2018入試分析理科

目次

開成中
麻布中
武蔵中
桜䕃中
女子学院
雙葉中
筑波大付属駒場中
駒場東邦中
慶応中等部
栄光学園

理科 総評

 昨今取り沙汰されている、新指導要領、アクティブラーニングの影響は、少しずつですが中学入試の理科にも影響を及ぼしているように感じます。塾のカリキュラムテストや模擬試験と同じ、いわゆる見たことのあるパターンの問題、知識の暗記のみで対応できる問題が徐々に減ってきています。会話形式の問題形式が増えたり、ほとんどの受験生が見たことも聞いたこともないような題材を取り上げ、それについて答えさせるという出題がやや目立つようになってきました。

 麻布中の理科は、昭和のころから「12歳なりの教養」を問い続けています。それをリスペクトする渋谷幕張や渋谷渋谷などの比較的新しい有力校がその形式を踏襲して、さらにそれらの学校の成功を受け、また都立中高一貫校の出題形式などに影響された学校が、さかんにその真似をするという流れがあるようです。しかし、問題内容に関して言えば、模試などの典型問題を形式だけ換骨奪胎させたのみで平板であったり、逆に余りにも難度が高く、さらに出題が唐突で、いったい子供のどんな能力を問いたいのか疑わしい(出題者の自己満足?)ものも見受けられます。普段、中高生を教えている先生たちが小学生の「12歳なりの教養」を問う出題をするには、相当の研鑽が必要です。目新しい難解なテーマであっても、導入をしっかり行い、子供たちが持っている知識を組み合わせて「類推」させれば、上位生ならきちんと答えは導けるものです。解いていて受験生がワクワクする麻布のような良質な問題、自校を受験する子供たちの知的レベルをしっかり見極めた優れた問題が各校で目立つようになるまでは、まだ当分時間がかかりそうです。

 ただ、こういった兆候は中学入試全体での傾向であって、ここに取り上げる上位校に関しては、大きな変動はありません。元々独創的な出題であることが多く、自校の教育理念に自信がある学校では、アクティブラーニングなどというものは「何を今さら」という感じなのでしょう。各校で問う知識レベル、思考レベルは、それぞれの個性として、だいぶ濃淡の差があります。これらの学校を目指す生徒は、まずしっかりとそれに沿った対策をとることが重要です。知識に関しては、著名塾のテキストをしっかりマスターすることで、ある程度対応できます。そこにプラスアルファして、それらを組み合わせて考える力、類推能力を高めるには、机上の学問にとどまらないアウトドアでの活動、種々の図鑑、科学的読み物などにどれだけ親しむかなどの、幼少期からの環境が重要になります。その時間的余裕のない受験生だと、とにかく良質の問題に多く当たり、知らないことを分からないと切り捨てるのではなく、まずは持っている知識を組み合わせてどうにかならないかしっかり考える訓練をすること、それでダメでもすぐに解答を見るのではなく、百科事典、図鑑、タブレットなどを駆使して調べてみるという姿勢を持つことが重要になるのではないでしょうか。

開成中

 ここ数年続いていた、合格者平均がほぼ9割、受験者平均でも8割越えという傾向は今年も同じでした。今年は、最後の設問が目新しかったということもあり、それぞれの平均は5%ほど下がりましたが、高得点での戦いという傾向に変化はありません。

 開成の場合、物理、化学、生物、地学4分野から満遍なく出題され、それぞれの担当教師が問題を作成しています。かつてはトップレベルの受験生が尻込みするような、手間がかかる問題、重箱のすみをつつくような知識問題が出題されるなど、理科で大きく点差が開くことが結構ありました。

 それも今は昔、ここまで4人の先生方が足並みをそろえて易しい問題を作るということは、「理科は最低限の素養を見る」にとどめるということで、意思統一がはかられているものと考えられます。だからといって理科を軽んじていいかというと、そうもいきません。先にも述べたようにハイアベレージでの勝負になるため、隙のない学習を心掛けなければならず、またミスが許されない緊張感をもって答案と対峙するタフネスさも要求されます。

開成中
大問 小問 通し番号 知識レベル 思考レベル
1 1 1 1 1
2 2 1 1
3 3 1 1
4 4 1 1
5 5 1 2
6 6 1 1
7 7 2 2
2 1 8 1 1
2 9 1 1
3 10 1 1
4 11 2 2
5 12 1 1
6 13 1 1
7 14 2 2
3 1 15 1 1
2 16 2 2
3 17 2 2
4 18 2 2
5 19 1 1
6 20 1 1
4 1 21 1 1
2 22 2 2
3 23 2 2
4-1 24 2 2
4-2 25 3 3

 今年の問題は「1」がなんてことのない、てこの原理を問う出題です。
「2」が生物でした。カマキリが題材で、それに寄生するハリガネムシの話題に触れていますが、それに関する問題は一切なし。受験生ならだれでも知っている不完全変態、冬越しなどの出題にとどめています。ハリガネムシはカマキリの脳にある物質を送り込み「洗脳」して、自分に都合の良い水辺で自殺させるのですが、これを膨らませられれば、麻布にもひけをとらないおもしろい問題が作れるのに、あえてセーブしているように見えます。

後半のナミテントウに関しても同じ。ナナホシテントウと同じかそれ以上によく目にするナミテントウは、いろいろな要素がからみあって、羽が黒だったりオレンジだったり、星の数も2個から多数までマチマチになります。これも題材にすれば、子供がワクワクできると思うのに、アブラムシを食べるという出題程度だけで終えています。子供に生物のおもしろさを知らしめたい気持ちは伝わりますが、思考力を要求しすぎて、難しくしすぎることはできないというジレンマを感じさせる出題でした。

「3」は溶解度と二酸化炭素に関する出題です。硝酸カリウムでの溶解度計算ですが、後半の二酸化炭素の出題と同様に、開成受験生にとっては、赤子の手をひねるようなレベルだったと思います。

「4」は今年の問題の中ではもっとも目新しい問題でしょう。後半の月火水木金土日の曜日配列の起源を考えさせる問題は、小学生の教養として、おもしろかったのではないでしょうか。古代バビロニアに端を発し、プラネタリーアワーで曜日の配列が決まっていく様子を、実際にデータを使って計算し、考えさせる問題となっていて、麻布を彷彿させるようなタイプです。今年はここで最も差がついたものと思われます。

 開成に関しては、先述のようにとにかく隙、ムラのない学習がもっとも大切です。分野による偏りを作らないこと。これを心掛けねばなりません。思考力を要求するタイプは近年ほとんど出題されませんが、今年の最後の問題のようにたまにポロっと出題されることもあり、気が抜けません。どんな問題が出てもひるまない強靭な学力、高得点勝負になっても耐えられるだけの精神力を涵養していく必要があるでしょう。

麻布中

 今年の麻布の理科は何だろう、とワクワクしながら入試問題を開くような受験生がほしい。そういう学校からのメッセージが毎年詰まっているのが、麻布の理科の特徴です。受験勉強で学んだ知識を否定することなく、それらを充分理解した上で、単なる1問1答形式の出題に飽き足らず、持っている知識を動員して考えることが好きな子、12歳なりの教養を身に着けている子がほしいという学校のスタンスは、何十年もの間、不変です。そして、中学入試理科のランドマークであるという問題の質も不動です。

麻布中
大問 小問 通し番号 知識レベル 思考レベル
1 1 1 1 2
2 2 2 2
3 3 2 2
4 4 1 1
5 5 1 2
6 6 1 1
2 1 7 1 2
2 8 2 2
3 9 2 2
4 10 2 2
5 11 2 2
6 12 2 2
7 13 2 3
3 1 14 1 1
2 15 2 2
3 16 2 2
4 17 1 1
5 18 2 3
6 19 1 1
7 20 1 1
8 21 2 3
9 22 2 3
4 1 23 2 2
2 24 2 3
3 25 2 3
4 26 2 3
5 27 2 3
6 28 2 3
7 29 2 2
8 30 2 3
平均 1.70 2.133333333

 今年は「1」がヤンバルクイナ、「2」が固形石鹸、「3」が身近な雨の話題から、カッシーニによってメタンの川の存在が確認された土星の惑星タイタン、そして昨年秋のカッシーニのグランドフィナーレについて、「4」はヒートポンプの話題と続きます。

 毎年のことですが、麻布の理科では、ほとんど中学入試の典型題と呼ばれるものは出題されません。その場で与えられた題材をもとに考えさせるものばかり。こう書くと難問のイメージを抱く方もいらっしゃると思いますが、麻布の理科は決して難問ではありません。無論、普段の塾のカリキュラムテストで汲々としている生徒や、勉強=暗記としか考えられない生徒には難しく感じるかもしれません。が、ある一定水準の教養がある子には、たまらない魅力がある問題です。だって、細かい知識をしこしこ覚えなくて良く、好きな科学読み物やコラム、図鑑などで仕入れた豆知識を使って考えるだけで高得点を狙えるのですから。

 麻布の理科はどんな難解なテーマであっても、リード文がしっかりしていて、子供を上手に誘導していきます。メッセージ性が強く、最後の「落ち」に向かって設問が続くことが多いです。それに乗ることができるだけの「12歳なりの知性と教養」が問われるわけです。これが他校が真似をしようとしても、なかなかできない部分です。今や麻布以上に難解なテーマを出題する学校はたくさんあります。しかしほとんどの場合、「相手は12歳の小学生である」という観点が欠けています。難しすぎて差がつかなかったり、過去問指導で捨て問にされるなどの様相を呈してしまいます。

 例えば今年の「4」はヒートポンプを扱っていますが、問題文中に一言もヒートポンプなど出てきません。断熱膨張、断熱圧縮なる単語も使われていません。塾で鍛えられた上位生ならこれらの言葉は当然知っているでしょう。それ自体はアドバンテージにはなりますが、別に知らなくとも、素直に出題者の意図に従って問題文を丁寧に読んで考えられれば、全て解けるのです。その味付けと言うか、問題作成の機微の部分が他校との差となっています。アクティブラーニングとかなんとかで、最近になって単なる知識を問う問題から、傾向を変えてきた学校と、何十年もの間「12歳なりの教養」を見つめ続けてきた伝統校との差がここにあります。そしてそれが麻布が麻布たる所以なのです。

 麻布を受験するためには、この部分をしっかり理解することがとにかく重要です。抽象的ではありますが、塾で何を教わったかではなく、12年間何を見聞して、そして何を考えてきたのかが問われるのだ、ということを念頭に置いて学習を進めてほしいと思います。

武蔵中

 武蔵の理科は麻布と同じように、思考力を問う形で一貫しており、その出題形式も独特です。最もその特徴があらわれるのが、皆さんもご存じのいわゆる「お土産問題」ですね。毎年受験生に身近なモノを配布して(それを持ち帰ることができるので「お土産問題」と呼ばれます)、それを観察させ、気づいたことを図示させ、記述させるというものです。着眼点の鋭さ、柔軟な発想力、それを検証していく論理的思考力などが問われます。過去問などで何度も練習し、しっかりした添削指導を受けないと、何を書いて良いのかさえも分からないでしょう。

 ただ、ここで気をつけたいのが武蔵が要求する思考力と、麻布が要求する思考力はまったくの別物であるということです。麻布は12歳ではあるものの、少し大人びた教養を求めるのに対して、武蔵の場合は子供らしい柔軟さを求めていると言うことです。算数の問題にも同じことが言えますが、とにかく武蔵は子供らしい素直な感受性と柔らかな発想力が問われます。知ったかぶりの頭でっかちを嫌うということを頭に入れて答案を作らなければなりません。

武蔵中
大問 小問 通し番号 知識レベル 思考レベル
1 1 1 1 1
2 2 2 2
2 1 3 3 3
2 4 2 2
3 5 3 4
3 1 6 1 1
2 7 1 1
3 8 2 3
4-1 9 2 3
4-2 10 2 3
4 1 11 2 3
2 12 2 4
平均 1.916666667 2.50

 今年の「1」は水溶液の性質、「2」は空気鉄砲、「3」は花とそこを訪れる動物について、「4」がお土産問題でした。今年のお土産はチャック付きビニール袋とチャック単体です。問1でまず文章のみで閉じる仕組みを説明させ、問2で外からはすぐに開くのに、内からは開けにくい理由を図や文章で説明させています。昨年とちがい、解答欄のスペースが半分以下で、それほど大きくありません。また自由記述の要素が少なく、問われている内容がはっきりしているので、対策を積んだ受験生にとっては、とっつきやすかったものと思われます。

 どうしても武蔵の場合、このお土産問題に気を取られがちですが、前半の普通の問題で合否を分けるケースが多いようです。選択肢の場合であっても「すべて選びなさい」形式が多く、知識だけに頼って気軽に答えを書き込むと足元をすくわれます。一つ一つじっくりと考え、検証することが重要になってきます。

 また、武蔵が得意な出題パターンに、問いに対して記号などの答えを書かせ、さらにその理由を記述させるというものがあります。今年も複数出題されていますが、直感をたよりに記号を選ぶ子にとっては難敵です。普段の学習から、なぜその答えを選んだの、どうして?と問いかけ、それに対して自分の言葉で(子供らしい表現でも構わないので)説明させる練習を積むようにしたいものですね。

桜蔭中

 30分の試験時間で、枝問まで入れると解答欄が35から40となり、スピードが要求されます。ただし、受験生レベルを考慮すると、問題はオーソドックスで易しいと言えるでしょう。複雑な理科計算が少ないのも特徴で(今年は降雨量を求めるものと、酸素濃度を求める設問のみ)、リケジョを多数輩出する学校としては、ちょっと物足りない感もありますが、そういう力量は算数の方で見ようとしていると考えられます。その点では開成と同じように、あえて理科は最低限の素養を見るにとどめているとも言えます。

桜蔭中
大問 小問 通し番号 知識レベル 思考レベル
1 1 1 2 2
2 2 2 2
3 3 1 1
4 4 2 2
5 5 1 2
2 1 6 2 2
2 7 2 2
3-1 8 1 2
3-2 9 2 2
4-1 10 1 1
4-2 11 1 2
3 1-1 12 1 1
1-2 13 1 2
2-1 14 2 2
2-2 15 2 2
3 16 1 1
4 17 1 1
5-1 18 2 2
5-2 19 2 2
4 1 20 2 2
2 21 1 1
3 22 1 1
4 23 2 2
5 24 2 3
6 25 1 1
7 26 1 1
8 27 1 2
9 28 1 2
10 29 1 1
11 30 1 1
平均 1.43 1.666666667

 今年の「1」は鏡、「2」は物質の三態変化、「3」は流水の働き、「4」は植物の働きでした。4分野から満遍なく出題されています。このレベルの受験生なら、流水の3作用のグラフは見慣れていると思われますから、特に目新しい問題はなかったといってよいでしょう。ちょっと差がついたかな、と考えられるのは酸素濃度の計算くらいです。今年は昨年度の豪雨の話題からか、降雨量を計算させる問題が各校で目立ちましたが、桜蔭受験生レベルでは、この単位換算をミスる子はそれほどいなかったと思います。

 桜蔭受験生は、理科の場合、開成と同じようにとにかく隙の無い、むらのない学習が重要です。受験者平均、合格者平均などを学校は公表しませんが、開成の9割とまではいかないまでも、8割ラインより上でのハイレベルな争いになっているものと思われます。男子トップレベルと肩を並べるような、ゴリゴリの理科計算はあまり必要とはしませんが、それ以外に関しては、各塾のテキストを使って、入念に緻密に苦手分野をつぶしていくことが合格への最短距離ではないでしょうか。

女子学院中

 例年と同じように、小問30ちょっとの中に、いくつもの枝問があり、解答しなければならない箇所が60くらいになります。4教科とも40分でいずれも100点満点というのが女子学院入試の特徴ですが、40分の試験時間でその全てを埋めて、さらにしっかり見直しまでするのは至難の業だと思います。

 記述も図示もありますし、数は少ないですがグラフを書かせたり、計算問題も毎年ちゃんと出題されます。さすがに男子顔負けの複雑な力学や中和計算などが出題されることはありませんが、それでもどの分野においても計算が出題される可能性があり、苦手を作ることが許されません。

女子学院中
大問 小問 通し番号 知識レベル 思考レベル
1 1-1 1 1 1
1-2 2 1 2
1-3 3 2 2
1-4 4 2 2
2-1 5 2 3
2-2 6 2 2
2 1 7 1 1
2-1 8 1 2
2-2 9 1 2
3 10 1 2
4 11 1 1
5 12 1 2
6 13 2 2
7 14 1 2
3 1-1 15 1 2
1-2 16 2 2
1-3 17 2 2
1-4 18 2 2
1-5 19 2 3
2-1 20 1 1
2-2 21 1 1
2-3 22 2 2
4 1-1 23 2 2
1-2 24 2 2
1-3 25 1 1
1-4 26 1 1
2-1 27 2 2
2-2 28 2 2
2-3 29 2 2
2-4 30 2 2
3 31 2 3
平均 1.55 1.870967742

 今年は「1」の前半がシーラカンスなどの生きている化石、後半が江戸時代の不定時法による時刻、「2」が植物の蒸散について、「3」が重曹とクエン酸の反応、「4」が豆電球となっていました。

 見慣れた典型題も多いのですが、江戸時代の時刻を考えさせるなど、随所にその場での思考を要求する問題が混じってきます。グラフの読み取りも即答できるようなものではなく、ある程度慎重に構えなければなりません。それでいて60か所の解答欄なのですから、いかにスピードが要求されるか、お分かりでしょう。算数国語と配点が同じであることから、理科で大きく失点すると挽回が難しくなります。

 桜蔭のように算数でがっつり差がついて、理科はほとんど差がつかない入試とは、完全に別物だと認識する必要があります。女子学院志望者は、4教科均等配点の意味をしっかり理解し、理社の対策を怠らないようにすることが肝要です。特に過去問演習では解答スピードに留意しつつ、しっかり考えて記号を選択していく、いい加減な記述を書かないなどといった練習が必要になるでしょう。とにかく、算数以上に社会や理科で点差が開くことがザラに起こる学校であることを忘れず、隙の無い学習を心掛けましょう。

雙葉中

 雙葉があつかう題材は、いずれも教科書、テキスト、参考書、図鑑のはみだしコラムなどに載っていることが多いものです。今年のヘルツやpHなどの話、魚の塩分濃度調節にしても、まったくの初見ではない受験生がだいぶ居たのではないかと思います。私も塾で指導していた時、けっこう雑談の中でこういった話題を取り上げたものです。そういう雑学的なことにアンテナを張って、へえーと耳を傾けることができる子、試験に出る出ないとは関係なく、はみ出し知識にも興味が持てる子がほしいといったところでしょう。

雙葉中
大問 小問 通し番号 知識レベル 思考レベル
1 1 1 2 2
2 2 2 2
3 3 2 2
4 4 2 3
5 5 2 2
2 1 6 1 2
2 7 1 2
3 8 2 3
4 9 1 1
5 10 1 1
6 11 1 1
3 1 12 1 1
2 13 2 2
3 14 2 2
4 15 1 2
5 16 2 2
4 1 17 2 1
2 18 2 2
3 19 1 1
4 20 2 3
平均 1.60 1.85

 今年の「1」はパイプオルガンを題材に、気柱の長さと振動数の関係、「2」はヒトと魚の血液循環、淡水魚と海水魚の体内塩分濃度、「4」は水溶液のpHと中和、「5」は地層という出題でした。

 一見、見慣れない問題が並ぶように見えますが、1番では1オクターブ高いと振動数(Hz)が2倍になることなどを文章や表などで示しておいて、そこから思考させて計算させるため、難度は見かけほど高くはありません。3番でもパッと見るとクレゾールレッド、ブロモクレゾールグリーン、アリザリンイエロー・・・などといった、小学生には馴染みのない指示薬がいくつも登場しますが、それにひるむことなくきちんと読んでいけば、後半の中和計算は典型題ということもあり、確実に得点できる問題です。

 4番の地層では昨年末に話題になったチバニアンも出題されていましたが(時期が遅くて、各塾の時事問題テキストには掲載されませんでしたが)、こういったニュースネタなどが自然と家庭内での会話の中に出てくるような子がほしいとも言えます。男の子で言えば、麻布武蔵型の入試ではありますが、麻布の少し大人びた教養と、武蔵の子供らしい好奇心のちょうど間くらい(やや武蔵より?)の感性、と考えるとちょうどいいと思います。

筑波大付属駒場中

 最難関校でトップ層が集まるにもかかわらず、文部科学省管轄のため出題内容に制約がかかってしまいます。例年そのあたりを上手にクリアしつつ、なんとか差をつける出題にしようという努力のあとがうかがえます。計算を煩瑣にすることなく、調べ上げる手間をふやすことで思考力を試そうという傾向が見えます。

筑駒中
大問 小問 通し番号 知識レベル 思考レベル
1 1 1 2 3
2 2 2 3
3 3 2 4
2 1 4 2 3
2 5 2 3
3 1 6 2 3
2 7 2 2
4 1 8 2 2
2 9 2 2
3 10 2 3
5 1 11 1 2
2 12 1 2
3 13 1 1
4 14 1 2
5 15 2 2
6 1 16 1 2
2 17 1 2
3 18 1 1
7 1 19 1 2
2 20 2 2
平均 1.60 2.3

 ここ何年か、受験生レベルを考えるとあまりに易しすぎる前半の問題と、平凡そうに見えてやたら手間がかかって、思考力をこれでもかと試される後半の問題とに分かれていました。いかに知識を問われる前半でミスをせず、かつスピーディに処理を終え、差のつく後半の難問へ突入できるかが勝負の分かれ目でしたが、今年は少し趣が変わりました。

「1」に力のつりあい、「2」に豆電球のブラックボックスと、冒頭にに手間がかかる問題が並びました。ただ、力のつりあいに関しては一般的には難問とはいえ、昨年ほど手間はかかりません。ブラックボックスに関しても、試行しなければならない回数が10回以下であるなど、これまた受験生レベルを考えると穏当なレベルになっています。

「3」以降の知識系問題に関しては、相変わらずミスのできないものが並んではいますが、ところどころにトップレベルの思考力をためす内容が含まれるようになってきたように感じます。「3」は「とかす」ということばについて、「4」は燃焼、「5」は最近多用する会話形式の天体地学問題、「6」は生物の誕生、「7」は身の周りの植物の知識をデータ、グラフで考えさせる問題となっています。データの読み取りに関しては、筑駒レベルの受験生なら、見なくとも答えられる程度の出題ではありましたが、化学地学生物の各分野満遍なく広い知識が問われ、さらに考えられるものを「すべて選べ」の出題形式も多く、記号を選ぶのに細心の注意を払わなければなりません。そういう意味では、過去問で知識系は超簡単、瞬殺で答えられると、たかをくくっていた受験生は、意外と足もとをすくわれたのではないでしょうか。難問と超基本の差が縮まっていることに注意が必要です。

 試験時間40分で問題用紙は8枚。小問内に枝問もあって、時間内に終えるのはきつい問題です。昨年のように差がつくのは最後だけというタイプではありません。前半に時間を取られた受験生は、思いのほか考えさせる後半の知識系に慌てたことでしょう。物理系の問題で少し手間がかからなくなったことから、このレベルでは差がつかないと見る向きもありますが、巷間言われてている以上に、今年は理科でも差がついたのではないかと考えます。単純知識を問うだけでなく、しっかり思考させる問題が増えたことで、問題に厚みが出てきたことに、次年度以降の受験生は注意を払わねばなりません。

駒場東邦中

 駒場東邦志望者は、知識系のウエイトが下がってきていることを念頭に置き、過去問練習をしっかり行いつつ(出題形式は一定ですから)、さらに渋幕、渋渋などの問題(麻布よりどちらかというとこの両校に近い)にも当たり、見慣れない問題において、データをまとめる練習などをすることが効果的だと思います。

駒場東邦中
大問 小問 通し番号 知識レベル 思考レベル
1 1 1 1 2
2 2 1 1
3 3 3 2
4 4 1 2
5 5 1 1
6 6 1 1
7 7 1 2
8-1 8 2 2
8-2 9 2 2
2 1 10 2 3
2 11 2 2
3 12 2 3
4 13 2 2
3 1 14 2 2
2 15 2 2
3 16 3 4
4 1 17 1 1
2 18 2 2
3 19 2 2
4 20 2 2
5 21 2 2
6 22 2 3
5 1 23 1 1
2 24 1 1
3 25 2 2
4 26 2 2
平均 1.73 1.961538462

「1」が結構ボリュームのある小問集合で、「2」から「5」は化学、生物、地学、物理4分野それぞれのテーマに沿った大問という形式は例年と同じです。グラフを書く、読み取らせる、データを読み取ってまとめさせる、図示させるといった、その場での思考を要求する設問が多く、知識を習得することのみが受験勉強であるという学習姿勢を否定する出題形式になっています。

年を経るごとに、単純に知識を問う問題が少しずつ減ってきており、知識問題であっても結構マニアックな問題が混ざるなど、一筋縄ではいきません。特に今年は、昨年と比して難しかった、または解きにくかったと感じた受験生が多いと思います。

1番の小問集合から、データ読み取り系の問題が多くみられます。ここで思いのほか手間取ると、焦りを生むので注意が必要です。「2」は上砂糖、グラニュー糖、氷砂糖、コーヒーシュガーなどの溶解について、「3」はビーチコーミングおよび、堤防におけるフジツボ類の分布のデータ読み取り、「4」は氷河と氷成堆積物、地層、「5」は光の進み方に関しての出題でした。

 今年の問題が解きにくかったのは、「3」と「4」の生物地学の問題において、難度の高いものが混じっていたためと考えられます。出題意図をつかめずに舞い上がってしまうことなく、「5」の典型題に進めたかどうかでだいぶ差がついたのではないでしょうか。

慶應中等部

 今年も例年と同様に、受験生レベルを考えるとあまりにも易しい出題となっています。試験時間を持て余す生徒が多くいたでしょうし、満点も相当数出たことが予想されます。特に高いレベルでの争いになる女子においては、9割ラインが確実に必要となります。

慶應中等部
大問 小問 通し番号 知識レベル 思考レベル
1 1 1 1 1
2 2 1 1
3 3 2 2
4 4 2 2
2 1 5 1 1
2 6 1 1
3 7 1 1
4 8 1 1
5 9 1 2
3 1 10 1 1
2 11 1 1
3 12 2 2
4 13 1 1
5 14 2 2
4 1 15 1 1
2 16 1 1
3 17 1 1
4 18 2 1
5 1 19 1 1
2 20 2 2
3 21 2 2
平均 1.33 1.333333333

 今年の入試は、「1」月、「2」燃焼、「3」てこと浮力、「4」昆虫、「5」食材となる植物という配列ですが、どの問題も一般の問題集でよく見るタイプのものばかりなので、安心して受験生は解き進めることができたはずです。問題ひとつひとつも素直な知識の1問1答形式が多く、てこ浮力の計算にしても平易なものでした。

 毎年のことですが、慶應中等部において、もっともそして唯一差がつくであろうと思われるものは、生物分野の雑知識です。今年であれば昆虫において、マツモムシとケラの絵を選ばせるものや、植物でフキ、レタス、ゴボウの花の様子を問う問題など。

私の世代では、当たり前と思うようなこういう問題を、最近の受験生は苦手にします。今の子供は、野山を駆け回るような幼少時代は過ごせなかったかもしれませんが、図鑑、タブレットなどで手軽に調べることが可能です。ミミズだってオケラだってアメンボだって、生きているんだ友達なんだ。こう歌った時に、はてオケラってどんな生き物だろうとすぐに調べてみる、とにかく分からなかったらそのままにしないという姿勢が大切です。また、そのような広範な知識をもった子を慶應は欲していると考えて下さい。

栄光学園中

 栄光学園の理科は、中学入試の中で最も個性的なものとなっています。1つのテーマに沿って出題を続けていきます。途中、問いを設けてちょっとした知識を問うことはあっても、ほとんど思考系の問題ばかりが並びます。膨大なデータを与えて解析させたり、文章を読ませたり、計算させたり、グラフを書かせたりを繰り返し、真ん中あたりでそこまでのまとめの記述をさせ、また作業をつづけて、最後の結論の記述に向かって収束させていくという問題形式です。

栄光学園中
大問 小問 通し番号 知識レベル 思考レベル
1 1 1 1 1
2 2 2 2
3 3 2 2
4-1 4 2 3
4-2 5 2 3
5 6 3 3
6 7 3 3
7 8 2 2
8 9 2 3
9 10 2 3
10 11 2 3
11 12 3 3
平均 2.166666667 2.58

 昨年のように便宜上、大問を3つに区切るようなときもあります(それでも一貫して「緑のダム」に関しての出題でした)し、今年のように大問区切りなしの、1問のみというときもあります。

 今年のテーマは「走馬灯」です。ろうそくを使って、その上昇気流を利用して回転させるという、最も初期のタイプのものを考えさせていきます。今年も最初にろうそくの基礎知識を問う設問があるだけで、あとはすべて与えられたデータで考える問題構成です。どうすれば回転を速くすることができるかを、気流を受ける羽の形状に着眼させて思考させ、結論にもっていかせます。

 今年も計算を行わせ、グラフを書かせ、ヒントとなる導入問題に答えさせ、途中の問5で小まとめをさせるなど、例年通り作業量の多い問題内容ですが、昨年までの膨大なデータから、必要なものだけを取り出して処理をさせるという側面がなくなった分、やや取り組みやすかったのではないでしょうか。最後の結論を予測しつつ、落ち着いて途中の設問に対処できたものと思われます。

 このようなタイプの問題に対応するためには、過去問演習が不可欠です。その重要度は他校の比ではないと思います。栄光模試のようなものも積極的に受験して、とにかくこの独特の形式に目をならさないとなりません。後は、出題者の意図をどうつかむかの練習です。問題にストーリー性があるため、途中で出題者の意図に気づけば、最後の結論が自ずと見えてきます。ちょっと形式は違いますが、ストーリー性があり、「落ち」がしっかりしているという点では麻布の理科と共通点がありますので、それを練習に使うのも効果的です。昔からこの両校の併願が多いのもうなずけるところですね。

       

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