく、時間内に正確な根拠の下で正解にたどり着くことは難しいです。一方で誤った推論や勘により最終結果は当たりやすく、単答式で受験生の学力をきちんと測定できたのか疑問の残る出題です。
  5. 立体の体積や表面積を比を用いて考えさせる問題です。例年立体は難問が出やすく、今年はそれらに比べれば穏やかですが、時間内に正解するには高度な力が必要なことは変わりありません。

例年に比べると今年は解法知識を持っていることで有利に作用する問題が目立ちました。この傾向が続くとすれば4、5年生で学習する標準的な手法に加え、難関校頻出テーマについても1通り押さえておくことが必要なので、塾では渋幕向けに限る必要はないですが、難関校向けの講座でこういった手法に触れておきたいです。

一方でその場での作業や試行錯誤を必要とする問題も健在であり、教わった手法を習得する学習一辺倒になると危険です。このような解法を習得する学習においても受け身になるのではなく、今持っている知識で何とかできないか考えてみる姿勢は常に持ち続けるようにしてください。その際には頭の中だけで考えるのではなく、手を動かしていろいろ書いてみながら考えることが大切です。

毎年難しい問題も出されますが、その分得点率も高くはなく、比較的穏やかな今年でも合格者平均点は約60点です。合格点をとるためには解くべき問題と捨てる問題の見極めが大切なので、過去問に取り組む際にはこの点に気をつけて取り組むようにしてください。

渋谷教育学園渋谷中

例年通り、小問集合、大問3題構成で、大問は毎年出題される「場合の数」「立体図形」に2018年に出題された「点の移動」の構成でした。昨年のマイナンバーに続き、今年も東京パラリンピックと絡みの“点字”のテーマの問題が出題され、渋渋の算数の特徴になってきたと思われます。しかし、かっての算数の難しいイメージがあり、高度な思考力と作業力が必要だった時代と比較すると、易しくなりました。今年は塾で履修した分野で解ける問題で構成され、合格には80%以上の得点が必要でしょう。

大問 小問 出題内容 難易 知識 思考 処理
1 1 四則混合計算 A 1 1 1
2 数の性質 1 2 1
3 平面図形 A 1 2 2
4 場合の数 A 1 1 2
5 文章題(食塩水) A 1 1 1
6 数の性質 B 1 2 2
2 1 点の移動 A 1 1 1
2 A 1 1 2
3 B 1 2 2
3 場合の数 A 1 1 2
A 1 1 1
A 1 1 1
A 1 1 1
A 1 1 1
B 1 2 2
B 1 2 2
A 1 1 1
A* 1 1 2
4 1 立体図形(回転体) A 1 1 1
2 A 1 1 1
3 A 1 1 2
4 B 2 2 2
平均 1.05 1.32 1.50
  1. (1)(4)(5)は確実に得点したい問題。(3)平面図形は面積比を活用し、(6)は考え方・式を示す問題であり、答えを出す時の“細心の注意”が必要です。(2)は受験生には見慣れない問題ですが、1の位の性質を利用します。
  2. (2)(3)とも面積を2分の1にする点の移動位置は把握しやすく、(1)の周期を使い、数の余りの性質により効率的に答えを出していきます。
  3. 「点字」題材の思考力を問う「場合の数」の問題で、調べ上げの要素も含んだ問題です。応用(か)と(き)も、基本(い)(う)の答えを利用すれば、難しくありません。
  4. 毎年出題される「立体図形」は回転体の出題ですが、(1)~(3)は5年生で履修した解法で解け、(4)も「全体から引く」の解法で解ける問題です。

渋谷教育学園渋谷中の算数は、年々易しくなっており、今年の問題は、高度な解法を必要とする問題もなく、塾で履修する基本~応用問題(Dailyサピックス、予習シリーズの練習問題レベル等) の範囲でした。思考力問題として、去年は「マイナンバー」、今年は「点字」と、渋渋らしく社会性のあるテーマを算数の問題として出題されましたが、場合の数の難易度は2018年より易しくなり、処理時間の作業も標準的になりました。そのため、小問の(5)の四捨五入の範囲の様に、考え方を記述させ、答えを出す時に“細心の注意”が必要な問題を落とさないことは大事です。

来年以降ですが、学校が国際性(英語重視のカリキュラム)を打ち出しているため、算数が大きく難化することは考えにくいですが、今年が易しかった「立体図形」は立体の切断、展開図等の受験生に差のつきやすい問題、[3]思考力を問う問題は少し高度な解法による出題の可能性があるので、頻出分野を中心に応用力をつけておく必要があります。

渋谷教育学園渋谷中の合格対策ですが、前述の塾の基本~応用問題を考え方も含めて6年の夏休み終了までに完成させておき、どんな分野から出題されても対応出来る基礎応用力をつけましょう。秋以降は、出題傾向の高い「立体図形」「場合の数(思考力を問う問題)」「平面図形」「点の移動」は、高度な解法も含め、応用力を高めていくことがポイントです。考え方を記述させる問題対策として、記述が必須の「中大附属横浜」「明大附属明治」等の過去問で演習するのも効果があります。また、思考力問題は、今年の図形の対称性の様に、パズル的な問題が出題されるので、5年生のじっくり考えられる時期に演習しておきましょう。

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