2020入試分析理科

目次

筑波大附属駒場中
開成中
麻布中
武蔵中
桜蔭中
女子学院中
雙葉中
渋幕中
渋渋中
駒場東邦中
聖光学院中
栄光学園中
豊島岡女子学園中
慶應義塾中等部
早稲田中
早稲田実業中

理科 総括

大学入試改革をはじめとする教育内容刷新の流れは、少しずつ中学入試にも影響を及ぼしてきています。理科に関しても、いわゆる典型題の出題ウエイトが目立って減ってきているのが最近の特徴です。この数年の傾向としては、進学校など他校とは一線を画した独自の理念を持っている慶應中等部などの一部の附属校を除いては、受験生が今まで見たことのないようなテーマを題材にすることが多くなっています。その中等部でも今年は会話形式の出題(会話の中で最近の出来事など様々な分野を問う形)がありましたが、このような出題形式も増加傾向にあります。

ただ、ここに取り上げるような名門校は、元々そのような典型題をあまり出題していなかった学校がほとんどです。それぞれの学校が、自分たちの求める生徒像を明確に打ち出し、個性豊かな出題を続けてきました。

例えば、武蔵のお土産問題や、栄光の1つのテーマに絞った出題などは、あまりに尖っているため、市販の問題集に収録されることはまずありません。麻布のような知性と教養を問うような出題も、単元別に区分しにくく、新傾向とか発展総合問題という形で収録されるため、問題集においては外様の扱いにせざるを得ないという具合です。それらと比べれば比較的オーソドックスな形で出題をしていた開成や桜蔭などの入試問題であっても、一般の問題集の編集目的に落とし込むために、問題の一部を抜粋する、数値を簡易化するなど改題されるケースが多いのです。

つまりこれらの学校の出題は、単元学習に勤しむだけの受験生には向かない問題となっているのです。それらを終えた、または越えた高みのレベルに達していることが必要です。その域を想定した出題がなされているので、単に知識、単語の総まとめをするような暗記型の学習、典型題ばかりの問題集やテキストを言われるがままこなしていただけの学習を続けていたのでは、まったく太刀打ちができません。そのため、それぞれの志望校の出題意図をしっかり認識した学習を心掛ける必要があります。

そのような対策をする最も簡便な方法は、進学塾の学校別対策講座を受講することです。傾向にそった教材をそろえて、効率よく学ぶことができます。しかし、気を付けなければならないことも多いように思います。あまりにお膳立てが整いすぎているため、自ら学校の出題意図を咀嚼し、自分の頭を使って考えることが手薄になってしまうというケースが出てくるからです。開成の校長があちこちで発言しているように、そういったレールに乗ることに馴れてしまった子、作られた感じの子が増えていることを危惧する学校は多いです。

自らの頭で考える子を選別する手法は、大きく分けて2つあるようです。1つは麻布に代表されるように、初見のテーマを与えながらも、リード文をしっかり作り込み、誘導設問や記述形式を多く取り入れて「12歳なりの教養」を問い続ける出題形式です。そこに一般的な受験知識はあまり必要はありません。興味をもって思考を積み重ねていけば、最後の設問まで自然に流れるように解答できます。もう一つは一般的な知識を問いつつ、与えられたグラフ、表などのデータを正確に読み取らせていく最近の開成タイプのような出題です。問題文にちりばめられたヒントを使って考えると言う点では麻布に近いものがあっても、そこまでの思考は要求されず、データの加工や処理をする力に重点が置かれています。このような学校では、ある程度の知識問題が併せて出題されることが多いので、隙の無い学習も心掛けておかねばなりません。

思考型、データ処理型いずれであっても、自らの頭と手を使って問題に取り組む姿勢が必要となることに変わりはありません。それに対策を施そうとする進学塾、対策を無効化して、子供本来の地力を問おうとする学校のイタチごっこが続いています。常に一歩先を行くのが学校、それを後追いするのが塾といったところでしょう。ところが最近、先読みをして過度の対策を子供に施そうとする塾が出てきています。先鋭化しすぎた対策は、一部の子には有効でもほとんどの子には意味をなしません。かえって個々の学校が意図する出題目的を見失わせることにもつながりますので、その扱いには注意が必要となります。

これらの学校に合格するために先鋭化した対策よりも有効なのが、幼少時、低学年時の理科的体験です。お仕着せの実験教室や講座を受講した方が良いと言うわけではありません。もちろんそれらにも一定の効果はありますが、子供が自然に興味を持つ方向に上手く持っていかねばならず、それができないようだと逆効果になります。むしろ普段の家族旅行や野遊び、おままごと、虫捕り、自転車ツーリング、はたまた台所での手伝い、テレビ視聴、図鑑、科学的読み物、プラモデルや模型の作成、極端な話だとコナンやドラえもん等の漫画などでさえ効果があります。これらも漫然とでは意味をなしませんが、その中にも理科的素養が磨く題材がたくさん隠されているのです。つね日ごろからそういうものに興味が持てる環境や、家庭内の会話を心掛けるだけで随分変わってくるものです。ちょっとしたアドバイスで、子供の視点が変わることもあります。机上の勉強や、既成の講座を受講するだけが勉強ではありません。本格的な受験勉強を始める前に、自分の頭の中で考える、手を動かすと言った土台を作り、器を大きくしていくことが重要になってきます。

そのような時期を過ぎてしまった受験生には、このような「遊び」の余裕がありません。となるとあとは日々の学習でのアンテナの張り方が重要となります。理科の授業での先生の雑談の中(テスト範囲じゃないから、興味なしという姿勢では、これらの学校に入学する素養なしですね)、個々に取り組む問題で少しでも疑問に思ったことを自ら調べ、自ら考える習慣作りです。図鑑、百科事典、最近はタブレットなどは必須です。とにかく自らの手を動かすことができて、その上で考えを深めるということが、スローであってもこれらの学校に到達する王道となります。

筑波大附属駒場中

最難関校で首都圏のトップ層が集います。40分という試験時間で、昨年、一昨年より1枚減ったものの7枚におよぶ問題用紙、総解答数50か所弱というハードな内容となっています。文部科学省管轄のために出題内容に制約がかかりますので、理科計算などの難問を出題することはできません。中学高校内容にまで踏み込んだ知識を問うこともできません。その限られた条件の中で、最優秀生の選抜を行うという高いハードルを見事に越えています。

会話形式から幅広い知識を問う問題も健在です。物理分野(てこや豆電球)において、単純な原理ながら、ひたすら手を動すことをさせて、様々な場合を考えさせる問題が出題されるのも毎度おなじみです。複雑な計算をさせるわけではなく、手数をかけさせて調べ上げることで処理能力を問うてきます。選択肢問題であっても、細心の注意を払って選ばないとトップ層でも足元をすくわれるものが結構混じるなど、一瞬の気の緩みをも許さない入試です。

今年はその手間がかかる系の問題が前半に2つ並びました。1番は何の変哲もなさそうな「てこ」の問題ですが、つりあう重さや支点までの長さなどの数値を問うものではありません。一定の条件下でつりあう場合がそれぞれ何通り生じるかを聞いてきます。それほど難しいものではありませんが、慎重に調べる必要があります。2番は豆電球の代わりにプロペラモーターを使ったロータリースイッチの問題です。ブラックボックスの問題もあるのですが、豆電球の明るさで電流の多寡を考えるものと比べて、プロペラモーターの場合は、回転の速さで電流量を、回転方向で電流の向きを考えなければならず、調べる手間がグンと増えてしまいます。ロータリースイッチと相まって、作業量、または頭の回転スピードが問われるものとなっています。3番以降は毎年受験生が少しほっとする知識系が並びました。毎年出題される会話形式の問題が3番で登場します。出題内容は多岐に広がっていますが、個々の難易度は高くありません。4番はナナホシテントウに関して、5番は発芽の対照実験です。6番の溶解度は基本ではあるものの、慎重に処理をする必要があります。最後の7番は燃焼で、ここまで到達して良かったねという簡単なものでした。

毎年のことですが、筑駒の理科は手間がかかる問題にどう対処するかがカギを握ります。時間の余裕がある初めの段階で難敵のボスキャラを倒し、時間が足りなくなっても何とかなる単純知識系雑魚キャラは後に回して片付ける、という方法を取る子もいるでしょう。その反対にまずは軽い知識系を終わらせて、時間の許す限り手間ひまのかかる問題を粘り倒すという方法の子もいて、こちらの方が多いかもしれません。ある程度までの学校であれば、面倒なものを捨て問にしてしまうということもできますが、トップ層が競う筑駒ではそれができません。手間がかかる問題が今年のように初めに並ぶ場合もあれば、後ろに固まる時もありますので、予め頭の中でシミュレーションをしておくことが重要です。試験中にあちこちに手を出して、あたふたしているうちに試験が終わってしまったという愚だけは避けなければなりません。

このような筑駒入試に立ち向かうためには、まずは広範でヌケのない知識を習得することが必要です。時事的なものも問われることがあるので、日々の生活の中で理科的なニュースに耳を傾けておく姿勢も重要です。今年のテントウムシのように身の回りの動植物を問うことも多く見られます。このような内容は文科省の制約を受けにくいものですから。机上の参考書、問題集ばかりでなく、図鑑などに慣れ親しむことの重要性は、上位校共通の試験対策といえます。伸びやかな幼少期をすごし、野外体験が豊富であればあるほど良いのは間違いありません。あとは処理能力をいかに身に着けていくかですが、これは算数の場合とほとんど差がないでしょう。頭の中でサッと処理できる一部の子を除いては、とにかく図示にしても、計算にしても、書き出しにしても、普段からどれだけ愚直に手を動かしているかが勝負所です。4,5年時から、テキストのチャレンジしてみよう的な問題にしっかり取り組み、難しくて跳ね返されたとしても、何とか書いて書いてそして考えることで正解に持っていったという経験がものを言います。しつこいようですが筑駒は文科省の管轄です。中高大で学ぶような高度なテクニックは出題されません。その足りない部分を自分の手と頭を使っていかに補うかが問われていると認識することが重要なのです。

最後に必要なのは、仕上げの段階での筑駒の試験形式への馴れです。とにかく40分であの分量は、とても厳しいものがあります。中堅校あたりなら、一つ一つの設問を適当に答えて流すということができますが、トップ校であるという重圧が、子供たちにそれをすることを許しません。試験前にしっかり作戦を立てておくのはもちろんのこと、過去問や対策模試などを活用し、自分の受験時のスタイルを確立しておくことが大切です。

大問 小問 問題内容 難易 知識 思考 処理
1 1 てこのつり合い B 2 2 2
2 てこのつり合い B 2 2 3
3 てこのつり合い B 2 1 1
2 4 モーターとロータリースイッチ B 2 2 2
5 ロータリースイッチ・ブラックボックス B 2 2 3
3 1 時刻の知り方 A 1 2 1
2 中生代 A 1 1 1
3 雪を降らせる雲 A 2 1 1
4 火山性ガス A 2 1 1
5 冬の大三角 A 1 1 1
4 1 ナナホシテントウ成虫 A 2 1 1
2 ナナホシテントウ成虫 A 1 1 1
3 ナナホシテントウえさ A 1 1 1
4 ナナホシテントウの飼育 A 1 2 1
5 1 種子の発芽・対照実験 A 1 2 1
2 種子の発芽・対照実験 A 1 2 1
6 1 溶解度 B 1 2 1
2 溶解度 B 1 2 2
3 溶解度 B 1 2 2
7 1 ろうそくの燃焼 A 1 1 1
2 ろうそくの燃焼 A 1 1 1
平均 1.38 1.52 1.38

開成中

ここ数年来、合格者平均が90%といったハイスコアでの争いとなっていた開成の理科でしたが、さすがに昨年の約95%は高すぎということか、今年は下がって80%に落ち着きました。それでも開成受験生にとって、問題はかなり平易と言えるレベルであり、特殊な受験テクニックや知識は必要とされないものでした。

毎年のように、開成の理科はあえて「素養を見るにとどめている」と書いていますが、今年もそれが踏襲されています。その点に関して、今年はもう少し踏み込んで言及したいと思います。

本年度から開成は開成会(開成のОB会)が資金を出して、低所得層(年間所得218万、給与収入400万以下)に奨学金を出すことになっています(高校入試では先行実施)。筑駒に生徒を抜かれるための対抗と揶揄されることが多いですが、真の目的は違います。生徒が富裕層の子弟ばかりになってしまっていることへの学校、開成会共通の危機感が背景にあります。もともと開成は下町の学校で、御三家3校が並列のときは、その中でもフツーの家庭環境の子が多く学ぶ学校でした。日曜のテスト会を受験しつつ自分で勉強して入学する子が多かったわけです。いろいろな要素が絡んで開成がその中で突出する存在となり、難度が上がっていくにつれ生徒の質が変化していきます。手間とお金をかけて充分に対策を施され、訓練された子でないと、なかなか合格できないという状況です。そういう子は入学時のレベルは高くとも、その後の伸びが鈍いことが多いのです。地力は充分にあるのに、それを磨かれる機会が少なかった子が本校を志望する際に、彼らに門戸を閉ざすことが絶対にあってはならない、という思いが開成、開成会に根強くあるのです。開成、麻布などの伝統校には、原石が自ら自分を磨き上げていく環境を整えるノウハウがあります。が、すでに充分に手をかけられて伸びきってしまった子に対し、そこから先を手厚く保護する仕組みはありません。むしろ新興校の方がその点では優れているとも言えます。

開成の理科入試問題は、経済的に塾の開成対策講座をあれこれ受講することはできなくとも、市販の参考書を擦り切れるくらい学んだ子でも充分対応できることを念頭において作られています。極端な言い方をすれば、各塾が競って行っている「先鋭化しすぎた開成対策を無効化するもの」であるという認識が必要です。

今年の入試問題を見ると、物化生地の4分野から均等に出題されるという形式はいつも通りです。1番は地球の公転、日影曲線、日時計に関する出題で、基本事項を問うもの。2番は最近はやりで他校でも多く出題されるようになった「手回し発電機」ですが、手回しするときの手応えといった事前知識はまったく必要なく、リード文をていねいに読み込めば自ずと答えられる、オール選択肢の一般的な電流の問題となっています。3番は溶解に関する出題で、食塩を水に溶かした時の、水溶液の体積増加データを読み取らせて考察、一部で計算させるもの。4番は植物の葉の形のデータ読み取り問題となっており、グラフを書かせたり、そこに数値を書き込ませるものとなっています。

この何年かと同じように、問われる知識はこれがトップ校の出題なの?というレベルで、とても平易です。ここでの失点はもちろん許されません。受験生が見慣れないテーマで、データを与えてその場で考えさせる問題が必ず出題され、唯一そこで多少の差がつくかな、というのもいつもと同じです。どの分野でその「その場で考える系」が出るかはランダムですが、算数と同様に問題のリード文などにヒントが多く散りばめられており、誘導もしっかりしているので、落ち着いて俯瞰し、出題者の意図を考えながら解答を進めることが重要です。

東大でも同じことが起こっていますが、開成にも手間とお金をかけて作られた感のある生徒が増えすぎた事への危機感があります。入試問題にも徐々にその意図が反映されてきています。しかしそれは、経済的にそういう対策ができなかった子を締め出さないよう工夫する、という形であらわれているものであり、別に対策を講ずることを否定する方向に向かってはいません。開成に入りたいのなら、やはり対策は必要なのです。市販のものでも構いませんが、まずは基本知識をしっかりと網羅する事は最重要です。理科計算であっても、ごく標準的な手法は確実に身に着けておかねばなりません。初めて見る題材の問題であっても、難解なものは出題されませんし、きちんとデータは揃えられています。また、先述したように考えるためのヒントが随所に配されているので、それらを的確に捉え考察していく、または正確に計算するといった訓練は必要でしょう。最高の教材は過去問です。

ただここで注意したいのは、先鋭化しすぎた開成対策の教材に振り回されないことです。各塾の開成受験生向け教材には、企業の論理が反映しすぎているものが多いようです。他塾からの優秀生を囲い込むため、開成模試や開成向け教材には、実際に開成で要求されるレベルを大きく超えた高度な内容がいくつも取り込まれています。上位生は、より高度な内容に惹きつけられ誘われやすい、という傾向がありますから。算数でも同様ですが、たしかにそこには思考をショートカットすることが可能になる技法が含まれていることもあります。しかし、それを使いこなせるのは開成志望者の中のさらに一握りの子でしかありません。ほとんどの子には絵に描いた餅であって、逆に自分の頭でじっくり考える、自分の手を動かしてみる、きちんとデータを読み取って正確に計算をするということを阻害するものとなっているのが現状です。開成の出題意図をしっかり認識した上で、各塾の開成教材、模試問題の中から必要な部分だけを上手に活用する目を培うようにする、またはそのようなアドバイスをしっかり受けるといったことが重要になってきます。

大問 小問 出題内容 難易 知識 思考 処理
1 1 地球の公転 A 1 1 1
2 日影曲線①〜③ A 1 1 1
3 太陽・星の沈む位置 A 1 1 1
4 部屋に入る日差し A 1 1 1
5 日時計 A 1 1 1
6 日時計 B 1 2 1
2 1 手回し発電機 電流の向き A 1 1 1
2 手回し発電機 回転のしかた A 1 1 1
3 手回し発電機 回転の方向 A 1 1 2
4 手回し発電機 回転の様子 B 1 2 2
3 1 溶解の様子 A 1 1 1
2 リトマス紙 A 1 1 1
3 食塩の密度計算 B 1 1 1
4 溶解度計算 A 1 1 1
5 考察結果 A 1 1 1
4 1 葉の形データ読み取り A 1 1 1
2 グラフ作成 A 1 1 1
3 グラフへ数値記入 B 1 2 2
4 葉の形データ読み取り B 1 2 1
5 葉の形データ読み取り B 1 2 1
平均 1.00 1.25 1.15

麻布中

総論

麻布傾向といわれる理科を出題する中学校は、麻布中以外に、渋谷教育学園幕張中・渋谷教育学園渋谷中・海城中などがあります。それらの中でも麻布中の、「楽しく理科を勉強しよう」というメッセージは強烈です。

まるで、教室で理科の授業をするがごとく、先生が問いかけ、ヒントを与え、子どもたちが12歳なりの知性と教養を精一杯発揮しながら必死で食らいつく。大問1つを解くたびに、「へ~そうだったんだ!」という感動をあたえるという、紙上のアクティブラーニングを何十年も続けています。

出題者は、12歳なりの知識量を十分に分かった上で、1問1答形式に陥ること無く、持っている知識や思考力を総動員すれば、なんとか答えに到達する問題に仕上げています。その力量は、他校を圧倒しています。

過去問を解きながら、この年はどんな問題だろうとワクワクしながら問題を読み進めていくことが出来る子どもに向いている問題です。重箱の隅をつつくような知識は全く必要がない反面、「なぜそうなるの」「だったらどうなるの」に強い興味を持ちながら日々の学習を進める必要があります。

2020年入試

大問1はウナギの減少について。大問2はパイ・パウンドケーキ・クッキーの作り方について、大問3は、フェルマーの原理を含む光の進み方、大問4は、岩石の風化についての問題でした。

塾のテキストにそのままに入っている問題は、小問総数33問中わずかに1~2問でした。また、解くために必要な知識のほとんどは、塾テキストには書かれてはいません。その代わりに、長い説明文が書かれています。

たとえば、「シラスウナギが流れ着いた川の底が、コンクリートで全て固められてしまっていると、ウナギが生活しにくい理由」を答えるヒントは、説明文の「・・水中の細長い穴を隠れ場所とするウナギの習性・・・」にありました。

「クッキーはサクサクとした食感が特徴ですが、バターが少ないとかたくなってしまう理由」を答える問題でのヒントは、説明文の「小麦粉には主にデンプンとタンパク質が・・・。・・タンパク質どうしはつながってグルテンと呼ばれる・・。グルテンはそのまま焼くとかたくなります。」にありました。

大問3の最後の小問8は、はじめの説明にあった、「2点間を進む光は、考えられる経路のうち、進むのにかかる時間が最も短い経路を通る」にヒントがありました。“距離が短い”のでは無く、“時間が短い”と正確に読み取る必要がありました。

今年度は、特に説明文を読む力が大切だったと考えられます。

対策

何を教わるかよりも、どのように教わるか、そして何よりも誰に教わるかが大切になります。小6二学期からの志望校別日曜特訓は必須になります。麻布的な、授業の中でアクティブラーニングが実行可能な講師が担当しているはずです。そうで無い場合は、それが可能な第3者が必要になるかもしれません。

過去問は、出来れば10年以上を頑張りましょう。過去何十年にもわたって、出題傾向の変化はありません。一語一句にこだわって厳密に問題文の説明を読む練習を繰り返してください。そして、答えのヒントはどこかにあるはずだという意識を持って、丁寧に過去問にあたってください。

大問 小問 問題内容 難易 知識 思考 処理
1 1 うなぎの生態 A 1 1 1
2 A 1 1 1
3 B 1 2 2
4 A 1 1 1
5 B 1 2 1
6 A 1 2 1
7 B 1 2 1
8 A 1 2 1
2 1 パイ生地の仕組み A 1 2 1
2 B 2 2 1
3 B 1 2 3
4 B 1 2 1
5 B 1 2 1
6 A 1 2 1
7 B 1 2 1
8 B 1 3 1
3 1 光の性質 A 1 1 1
2 A 1 1 1
3 A 1 1 1
4 B 1 2 1
5 B 1 2 1
6 A 1 1 1
7 A 1 1 1
8 B 1 2 1
4 1 月の表面の様子 B 2 1 1
2 A 1 1 1
3 岩石と地形 A 1 2 2
4 A 1 2 1
5 B 1 2 2
6 A 1 2 1
7 A 1 1 2
8 B 1 2 1
9 A 1 2 1
平均 1.06 1.70 1.18

武蔵中

武蔵の理科は、理科の入試を行う全国の国私立中学の中でも有数の変わり種です。最近でこそ平均点等の公表がありますが(今年は60点満点で合格者平均37点)、試験形式が特殊なのに配点も採点基準も分からないため、その点数公表があまり意味をなしません。しかし、何十年も形式の変わらない過去問を含めて入試問題を見ると、学校がどのような生徒を望んでいるかがはっきりと分かるところが伝統校の為せるワザ。オーソドックスな形式とは一線を画しているため、一般的な模試の成績などの数値はまったく参考にならないのに、長く受験指導していると、武蔵向きかそうでないかが読み取れてしまうのです。過去に入試難易度、人気を大きく下げ、いくつもの学校の後塵を拝したにもかかわらず、御三家としてのポジションを維持し、再び盛り返してきつつあるその実力は、決してブレない出題スタイルに如実にあらわれています。こういう生徒が欲しいと言うメッセージ性に富んだ出題は、武蔵の教育とはこうなんだ、という自信の裏付けがあるからこそできるもので、この学校の最大の魅力でもあります。

今年の問題は、1番が武蔵お得意の仲間外れ探し、および他に共通する性質の記述です。身の回りの現象に、子供らしい興味をもって接しているかが問われます。2番では、エベレストを越えるインドガン(渡り鳥)を題材に、いくつかの設問を経て、最終的に鳥の呼吸器がヒトの呼吸器より優れている点を記述させています。3番は武蔵名物のお土産問題(封筒やビニール袋などに身の回りの雑貨を入れて受験生に配布し、それらを観察させて気づいた点などを図示させたり記述させる問題。入試後にそれらを持ち帰ることができるため、お土産問題とよばれている)です。ことしは糸で結ばれた2つのリング磁石が入っていて、その2つをつけたり離したりさせて、いくつかあるくっつき方のすべてを図示して説明せよというものでした。例年より比較的指示が明確だったので、受験生は取り組みやすかったものと思われますが、その中であっても着眼点の鋭さ、またはユニークさが問われるため、例年通り点差が開いたでしょう。

武蔵の理科は麻布と同じように「思考系」と言われることが多いですが、麻布のそれとは質が大きく異なります。麻布の理科がちょっと大人びた12歳なりの教養を問うのに対して、武蔵の理科はもっともっと子供らしい純粋な好奇心であったり、観察眼が求められるのです。知ったかぶりの似非教養は、この学校との相性は最悪です。記述する場面がいくつもありますが、子供らしい表現できちんと説明すればよいものばかりです。よく分かりもしないのに、無理して聞きかじった知識をひけらかす必要はない、と言う点はおさえておきたいものです。

問題が特殊であるため、対策として有効なものは絶対的に過去問です。しかも先述のように何十年も理科の出題形式のみならず出題レベルも不変(理科と社会を同時に試験していた時もあるが)であるため、昭和末期のころの過去問でも充分に使えます。今年の1番などは、微妙に内容は異なりますが、昭和の出題そのものです。できるだけ多く取り組んでおくとともに、記述やお土産問題などは、可能なかぎり経験豊富な先生のアドバイスを受けるようにしましょう。初めはどう書いたらよいかよく分からなかった記述も、少しずつ慣れて書けるようになってきます。日々の生活においては、やはり低学年のうちから図鑑や子供向けの科学コラムなどに多く接することが重要です。小学生新聞などに目を通し、へえーおもしろいなと思ったら、それを切り抜いてまとめてみるなども効果があると思います。受験間際で気を付けておかなければならないのは、武蔵の理科があまりにも特殊なので、そこだけに特化して染め上げてしまうと、併願校の対策がおろそかになってしまうことです。武蔵では必死になって基本知識の習得に励む必要はありませんが、他ではそれが通用しないこともあります。武蔵がコケたら皆コケたにならないよう、注意しましょう。

大問 小問 出題内容 難易 知識 思考 処理
1 1 発光するもの A 1 2 1
2 水溶液 A 1 1 1
3 A 1 2 1
4 植物の実 A 1 2 1
5 てこ A 1 2 1
6 実験器具 A 1 2 1
7 A 1 2 1
2 1 エベレスト山頂での酸素 B 1 1 2
2 化石 A 1 1 1
3 メダカの血液循環 A 1 2 1
4 ヒトの呼吸器 A 1 1 1
5 鳥の呼吸 A 1 2 1
6 ヒトと鳥の呼吸 A 1 2 1
7 考察記述 B 1 2 1
3   2つのリング磁石のつき方 B 2 2 3
平均 1.07 1.73 1.20

桜蔭中

これまでは受験生レベルに対して易しめの出題が続いていましたが、昨年から情報整理や思考を求める問題が増えてきており、今年は全体的に問題文が長くなる、見慣れない設定の問題(大問5)が出されるなどこれまでの出題からより思考力を問う方向へと変化が見られます。今のところ1問1問を見ると桜蔭中受験生がこれまで塾などで学習してきたレベルに対して決して難しいレベルではありませんが、今後の動向には注意が必要です。また30分と時間が短く設問数が多いため、高度な処理力も求められてます。

大問1は二酸化炭素の濃度について、生物間でのやりとりや季節変動など幅広く問われています。環境問題に関するテーマとしてはオーソドックスであり、同じようなテーマの問題に取り組んだことのある受験生も多かったのではないでしょうか。

大問2はリサイクルした金属を用いてオリンピックのメダルを作るという時事的な話題を計算問題としたものです。計算に少々煩雑な部分はありますが、理科的な知識として必要なものは密度のみであり、問題に書かれた通りにそのまま計算することで解決します。むしろ問1の「都市鉱山」を答えさせる問題が時事に対する高い関心が求められ出てきにくかったかもしれません。

大問3は森林と生物の関係についての問題で、問2までは知識問題です。問3はデータを参考に類推させる問題ですが、シンプルな類推で解決できます。

大問4は典型的なさおばかりの問題で問5までは塾のテキストにそのままありそうな問題です。問6が唯一考えさせる設問で、定性的な理解までつながっていれば難なく解けますが、計算ができる段階までの理解であれば時間がかかったことでしょう。

大問5は穴をあけたペットボトルでの氷のとけ方を比較する問題ですが、このような見慣れない設定の問題は桜蔭中では珍しいものです。問題文と問1の選択肢が考えるためのポイントになっており、氷と水の熱伝導性の違いと水位変化を組み合わせればよいです。最後の大問ということもありきちんと考える時間が残らなかった受験生もいたことでしょう。

全体を通してみると、塾で通常学習するタイプに似た問題は例年通り一定数あるものの昨年よりもさらに読解や思考を要する問題が増加する傾向が見られました。今後は理科では最低限の素養を見るにとどめてきたこれまでの出題から大きく変化していく可能性があります。

桜蔭中の理科は4分野から満遍なく出題されます。特に基本知識では取りこぼしのないよう、隙やムラのない学習が必要です。

一方で知識を元に類推、計算させるといった思考系の問題が増えてきているので注意が必要です。男子難関校で見られるようなゴリゴリの計算問題、全く見たこともないような度肝を抜くタイプの問題は今のところ少ないですが、今年の大問5を踏まえると今後出題が増える可能性があり、過去問のみでは対策が不十分になりそうです。とはいえ塾のテキスト後半の発展レベルを大きく超えるものではないので、これらの問題をきちんと考えながら理解することがまずは重要です。

最初は多少時間をかけても正しく詰めることが必要ですが、問題に比して時間が短めなので、入試が近づくまでには時間も意識して、必要な情報を早く見つけ出す練習もしておきましょう。

大問 小問 問題内容 難易 知識 思考 処理
1 1 環境問題(二酸化炭素) A 1 1 1
2 A 1 2 1
3 A 1 2 1
4 A 1 2 1
5 A 1 2 1
6 A 2 1 1
2 1 金属の性質 B 3 1 1
2 A 1 1 1
3 A 1 1 1
4 密度の計算 A 1 1 1
5 A 1 1 2
6 B 1 2 2
3 1 森林と生物 A 1 1 1
2 A 1 1 1
3(1) A 1 2 1
3(2) A 1 2 1
3(3) A 1 2 1
4 1 さおばかり A 1 1 1
2 A 1 1 1
3 A 2 1 2
4 A 2 2 2
5 A 1 1 2
6 B 1 2 2
5 1 熱の伝わり方 B 1 3 2
2 B 1 3 2
平均 1.20 1.56 1.32

女子学院中

全般

例年と同様に、小問33の中に、解答しなければならない箇所が60ヶ所あります。4教科とも40分でいずれも100点満点というのが女子学院入試の特徴ですが、40分の試験時間でその全てを埋めて、さらにしっかり見直しまでするには相当の訓練や練習が必要となります。

記述問題やグラフの読み取り、計算問題も毎年出題されます。どの分野においても、知識+計算+読解力が求められ、苦手を作ることが許されません。

見慣れた出題も多く、今年は、だ液(生物)、太陽の移動経路(地学)、海水(化学)、固体の性質(物理)といずれも、よく出題されるたーまとなります。このような広範囲な処理が求められる中で、60か所の解答欄があるため、スピードも求められていることは明白です。また、算数や国語と配点が同じであることから、理科での得点はとても大きな位置づけとなります。

今年

今年は「1」が『だ液』として、「アミラーゼの働き」が取り上げられています(生物学分野)。「2」が『太陽の移動経路』として、「季節ごとの南中高度」(地学分野)、「3」が『海水』として、「水溶液、固体の性質」(化学分野)、「4」が『ばねの伸び』から、「ばねの長さ」と「おもりの重さ」(物理分野)となっていました。

今年度の主な特徴は2つです。

  1. 出題傾向は、いずれもよく取り上げられる問題であり、日ごろから学習を積み重ねておくことが重要となります。
    大問1の「だ液、アミラーゼの働き」を問う問題。大問2の「太陽の移動経路」を問う問題。
    これらは、受験問題集や塾のテキストには記載されており、重要な問題として、他校でも取り上げられる問題です。日ごろから学習を積み重ねている人に有利な問題といえます。
  2. 同じ分野から、別の対象の問題が出されました。
    大問3の「海水」と「固体の性質」を問う問題。大問4の「ばねの長さ」と「おもりの重さ」を問う問題。
    この分野のことをいかに理解しているかを質問しているような内容です。入学前に、この問題は知っておいて欲しいという内容、学校からのメッセージだと考えることが出来ます。参考書や塾テキストに書かれているような内容を念頭に、条件によって、計算や解答を導き出すことが求められています。大問4は問題をよく読み、比率やばねの長さ、おもりの重さを手際よく、処理する問題となっています。

対策

女子学院志望者は、4教科均等配点の意味をしっかり理解し、理社の対策を怠らないようにすることが大切です。特に過去問演習では解答スピードに留意しつつ、しっかり考えて記号を選択していく、普段から記述問題もしっかり解いておくことなどの練習が必要になります。算数、国語以上に理科や社会で点数をとることが合格の秘訣かもしれません。理科を得意科目とするべく、その楽しさを見つけることが重要となります。

また、教材を通し、基本を理解し、常に疑問を持って、もっと知りたいというような生徒さんが求めているように感じます。このためには、今どんなことが起きているのか知りたいと思う欲求や、それはなぜおきているのかを探求する気持ちや姿勢があるかどうかという点です。そのような思考欲求や知的好奇心を得るためには、家族の理解や協力、理科の指導者と出会えることが必要かもしれません。

大問 小問 問題内容 難易 知識 思考 処理
1 1 でんぷん液の作り方 A 1 1 1
2 でんぷん液の消化が起きた試験管 A 1 1 1
3 実験条件とは A 1 1 1
4 ヨウ素液の量 A 1 1 1
5 だ液の性質(記述) B 2 1 2
6 アミラーゼの働き①(記述) B 2 1 2
7 アミラーゼの働き② A 1 1 1
2 1-(1) 太陽の移動経路 A 1 1 1
1-(2) 南中高度 A 1 1 1
1-(3) 日の出の位置 A 1 1 1
1-(4) 南中高度と昼の長さ① A 1 1 1
1-(5) 南中高度と昼の長さ② A 1 1 1
1-(6) 夏至の日の太陽の移動経路 B 2 1 1
2-(1) 地球と月の位置関係 A 1 1 1
2-(2) 気温の変化の原因(記述) B 2 1 2
3 1-(1) ろ過装置の使い方 A 1 1 1
1-(2) 海水 A 1 1 1
1-(3) 黒色の鍋の理由(記述) A 1 1 1
1-(4) 固体の量と温度 A 1 1 1
1-(5) 食塩の量(溶解度) A 1 1 1
1-(6) 白色のにごり A 1 1 1
1-(7) 水溶液の様子 A 1 1 1
2-(1) 固体の性質 A 1 1 1
2-(2) うすい塩酸 A 1 1 1
2-(3) 固体の性質 A 1 1 1
4 1 グラフの読み取り A 1 1 1
2 A-Cのどれか A 1 1 1
3 おもりの重さ A 1 1 1
4 ばねのかたい順 A 1 1 1
5 長さの和 A 1 1 1
6 ばねの長さ A 1 1 1
7 ばねの長さとおもりの重さ① B 2 2 2
8 ばねの長さとおもりの重さ② B 2 2 2
平均 1.18 1.06 1.15

雙葉中

例年、生物・地学・物理・化学の4分野から出題されます。塾テキストにあるような典型的な問題であることは少なく、といって全く知らないというわけでも無い境界領域を、見事に問題に仕上げています。前年にニュースになった事柄、テキストのコラムに載っているような事柄などを扱うことが多いものの、そこから一般的な受験知識を使う設問に誘導することが多く、難易度は見かけほど高くありません。塾のテキストを隅から隅まで読み、理解しておけば充分に戦える問題です。

記述問題が毎年3~5問あることにも注意が必要です。二行程度に簡潔にまとめる練習が必要になります。

2020年入試

  • 大問1:豆電球・LED・手回し発電機の基本的な理解を尋ねる問題でした。「LEDは、電流の流れる向きによってついたりつかなかったりする」、「発電機とモーターはちょうど逆の関係」、このような基本的な理解があれば苦も無く解ける問題でした。
  • 大問2:骨と筋肉の付き方に関する問題でした。これも、塾のテキストの説明に必ず書いてある事柄でした。(ただ一般的な筋肉の付き方の説とは異なる図であるために、まごついた受験生がいたかもしれません)
  • 大問3:点数の差が一番ついたと思われる化学の問題でした。水・油・エタノールの密度差の問題では、密度の基本的な理解が問われました。問3では、A、B、C3つの脂肪酸の付き方の「場合の数」の問題でした。設問の条件を捉えられていれば、算数の問題としては基本レベルです。
  • 大問4:日食・月食の問題でした。小問1は、月と太陽の関係を、スーパーボールと太陽の関係に置き換える計算問題でした。このような“0”の沢山つく計算は、丁寧に数えながら計算する必要があります。

対策

問題構成は、大問毎に、始めに長い説明の文章があり、その後小問が続きます。始めの説明の中に小問の答えを出すためのヒントが書かれていますから、問題とは直接関わりが無いように見える説明から、丁寧に読み進めていくことが大切です。

要求されている知識は、塾テキストの標準レベルまでです。ただし、一問一答型の知識では無く、つながりを持った知識である必要があります。直前時期の一問一答型の暗記教材に頼ること無く、普段からテキストの説明部分をしっかり読んで、文脈の中で理解し、覚える努力を続けてください。

記述問題が多いことにも注意が必要です。今年は、小問20問中4問が記述でした。それらは、最大二行程度で記述するものです。いわゆる“お約束記述”(「こう聞かれれば、こう答えると」決まっている問題)ではありませんが、文章構成に慣れるためには、各塾の記述問題をこなしておくことをお勧めします。

大問 小問 問題内容 難易 知識 思考 処理
1 1 電流(手回し発電機) A 1 1 1
2 A 1 1 1
3 A 1 2 1
4 A 2 2 1
2 1 人体(骨と筋肉) A 1 1 1
2 A 1 1 1
3 A 1 1 1
4 A 1 1 1
5 A 1 1 1
6 A 1 1 1
3 1 水と油の性質 A 2 1 1
2 A 1 1 1
3 B 1 2 1
4 B 1 2 2
4 1 天体(太陽と月) A 1 1 2
2 A 1 1 1
3 A 1 1 1
4 A 1 1 1
5 A 1 2 1
平均 1.11 1.26 1.11

渋幕中

総評

知識・思考力・処理力、そして推理力や観察力などバランスよく問う良問でした。今年は化学分野の出題がなく、大問1は物理、大問2は生物、大問3は地学分野からの出題となっています。

「暗記分野」と呼ばれる生物、地学分野の問題であっても、単なる知識で答えられる問題は皆無で、知識にデータから読み取ったことや考察をからめて回答しなければならない問題ばかりです。

特にグラフの作成や作図、そしてそのデータを活用することを求められますから、それ相応の準備と対策をねっておく必要があります。

  • 大問1
    光の進み方に関する問題。左右の目で同じものを見ることで、立体的に物体を把握できることは知識として知っている受験生は多いと思います。そのことを観察や作図を通して実際に確かめることがテーマとなっています。(5)は正しく作図することで、仮説が正しいかを確かめる問題となっていて、ただ指示通りに作図するだけでは問題の本質から外れてしまう可能性があります。「見える」ということはどういうことか、また「鏡に映る」ということはどういうことかを理解した上で正しく作図することが求められています。光の進み方に関する作図は「形だけ」「方法だけ」の暗記に陥っている受験生も多いと思います。普段から「どうしてそのように作図するのか」を自問しながら問題に取り組む姿勢が必要です。
  • 大問2
    難関校では定番の出題である、生物の生存率に関する問題。成長の各段階で死亡数が一定であるこん虫と、死亡率が一定であるこん虫を、データを読みグラフを作成することで突き止めていく問題です。作図自体は文意を読み取って指示に従えば難しくはないのですが、問題のテーマを正しく理解していないと、ただ形だけになり回答に確信が持てません。単なる知識で答えられる問題は(1)のみ、(2)からはすべて読み取った資料からの考察がテーマです。(3)からは文意を理解しながら死亡数と死亡率のどちらがテーマとなっているのかを考察する必要があります。この大問に限りませんが、今年の渋幕は特に「題意・テーマを理解する」ことに重点をおいた出題であったように思います。
  • 大問3
    2019年2月7日朝に関東の広い範囲で発生した霧を題材とした出題です。
    霧は空気中の水蒸気が小さな水滴になったものであることは、難関校の受験生なら誰もが知っていると思います。そのことを前提に、この大問もやはり天気図と気温、湿度などのグラフを読み取って、冒頭に示された写真のように雲海のような霧から東京スカイツリーが頭を出している状況がいかにしてできたかを考えさせます。(1)は天気図をはじめとする資料の理解、(2)は一般的な湿度に関する知識と処理力を求められます。(3)(4)他の大問同様、読解力と資料の分析力、思考力を問われる問題となっています。
大問 小問 出題内容 難易 知識 思考 処理
1 1 光の性質 B 2 2 2
2 B 2 2 2
3 C 2 3 2
4 B 2 2 2
5① C 2 3 2
5② C 2 3 2
2 1① こん虫の育ち方 A 1 1 1
1② A 1 1 1
2ア A 1 2 1
2イ B 1 2 2
2ウ A 1 2 1
2エ A 1 2 1
2オ A 1 2 1
2カ A 1 2 1
3あ B 2 2 2
3い B 2 2 2
3う B 2 2 2
3え B 2 2 2
3お B 2 2 2
3か B 2 2 2
4 B 2 2 3
5① B 2 2 2
5② B 2 2 2
5③ B 2 2 3
5④ B 2 2 3
5⑤ B 2 2 3
5⑥ B 2 2 3
5⑦ B 2 2 3
5⑧ B 2 2 3
6① C 2 2 3
6② C 2 2 3
6③ C 2 2 3
6④ C 2 2 3
3 1 気象 B 2 2 2
2ア A 1 2 1
2イ A 1 2 1
2ウ B 1 2 2
3① A 1 2 1
3② A 1 2 1
3③ B 1 2 2
3④ B 1 2 2
3⑤ B 2 2 2
3⑥ B 1 2 2
3⑦ C 2 3 3
4① B 2 2 2
4② B 2 2 2
4③ B 2 2 2
4④ B 2 2 2
4⑤ B 2 2 2
平均 1.67 2.04 2.02

渋渋中

総評

大問1は光の性質、なかでも遠くにある月が「追いかけてくるように見える」という身近な減少について考察する問題。そして大問2はトースターでパンがおいしく焼ける原理とデンプンの構造について問う出題となっています。全体的に例年以上に身近な現象を題材としており、覚えているだけでなんとかなる問題は非常に少なくなっています。全体的に高めの思考力を要求する当校の出題に対応するには、過去問の演習ほか、麻布、渋幕、栄光学園など似た出題傾向の学校の入試問題を解くことも対策となると考えられます。

  • 大問1
    光の進み方に関する問題。遠くにある月が「追いかけてくるように見える」という、誰もが経験したことがある現象を題材に、近くにあるものと遠くにあるものの見え方の変化について考えさせます。窓枠を視野に見立て、遠くにあるマンションの見え方の変化を考えますが、実際の経験と図示により自力で確認ができる技術、両方が揃っている受験生なら題意に沿ってとき進めることができたと思います。問1でいきなりテーマの核心となる問が示されますが、その仮定を問2以降の問題を考えることで確認するような構成です。問3では遠近法の具体的な説明と東京ディズニーランドの「シンデレラ城」の工夫など、問題を解くことで雑学的な知識が得られ、理科好きな受験生には楽しめる問題ですね。知識だけで答えられる問題は問4のみ、ほかはすべて資料の読み取りと考察によってとき進める必要がある良問です。
  • 大問2
    そもそも焼いて作るパンを、再度食べるときに焼くのはどうしてか、トーズターの原理はどうなっているのか、という、こちらも非常に身近な現象をテーマとした出題。問1〜問4はバルミューダ製のトースターを使っておいしくパンが焼ける原理を、バルミューダ社のホームページに掲載されているグラフなども使いながら考えさせます。問6ではいきなり分子の構造に関する話題で「結合の手」といった言葉が解説無しで登場するため面食らった受験生も多かったかもしれません。勘のいい子は「結合の手」の番号をざっと書き出して、算数のように解いてしまったでしょうが、ちょっと異色の出題という印象がありました。
大問 小問 出題内容 難易 知識 思考 処理
1 1 光の性質 B 1 2 2
2ア B 2 2 1
2イ B 2 2 1
3 B 2 2 2
4 C 2 3 2
5 C 2 2 3
6 A 1 1 1
7ア B 2 2 2
7イ B 2 2 2
7ウ B 2 2 2
7エ B 2 2 2
7オ B 2 2 2
7カ B 2 2 2
2 1① 物質の構造(デンプン) B 1 2 2
2ア B 1 2 2
2イ B 1 2 2
2ウ B 1 2 2
3 B 2 2 2
4 B 2 2 2
5 C 1 3 2
6 C 1 4 2
平均 1.62 2.14 1.90

駒場東邦中

全般

幅広い知識が求められていますが、単純に知識を覚えていればよいわけではなく、なぜそうなのかを理解しておく必要があります。知識問題では、理由や原因を理解した知識が必要になっています。なぜそうなるのかを理解し、確認し、応用にも使える理解力や思考力が求められています。

実験や観察をしている問題形式ですが、問題文や図表を読み取り、設問にある文章をよく読み、回答していくことが重要です。実験に関する問題では、受験参考書や塾テキストにあるようなモデルだけでなく、プラスアルファのポイントを加えて、より実際の現象に近づけることにより、受験者に尋ねている問題構成となっています。普段の授業や実験でも、同様のことが求められると想像出来ます。日ごろから、図表を観察したり、読み取る練習をし、問題のポイントや尋ねている内容を的確に素早く捉える練習をすることにより、他の条件下での観察や実際の実験との違いに気づいたり、比較することで、さらなる理解を深めることにつながると考えられます。

今年

今年度の特徴は、2つです。

  • 大問1では、いろいろな現象を問題が出されています。分野は植物、昆虫、金属のふた、火山灰層、アルミニウムはく、溶岩と断層、水溶液の性質、物体の重さと、幅広異分野から出題されています。
  • 大問2は、化学分野でに二酸化炭素を主なテーマとしています。大問3は、生物分野から、ヒトの骨の役割から、鳥、クジラ、チンパンジーと幅広い対象で問題文が構成されています。
  • 大問4は、地学分野から、月食をテーマとして、地球の影や月と地球の動きが質問されています。大問5は水に浮くもの沈むものをテーマに、密度の質問がされています。

対策

日ごろの教材や塾テキストだけでなく、生活の疑問を解決していく姿勢や考え方が問われています。何が聞かれているか、その原因や理由はなんなのか、さらに別の条件ではどうなのかなどを想像し、それを解決する姿勢や考え方が必要と思います。そのような好奇心や気持ちは、学校や塾だけでなく、博物館や外部の専門家、経験豊富な指導者(家庭教師)の力を借りて、ヒントをもらったり、道しるべを示してくれる人をつけるのことがよいかもしれません。

  1. 日ごろから身近で起きる現象や現実に対し、どうしてなのか、それはなぜなのかという疑問を持つ目線の問題が出されています。普段から、身の回りの生活を通し、観察を疑問を持つことが大切になります。受験問題集や塾のテキストにはあまり取り上げられていないかもしれませんが、日常の生活やニュース、夏休みの自由研究のテーマとして、取り上げられるような問題といえます。普段から、家庭でこのような話をしたり、科学博物館に行って、関心を引き出すことは大切だと思います。
  2. いずれの問題でも、これでもかこれでもかと繰り返し目線や条件を変えて、設問が出されています。理解力や応用力、思考力が問われており、入学後の授業でも、同様な質問が出され、生徒はそれに対して、打ち返すことが求められていると想像します。そのような生徒に入ってほしいという、学校や先生からのメッセージと受け取ることが出来ます。
  • 大問1では、いろいろな現象を問題が出されています。分野は植物、昆虫、金属のふた、火山灰層、アルミニウムはく、溶岩と断層、水溶液の性質、物体の重さと、幅広異分野から出題されています。
  • 大問2は、化学分野でに二酸化炭素を主なテーマとしています。
  • 大問4は、地学分野から、月食をテーマとして、地球の影や月と地球の動きが質問されています。
  • 大問5は水に浮くもの沈むものをテーマに、密度の質問がされています。

対策

日ごろの教材や塾テキストだけでなく、生活の疑問を解決していく姿勢や考え方が問われています。何が聞かれているか、その原因や理由はなんなのか、さらに別の条件ではどうなのかなどを想像し、それを解決する姿勢や考え方が必要と思います。そのような好奇心や気持ちは、学校や塾だけでなく、博物館や外部の専門家、経験豊富な指導者(家庭教師)の力を借りて、ヒントをもらったり、道しるべを示してくれる人をつけるのことがよいかもしれません。

大問 小問 問題内容 難易 知識 思考 処理
1 1 秋の花が咲く植物 A 1 1 1
2 成虫が冬越しする昆虫 A 1 1 1
3 金属のふたを開ける方法 A 1 1 1
4 火山灰の層の特徴 A 1 1 1
5 アルミニウムはくの変形 A 1 1 1
6 溶岩と断層 A 1 1 1
7 水溶液の性質ごとの分類 A 1 1 1
2 1 二酸化炭素の特徴、気体の割合の変化 A 1 1 1
2 二酸化炭素の特徴 A 1 1 1
3 ドライアイスの特徴 A 1 1 1
4 白い煙の正体 A 1 1 1
5 色の消えるのり A 1 1 1
6 酸性雨 A 1 1 1
3 1 ヒトの骨と骨のつなぎ目 A 1 1 1
2 骨格のはたらき A 1 1 1
3 骨の役割 B 2 1 1
4 鶏の筋肉と胸骨 B 2 1 1
5 クジラの尾びれ B 2 2 1
6 ヒトとチンパンジーの歩行と骨の違い B 2 2 2
4 1 月食の方角の空 A 1 1 1
2 月食のかかる地球の影 A 1 1 1
3 地球と月の直径 B 2 1 1
4 月食と地球の影 B 2 2 1
5 地球の影と月の動く速さ B 2 2 2
5 1 水に浮くもの、沈むもの A 1 1 1
2 密度の大きさ A 1 1 1
3 液体を2層に分ける A 1 1 1
4 水の温まり方 A 1 1 1
5 氷と液体 B 2 2 2
      平均 1.28 1.17 1.1

聖光学院中

長い間、神奈川の最難関として栄光、聖光と並び称されている聖光学院ですが、ここ数年は入試難易度、進学実績では栄光を追い越し、頭一つ抜けた感があります。かつての東京での開成と麻布の関係に似ています。そして入試問題対比に関しても同じようなことが、聖光と栄光の間にもあります。栄光の理科は、思考系とされる麻布の理科をさらに突き詰めた形で、一般的な塾教材や市販の問題集はまったく役に立ちません。それに対して聖光の理科はオーソドックスな形で、一般的な教材が有効です。開成ー聖光、麻布ー栄光といった併願が多いのも当然のことでしょう。

その聖光の理科入試ですが、徐々に易しくなってきています。平均点の推移をみても一目瞭然で、合格者の平均点が一昨年が100点満点で約75点、昨年が約80点、今年は約85点といった具合です。一応受験者平均とは毎年10点くらい差があるため選抜の体はなしているものの、これ以上簡単になると理科では差があまりつかなくなるという水域です。開成も数年間合格者平均が90%といった水準で推移し、昨年それがとうとう約95%に達しました。さすがに今年は80%に戻していますが、受験生レベルを考えるとかなり易しい問題であることに変わりはありません。聖光も意図的に理科の問題を易しくしてきているのは明白ですが、どの水準でとどまるのか、注目したいところです。

今年の1番は植物の雑多な基本知識を問うもの。芽生えや葉の形、食用部位などを聞いていますが、すべて選択肢形式となっているため、1つも落とせないレベルです。2番は太陽・地球・月で、日食月食をからめた出題。内容は平易で図も見慣れたものですが、問われる切り口が斬新(公転軌道や見かけの動きなどを全て月何個分か?で問うなど)で、戸惑った受験生がいたことでしょう。ただ、これにしてもリード文に必要な数値が揃えられているため、落ち着いて対処できれば苦にならないはずです。3番は水溶液の定性で、前半は超がつく基本です。後半に食塩の結晶構造を図を見て考える問題があり、ここが唯一やや難しいかなと思えるところです。化学計算は砂糖の燃焼でしたが、必要な酸素、発生する二酸化炭素、水の重さを問う定番の計算なので、聖光レベルの受験生には易しいと思います。4番は電流と磁力ですが、計算系は一切ありませんでした。前半は導線周囲の磁針の動きで基本です。後半がリニアモーターカーで、これに関してはだいぶ昔の麻布の問題など類題が多く、塾のテキストや問題集で見たことが多いでしょう。これも考えるために必要な内容は文中にしっかり提示されていますし、誘導設問もあるので、与しやすかったものと思われます。

こう書くと聖光を第一志望として志している受験生に失礼かもしれませんが、聖光理科の対策は開成と通ずるものが多くあります。まずは幅広い知識です。この点に関しては極端に些末なものは必要とされませんが、ヌケが許されないと言う点で、難易度でだいぶ接近してきている開成と共通です。塾の定番教材であれば、やらなくてよいという部分はないと思わないといけません。また、与えられたデータ、問題文にちりばめられたヒントを正確に拾い上げることが重要であることも一緒です。ある程度のオトナ度は必要ですが、麻布で求められる教養とはちょっと違います。思考プロセスを積み上げていく域までは要求されません。現象とそれが起こった原因、結果とそうなった理由をそれぞれ結び付けて考えられればよいのです。もちろんそのような力は、理科を暗記科目であると考えている限り身につかないものです。オーソドックスな問題をいくつも演習していく中で、自分の中に芽生えた疑問点、そこになぜ引っかかったのかを考える習慣、またそれが解消されたときのスッキリ感、腑に落ちた理由を考えることなどを積み上げていく中で少しずつ身についていきます。そして間違えた問題があった場合、解答を見てハイ終わりではなく、解説を熟読することはもちろん、テキストのはみだし雑学コラム、図鑑、科学的読み物、漫画、そして最も効果的なものが塾や家庭教師の先生の雑談、何でもよいので似たような話はなかったかと記憶をたどることも大切です。そういった過程で、類推して考えていく力も身についてくるものです。開成同様ハイスコアの争いになることが多いので、仮に分からないもの、ちょっと忘れてしまったものが出題された場合、前記のいろいろな要素から類推し、何が何でも正解に辿り着かせることができる力が特に重要になります。

大問 小問 問題内容 難易 知識 思考 処理
1 1 種子のj芽生えの様子 A 1 1 1
2 植物の本場の形 A 1 1 1
3a 茎の中の養分の通り道 A 1 1 1
3b デンプンの貯蔵場所 A 1 1 1
4 植物の食用部位 A 1 1 1
5 種子から芽を出す植物 A 1 2 1
6 モヤシが緑でない理由 A 1 1 1
7a オオカナダモ A 1 1 1
7b オオカナダモの観察 A 1 2 1
7c オオカナダモの観察 A 1 1 1
2 1 月の公転軌道 B 1 2 2
2 月の公転軌道 B 1 2 2
3 月の公転軌道 B 2 2 1
4 月食 A 1 1 1
5a 月食の図 B 1 2 2
5b 月食の図 B 1 2 2
3 1 磁石につく金属 A 1 1 1
2 溶解度 A 1 1 1
3 水溶液の定性 A 1 1 1
4 電流を通すもの A 1 2 1
5 水溶液の定性 A 1 1 1
6 食塩の結晶構造 B 2 2 2
7 砂糖の燃焼計算 B 1 2 2
4 1 電流と磁界 A 1 1 1
2 棒磁石と磁界 A 1 1 1
3 棒磁石と磁界 A 1 1 1
4 棒磁石と磁界 A 1 1 1
5a リニアモーターカー B 2 2 1
5b リニアモーターカー B 2 2 1
5c リニアモーターカー B 2 2 1
平均 1.17 1.43 1.20

栄光学園中

総評

例年通り、1つのテーマについて深く考察する、今年も栄光学園独自の入試問題です。今年のテーマは「スパゲッティ」です。体裁は大問×3題ですが、大問1はスパゲッティの原料となるコムギと他のイネ科の植物の判別、大問2はスパゲティの原料となる小麦粉から取り出すグルテンについての出題、大問3が本格的なパスタに関する考察となっています。メインテーマはパスタの「折れやすさ」で、データからパスタの折れやすさは直径を何回かかけた数の比に比例すると導かれていきます。知識レベルが非常に低い数になっているのは、呼び知識なしに問題に導かれるままに考え、結果に向かって解き進めることを求められることを求められる問題ゆえにです。受験勉強で学び鍛えるのは一問一答式の知識ではなく、知識を使い考察することだと教えてくれる良問です。

    • 大問1
      イネ・コムギ・エノコログサ・ススキという、受験生にとっては身近な植物をイラストから選ぶ問題。栄光の受験生なら多くが正答したと思われます。
    • 大問2
      小麦粉に水を加えると「グルテン」を取り出すことができ、これがスパゲティの「コシ」のもとになると説明されています。もちろんデンプンは炭水化物ですが、問2で「からだのもととなる」という表現から「タンパク質」と答えるのもそう難しくありません。ここまでが本年度の出題のうち「知識問題」と言える部分で、確実におさえておきたい部分でもあります。
    • 大問3
      スパゲティの「折れやすさ」について、長さや直径をいろいろに変えたスパゲティを使って実験する問題です。問1は単に平均値を求める問題、問2も断面積が何倍になっているかを計算するもので、落とせません。問3、問4で問題の指示通りにグラフを書くと、直径や長さと「折れやすさ」の間には比例のような決まりがないことがわかります。問5は「ブカティーニ」というパスタの重さがスパゲッティとくらべて何倍かを計算しますが、式の形が与えられているだけに帰って難解と感じた受験生も多かったかもしれません。問6以降で「直径に直径を3回かけた数」と折れる力の比がほぼ一定と示されますが、「直径に直径を3回かけた数=直径の4乗」であることを勘違いしないよう、題意に沿ってゴールを目指します。問9の結論に納得できた受験生は、合格点に達したのではないでしょうか。
大問 小問 出題内容 難易 知識 思考 処理
1 A 植物(穀物)の判別 A 1 1 1
B A 1 1 1
C A 1 1 1
D A 1 1 1
2 1 グルテンについて A 1 1 1
2 A 2 2 1
3 1 スパゲッティについての考察 B 1 2 2
2 B 1 2 2
3 B 1 2 2
4 B 1 2 2
5 C 2 3 3
6① B 1 2 2
6② B 1 2 2
7③ C 1 3 3
7④ C 1 3 3
8E C 1 3 3
8F C 1 3 3
8G C 1 3 4
9 C 2 2 3
平均 1.16 2.05 2.11

豊島岡女子学園中

全般

試験の配点は50点、時間は社会と合わせて50分で問題用紙は11枚です。計算問題を含め、思考力を問う問題が多く、スピードが求められます。豊島岡の考察問題の場合、与えられた情報から答えを1問ごとに解く問題が多く、問題を知っていることが大切なポイントとなり、過去問に取り組むことが重要です。また、計算問題に関しては、数多く解くことにより、どのような問題がきても、迅速に対応出来ることが不可欠となります。四捨五入問題が6問出題されているのも特徴的で、計算力や処理能力が問われています。

知識問題に関しては、細かい部分まで求められることがあります。「ヒトの臓器と管のつくりやはたらきについて」の問題など、「知識」の確認が必要です。4,5年生のテキストから読み返し、基本情報の整理が大切になります。生物や地学は高度な思考・考察問題が含まれていないので、あまり時間がかからないと思いますが、物理分野でいかに早く的確な推論が導けるかが鍵となります。

今年

今年度の主な特徴は2つです。

      1. 知識が問われている問題が出題されています。大問1にばねの長さとおもりの重さを問う問題。大問2の9つの水溶液の種類の問題。これらは、基本の法則を身につけることで、解ける問題、あるいは解答に近づく問題と考えます。必要の応じて、解答や解説を知る機会を増やし、その準備をどこまでするかが、受験生に求められています。それを促す家庭環境も求められています。
      2. 思考力が問われている問題が出題されています。大問3は、生物分野:ヒトの臓器と菅のつくりとはたらき、大問4は、地学分野:地震について出題され、考察力が問われています。 計算、グラフ、図をみて、解く問題も出題され、考察力が求められる問題が出題されています。

対策

社会と合わせて50分という時間的制約があるため、迅速に問題を理解し、計算処理するためには、相応の力が必要となります。重要なのは、確実に解ける問題を確実に解くことです。

問題数が多く、配点が各2点とすると、合格者が間違えられるのは7-8問となります。解けそうな問題を選び、集中的に時間を配分することも、合格に向けた大切な要素です。また、問題を取捨選択する際のポイントや時間配分は、過去問対策を進める際の重要なテーマです。

特に、豊島岡の場合、設問を通し、基本知識を身につけるとともに、思考力を問う問題を通して、どのような生徒にきて欲しいかを暗示しているように思えます。このためには、これまでの過去問研究を行い、その対策を練るとともに、日頃から、問題を探求する積極的な気持ちや姿勢が必要になります。

大問 小問 問題内容 難易 知識 思考 処理
1 1 ばねの長さ A 1 1 1
2 ゴムひもの長さ B 2 2 2
3 ゴムひもの長さ B 2 2 2
4 おもりの重さ B 2 2 2
5 おもりの個数 B 2 2 2
2 1 水溶液の種類 A 1 1 1
2 固体の重さ B 2 2 2
3 適切な水溶液 A 1 1 1
3 1 体の横断面 A 1 1 1
2 体のどちら側 A 1 1 1
3 臓器と管 B 2 1 1
4 臓器と管のはたらきの説明 B 2 1 1
4 1 地震の規模と大きさ A 1 1 1
2 プレートの岩石が溶けたもの A 1 1 1
3 ゆれの伝わる速さ B 2 1 2
4 地震の発生した時刻 B 2 1 2
5 プレートの移動方向 B 2 2 2
6 1年間の平均移動距離 B 2 2 2
平均 1.61 1.39 1.50

慶應義塾中等部

今年もまた、中等部の理科は極めて平易なものでした。入試まであと1年ある新6年慶應志望の生徒が解いてもほとんどの子が7、8割以上の得点になるレベルです。中等部にはめずらしく冒頭の1番に軽めのタッチの会話文形式の出題があり、おっと思いましたが、問われる内容は平板です。気体、ミツバチ、LEDと話題をひろげるためにちょっと無理してくっつけたという感じ。変わったことと言えばそれくらいで、とにかく典型題が多く大部分が選択肢であり、計算させるような問いが極端に少ないため、かなりの受験生が試験時間を持て余してしまうはずです。

毎年書くことですが、中等部が何年もこのスタイルを堅持しているのは、進学校との差別化を図っているからです。慶應の場合、小学生のこの段階で、大学入試を見据えた思考力、応用力、数値処理力を求める必要はないのですから、それも当然と言えるでしょう。進学校の滑り止めとしてではなく、生粋の慶應ファンに来てほしいのです。慶應ファミリーとして必要な最低限の常識、小学生として知っておきたい理科的知識を身につけているかが重要で、突出した能力は求められません。そのあたりは入学してから見せてもらうので、とにかく入学する段階では、今までバランスよく成長し、そつなく学習してきたことが分かればよい、という考えなのでしょう。

今年の入試においては、先述のように1番に、昨今いろいろな学校で多く取り入れられている会話文形式が出題されたことが目新しいですね。ミツバチだけにハチの字ダンスという洒落を取り入れるなど軽妙です。2番はブラックボックス的な電流の問題ですが、乾電池の直列と並列が理解できていればよいという超基本。3番の天体も夏の大三角や冬の大三角、天の川など定番の出題です。今年最も差がついたかなと思うのが4番(1)の溶解度曲線の読み取りでしょう。ちょっと細かい部分まで注意しなければなりません。(2)に唯一ほんの少し計算させる要素の設問がありますがこちらは平易です。

また昨年と同様、今年も毎年のように出題されていた、植物、昆虫、動物の雑知識、常識チェックが1つも出題されませんでした。最近の子供にとって実はこれが一番厄介で、中等部理科においてもっとも差がつく部分だったのですが、2年続けて出題がありません。そのため、さらにとっつきやすいという印象を与えています。また、中等部の場合、問題自体簡単な内容なのに、選択肢の文章の言い回しが分かりにくいということが結構ありましたが、最近はその部分もだいぶスッキリして、正解を見極めやすくなっており、これも問題を平易に見せる要因となっています。

今年もかなりのハイスコア勝負になったものと思われます。1問2点の50点満点ということが多い入試ですが、男子でも5つミスって40点8割だと苦戦、定員が少なく難度が上がる女子の場合は、ほとんどミスが許されない入試となっています。このような入試の対策としては、とにかく隙の無い、ムラをつぶす学習が必須となります。知識がメインですので、応用題を多少端折ってでもしっかりと基本テキストを反復して、全分野を固めておくことが重要と心得ましょう。また昨年も書きましたが、各種模試やカリキュラムテストにおいては、正解率に留意した見直しを徹底することです。半分以上の受験生が正解するような問題に関しては、しっかりと頭の中に叩き込むつもりで確実に復習してください。また、例年もっとも差がつく生物系の雑学的な知識に関しては、普段から図鑑に慣れ親しんでおくことが重要になります。小学校の教科書や、塾の教材などのはみ出しマメ知識なども、生物系に関しては特に要チェックという意識を持ち、しっかり目を通しておきましょう。進学校とは求めている生徒像がまるで違うということは、過去問を演習するとよく分かるはずです。慶應諸校は過去問演習が重要といわれることが多いですが、それはその差異をしっかり認識して、普段の学習や生活に反映させることも意味します。広範囲にわたるバランス感覚を身に着けて下さい。

大問 小問 問題内容 難易 知識 思考 処理
1 1 酸味を抑えるもの A 1 1 1
2 発生する気体 B 1 1 1
3 花粉と実 B 1 1 1
4 ミツバチ B 1 1 1
5 LED B 1 1 1
6 LEDの性質 B 1 1 1
2 A 乾電池の配列 A 1 1 1
B 乾電池の配列 B 1 1 1
3 1 8月の夜空 A 1 1 1
2 星の高度 A 1 1 1
3 夏の天の川の一 B 1 1 1
4 夏と冬の大三角 B 1 1 1
5 天の川 B 2 1 1
4 1 溶解度曲線の読み取り A 2 2 1
2 アンモニアの溶解度 A 1 1 2
3 水の三態 B 1 1 1
平均 1.13 1.06 1.06

早稲田中

総論

例年、塾テキストの発展問題レベルが多く出題されています。しかも、その発展問題の一部は、オリジナリティーにあふれた問になっていることに注意が必要です。

例年、大問は4つ。それぞれが小問5つの構成です。小問1と2は、塾の暗記教材レベルの知識を問う基礎的な問題です。残り3問のうち、2問程度が塾テキストの発展問題に相当します。そして、残り1問がオリジナリティーのある問題です。合格最低点が7割弱であることを考えると、この最後小問以外を確実に正解していく学力が求められていると捉えることが出来ます。

そのためには、普段の問題演習時に、「問題の説明をしっかりと読む」ことです。「学習してきた知識を使って解きましょう」と言っているのか、それとも、「説明に書いてある事柄を使って解きましょう」と言っているのかを、1問毎に確認するような丁寧な学習がポイントになります。

2020年入試

大問1は、古インド大陸の移動。大問2は、溶解度。大問3は、ダイオードを含む電流の問題。大問4は、植物の遺伝についての問題でした。

      • 大問1では、問5の計算が要注意でした。“0”の沢山ついた計算をいきなり始めるのでは無く、“0”の沢山ついた“分数の式”を書いてから計算を始めることが、ミスをしない方法です。
      • 大問2は、溶解度の“よくある”問題でした。問4のように、条件を正確に読み取ることを要求されることがあります。
      • 大問3は、ダイオードと電球の電流の流れ方の違いを、説明から読み取ることを要求されています。ダイオードは、「電流の流れる向きによって、ついたりつかなかったりする」という知識だけでは問3・4・5が解けません。実験1・2・3・4の説明から、「ダイオードは、電池1個分の電圧を超えていないとつかない」ことを読み取ることがポイントでした。
      • 大問4も、説明から条件を読み取ることが大切な問題でした。花の作りのパーツを左右している遺伝子グループを、説明の文章を表からしっかりと読み取ることが出来た受験生は、苦も無く正解できたと思われます。

対策

基本知識は、1問1答型の暗記教材に頼らずに、テキストの説明の文章の中で覚えるように心がけてください。あとで正解を聞くと、「あっ、何だ、それだったのか!」と感じるような、別方向からの設問に対応するためです。

問題演習は、各塾のテキストに掲載されている発展問題までをやっておく必要があります。繰り返しになりますが、その際は、「問題の説明をしっかりと読む」ことを実行してください。

過去問は、5年分を解き、「学習してきた知識を使って解きましょう」と言っているのか、それとも、「説明に書いてある事柄を使って解きましょう」と言っているのかを判断する訓練に使っていきましょう。

大問 小問 問題内容 難易 知識 思考 処理
1 1 古インド大陸の移動 A 1 1 1
2 A 1 1 1
3 A 1 1 1
4 A 2 1 1
5 B 1 1 2
2 1 溶解度計算 A 1 1 1
2 A 1 1 1
3 A 1 1 1
4 B 1 2 1
5 A 1 2 1
3 1 電流(ダイオードを含む) A 1 1 1
2 A 1 1 1
3 B 1 2 2
4 C 1 3 2
5 B 1 2 2
4 1 植物の遺伝 A 1 1 1
2 A 1 1 1
3 A 1 2 1
4 B 1 2 1
5 A 1 1 1
平均 1.05 1.40 1.20

早稲田実業中

総評

大問1は光の性質に関する問題、大問2は生物の進化、そして大問3は環境問題に関する問題でした。知識だけでなくデータや社会的な知識を交えて考える問題が多くなっていますが、それほど複雑なデータ処理を求められる問題ではありません。その意味では思考力と幅広い知識のバランスを問う問題になっているといえます。知識は単に言葉やその意味を知っているだけではダメで、その言葉が現在の社会においてどのような文脈で語られるのか、またその原因と考えられているのは何かといったところまで理解しておく必要があります。大問1では作図が出題されましたが、こちらも「指示通りに作業する」だけでは正解にはおぼつきません。作図によって出題者が何を見ようとしているかを考え、理解した上での作業が求められています。

      • 大問1
        光の進み方に関する問題。問1は凸レンズの作図としては王道で、すべての理解のおおもととなるものです。事前知識を活用するのはもちろん、素材分の冒頭で与えられている条件や作図の方法をしっかり読み、理解した上で作図する必要があります。問2も「上下左右が逆」という暗記だけでは足元を救われてしまいます。「どちらから見ているのか」を考慮し、図から考えて答えることが求められます。問3では、作図と計算から凸レンズを使うと物が大きく見えるのはどうしてかを考えさせます。典型的な虚像の作図からやや踏み出したレベルの問題であるため、自分なりに一から図を書いて計算し、像の大きさを求める必要があります。
      • 大問2
        動物一般の進化と繁殖の話題から、人類が初期の猿人から新人まで進化発展してきた理由と要因を考えさせる問題です。要求される平均的な知識、思考力のレベルは高くありませんが、問4は自分の意見もまじえて60〜80文字にまとめる問題で、回答の軸を何に据えて記述をまとめるかが難しい問題です。表にヒトの食物、移動方法、分布する地域の変化などが示されているので、それらのうちから2〜3を軸に、ヒトの脳が大きくなった要因を答えます。自分の考えも含めて述べる問題ですが、あくまでも表からわかる事実に基づいて回答を作成することがポイントです。
      • 大問3
        近年世界的に問題となっている、プラスチックごみに関する問題です。「ダイオキシン」や「マイクロプラスチック」など、言葉だけでなく、それらがどのような経緯で問題とされるようになっていったかを知っておく必要があります。問3は「バイオプラスチック」「生分解性プラスチック」といった言葉が出てきますが、知らなければ知らないなりに題意から推測できるように選択問題となっています。問4は「太平洋ゴミベルト」についての知識。理科だけでなく社会科の知識も活用しましょう。知識レベルの高い問題が一定数含まれる問題ですから、問2・5・6といった基本知識は外せません。問7は計算によって「水に浮く=水より軽い」プラスチックを答える計算問題です。身の回りのプラスチックが水に浮くか沈むか、試してみてもいいですね。
大問 小問 出題内容 難易 知識 思考 処理
1 1 光の性質 A 1 1 2
2 B 1 2 2
3(1) C 2 3 2
3(2) C 2 3 3
3(3) C 2 3 3
2 1 動物の体の特徴 A 1 1 1
2① A 1 1 1
2② A 1 1 1
2③ A 1 1 1
2④ A 1 1 1
3 B 2 2 2
4 C 3 3 3
3 1 環境問題 B 2 2 1
2 A 1 1 1
3c B 2 2 1
3d B 2 2 1
4 C 2 3 2
5 A 1 1 1
6 B 2 1 1
7 C 2 2 3
平均 1.60 1.80 1.65
       

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